江戸時代初期、伊賀国の城下。純粋無垢なお小姓が、男らしい剣術指南役の若者に生まれて初めて恋をした。子どもでもない、まだ大人でもない、男でもない女でもない。危うい魅力を湛えた若衆たちが、情感たっぷりに描かれている。その花の盛りは短い。そんな若衆たちの健気さと激しさに心震える。読者も雪の中に引きずりこまれて、背筋が凍てつく感覚を味わえる衆道小説の金字塔。