第49話 2人の関係性
喫茶店の片付けも終え、俺とゆっちゃんは、店を後にした。
「……けーちゃん……もう帰る?」
店を出て2人で少し歩いていると不意にゆっちゃんからそう言われた。
「そのつもりだったけど……どこか行きたい場所でもあるの?」
「う、ううん、特に行きたい場所はないんだけど……その……けーちゃんともうちょっと一緒にいたいって思って……」
「っ!」
「だ、ダメ……かな?」
ゆっちゃんは、潤んだ瞳で俺を見つめそう尋ねてきた。
正直俺ももう少しゆっちゃんと一緒にいたいと思っていたからゆっちゃんの方から誘ってきてものすごく嬉しい。
「だ、ダメじゃないよ!俺ももっと……一緒にいたいから……」
「〜っ!……そ、そっか……じゃ、じゃあ、どうしよっか?」
「そ、そうだね……」
俺は、その場に止まりどこかいい場所がないか探す。
すると、近くに公園らしき広場がありそこにはベンチもある。
「あそこでちょっと座る?」
俺は、そのベンチを指してゆっちゃんに尋ねてみた。
「そうだね。」
「あっ、俺、なにか飲み物買ってくるから先行ってて。何がいい?」
「え?あ、じゃ、じゃあ、私も……」
「いいよ、これくらい1人で。それで何がいい?」
「……えっと……オレンジジュースで。」
「うん、分かった。」
俺は、近くに設置されている自動販売機にお金を入れてまずはオレンジジュースを買う。そして俺は、微糖のコーヒーを買う。
それを両手に持ちゆっちゃんが座っているベンチへ迎う。
「はい、オレンジジュース。」
「あ、ありがとう。って、けーちゃん、コーヒーなんて飲むの?」
「ん?うん、さすがにブラックはあまり好きじゃないけどね。」
「そ、そうなんだ……な、なんか私、子どもっぽいな。」
「ははっ、ゆっちゃん、昔からオレンジジュース好きだったもんね。」
「うん。」
「あれ?そういえば今日、ゆっちゃんオレンジジュースって飲んでたっけ?メニューにはあったけど。」
「え、えっと……その、みんなの前じゃ子どもっぽいって笑われるかもしれないからあんまり飲まないようにしてるの。」
「へ〜、そうなんだ。別に俺はそうは思わないけどな。」
(というよりも飲み物だけで子どもっぽいって決めつける奴はどうかしてると思うけどな。)
「でも、けーちゃんの前だとこうやって何も気にせずに居られるんだよね。ふふっ、嬉しい。」
ゆっちゃんは、そう言って俺が買ってきたオレンジジュースを1口飲んだ。
「あっ、そうだ。これ、何円だった?」
「いいよ、それくらい。」
「え、でも……」
「ジュースくらい奢るよ。」
「……ありがとう。」
俺は、そこまで言うとゆっちゃんの隣に座りコーヒーを開け1口飲む。
「………ねぇ、けーちゃん。1つ確認したいことがあるの。」
「ん?何?」
ゆっちゃんは、真剣な表情で見つめてくる。
「……私とけーちゃんの関係って……その……こ……恋人同士……ってことでいいの……かな?」
だが、その真剣な表情も言葉を発していくうちに顔がどんどん真っ赤になっていった。
と、そんなことを思っていられるものの、俺自身もものすごく顔が熱くなっているのが分かる。
だが、平静を保てるのは恐らく武道で心身ともに鍛えたからだろう。
だから、俺ははっきりとした口調でこう告げた。
「ああ、俺はそのつもりだよ。ゆっちゃんの方は?」
「っ!!わ、私も!」
「…………」
「け、けーちゃん!?ど、どうしたの!?」
ゆっちゃんは、真っ赤になった顔を上げて俺の顔を見るとそう叫んだ。
正直俺も驚いている。ずっと俺は、心身鍛えてきていまさっきまでずっと平静を保てていた。
だが、今は違った。
ゆっちゃんと恋人同士になったという事実をゆっちゃん本人から告げられた瞬間、涙が出てきた。
俺は、今までずっとこのことを夢見て頑張ってきた。じいちゃんの辛い稽古もゆっちゃんのためだと思いずっと頑張ってきた。
だが、実際に会ってみた時は忘れられたと思い込み地獄に叩きつけられるような痛みだった。
そこから立ち直るのにある程度の時間を要したがこうやって今、目の前にゆっちゃんといることが出来る。
「だ、大丈夫?ど、どうしたの?けーちゃん?」
ゆっちゃんは、涙をハンカチで拭って優しく俺を心配するように声を掛けてくれた。
「ず……ずっと……この時のために……頑張ったから……だから……思っていたよりも嬉しくて……本当に嬉しくて……だから涙が……」
俺がそこまで言うと俺の手の甲に涙が落ちてきた。俺の涙はゆっちゃんが拭ってくれている。なら、この涙の元は……
「な、なんでゆっちゃんも……」
「ご、ごめん……ごめんね……けーちゃん……私が……私がすぐにけーちゃんのこと知ってるって……伝えてたら………」
「……は、ははっ……別にいいんだよ……こうやって……また一緒に居られるんだから……」
「うん……うん……そうだね……これからずっと……ずっと一緒にいたい……」
「ああ、一緒だよ……ずっと一緒……」
俺たちは、高校生にもなって涙を流しながら話すという周りから見たら実にみっともないであろう姿で話していた。
でも、俺たちは、涙を止めることが出来なかった。
だって、ずっとこうやっていることを望んでいたから。お互いに。
俺たちは、いつの間にか手を重ね合っていた。でも、それに気づいても離そうとはしなかった。離したくなんてなかった。それからどれくらい時間が経ったのかは分からないが俺たちは、泣き止むまでずっと手を重ねたままだった。
君は俺のことを好きでいてくれますか? 白狼 @mojidaishoukan
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