ご注文はお決まりでしょうか?

caramel0809

第1話




「ご注文はお決まりでしょうか?」







幸せかと聞かれたら答えは「いいえ」だった

不幸せかと聞かれたら答えは「はい」

とは言えなかった。


「考え方を変えれば人生楽しくなる」

そんなポップを通りすぎ医療系のブースに入る


ひとつの病気に関する本はいくらでもある

ましてや本など読まない僕はこんな難しそうな本は読めそうにない。

「どうしようか…」

ピリピリした雰囲気で本を並べる店員に話しかける勇気さえない。


特になんの収穫もないまま店を出てしまった


今更調べたって意味が無いかもしれない



「余命半年も無いかもしれません」

病院嫌いの僕がもう1週間も続く微熱と頭痛で悩まされ仕方なく行ったらときのことだった

突然の宣告に驚きもせず

ドラマで見た事あるななんて考えていた

むしろ病気を理由に寿命尽きるのを嬉しく思っていたのかもしれない。

癌だった。

今から薬や手術でよくなることはないらしく

通院だけでいいらしい

鎮痛剤の入った袋をぶらさげとぼとぼと家路についた。


帰る途中ダンボール箱に入った可愛らしい子猫を見つけた

子猫だし見た目も可愛いため自分が拾わなくてもすぐに拾われるであろう子猫を抱き上げた。

ダンボール箱に入った子猫なんかもベタなドラマにあるだろうとか

自分が死んだらどうしようだとか

もうすぐ終わる命と始まった命と不釣り合いだなとか

猫を飼うのには何がいるんだろうとか

抵抗する様子もない子猫の温かさを感じながら歩いた。


幸い近所にあるペットショップで子猫用のフードを買いトイレを買った

何気なくキャットタワーや寝床など沢山買い込んでしまった

思わぬ出費だったが今まで派手に遊ぶことも無く真面目に貯めてきた貯金を崩したってバチは当たらないだろう


人生初めてのペットは大人しく人なっつこい猫だった

ペットを飼うことは案外楽なんじゃないかと思った。


明日は本屋に行って少し本を買おう

そう思いながらベットにはいった。



今日に至る

餌を与え美味しそうに食べる隙に窓を閉め鍵をかけ家を出た


少し心配だったがすぐに帰るつもりだ

なるほど猫を飼うと出掛けるのにも配慮が必要なのか

そんな事を考え本屋に行った

店を出る時に見た店員の顔は「仕事が増えなくてよかった」

そんなことを考えているように見えた



特に理由もなかったが本屋を出て広いショッピングモールを何気なく歩いた


余命半年

治る見込みもないそんな事情を話すと

働き始めて1年もたっていなかったが上司は同情してくれ静かに会社を辞めることが出来た

僕が死んで悲しむ友達も家族もいなかった

悲しまれるよりそっちの方な気楽じゃないかと自分に言い聞かせるように呟いた


慰めるように擦り寄ってきてくれるのは子猫だけだった

子猫の名前はコロッケにした

単純に見た目がコロッケなだけだけど


平日も休日もどこに行く必要もない毎日は

気楽で楽しかった。

そんな平和な日々も1人の"悪魔"

によって変わってしまった









The story still continues.







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