第48話 仲の良い友達

『それは何より。お疲れ様、宮村くん。』



 俺が黒羽さんにラインを送ったあと、すぐにそう返ってきた。



『ありがとう。黒羽さんにも色々と助けてもらって成功できたから今度なにかお返しするよ。』

『別にいいわよ、そんなの。』

『いやいや、やっぱりこういうのは持ちつ持たれつの関係でいかないとね。だから、なにかして欲しいことがあったら言ってね。』

『………考えておくわ。』

『うん、ありがとう。』



 と、黒羽さんとのラインのやり取りに一段落する。

(黒羽さんからラインも来ないしそろそろ片付けの作業に入ろっかな。)

 俺は、そう思いポケットにスマホをしまい東條さんの方へ向かう。



「何を手伝えばいいんですか?」

「本当に手伝ってもらっていいのかしら?この後にみんなと遊んだりしないの?」

「あ〜、それは分かりませんが、片付けまで手伝うという約束でしたので。」



(あっ、でも、ゆっちゃんはどうなんだろう?)



「すいません、白神さんに確認を残れるか確認とってきてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。片付けはテーブルの上を綺麗にしてもらうことでいいかしら?」

「はい、分かりました。」



 俺は、そこまで言うと不知火さんや他の友達と楽しそうに話しているゆっちゃんの所へ向かう。

 女子だけしかいないのでそこに割ってはいるのは勇気がいるが仕事もあるからな。



「ちょっといい?」



 俺がそう声をかけると全員こちらを向く。



「ごめんね、話してるところだったのに。」

「ううん、別に構わないわよ。由美に話があるんでしょ?ほら、由美!」



 不知火さんがゆっちゃんの背中を押し、俺の方へ近づける。



「も、もう、茜ちゃん、押さなくても行くから!」

「ふふっ、いいからいいから。」

「も、もう〜」



 不知火さんとのやり取りを終えたゆっちゃんが俺の方を向く。だが、視線は少し落ちていて顔も真っ赤にしている。



「えっと、この後のことなんだけど……白神さん、どうする?」

「え?ど、どうするって、お店の片付けを手伝うんだよね?」

「そうしようと思ってるけど東條さんの方からこの後遊びに行ったりするんだったらそっちに参加してもいいって。だから、遠慮しないで遊びに行ってきていいよ。」

「あ、え、えっと……」

「不知火さん、この後どこかに遊びに行ったりする?」



 ゆっちゃんは、急にそんなことを言われたからかどうしたらいいのか悩んでいた。だから、俺の方から話し始めた。



「うん、今さっきカラオケを予約したからそこにみんなで行こうってなったわ。」

「なら、白神さんもそっちに参加した方がいいんじゃない?」

「………けー……宮村くんは行かないんだよね?」

「まぁ、片付けは前もって約束してたからね。でも、別にそんな大変な作業はないから白神さんは行ってもいいよ。」



 俺がそう言うとゆっちゃんは、頭を横に小さく振った。



「……宮村くんが行かないなら私も行かない。」

「いいの?友達付き合いは大切にした方がいいと思うけど……」

「そ、それはそうだけど、宮村くんだってお手伝いをして遊びには行けないんだから一緒だよ。」

「うっ、それを言われるとちょっと痛いが、でも、女子って結構そういうの気にするんだろ?」

「その点はだいじょーぶ!」



 俺の問いに答えたのはゆっちゃんではなく後ろにいた不知火さんだった。



「由美にはちゃんと私たちがいるんだから!」

「茜ちゃん……うん、そうだよ!宮村くん!」



 ゆっちゃんは、不知火さんにそう言われたのが嬉しいのか笑顔で俺にそう言ってきた。



「……分かった。それじゃ、一緒に片付けやろっか。」

「うん!」

「ふふっ、良かったわね〜、由美!」

「あの由美がまさかこんなに男子生徒と楽しそうに話せるなんて知らなかったな。」

「だねぇー、橋村くんでもまだ緊張してる部分があったからね。」

「も、もう〜、みんな!楽しんでないでそろそろお店出てよ!片付けに入るんだから!」

「そうね、そろそろ出よっか。さすがにこれ以上いると2人の邪魔になりそうだからね〜。」

「茜ちゃん!?」



 ゆっちゃんの友達は、楽しそうに笑いながらお店を出た。



「仲良いんだね。」

「う、うん、みんなには中学からずっと仲良くしてもらってるの。」

「そうなんだ……それじゃ、片付けに入ろっか。」

「うん、そうだね。」



 俺とゆっちゃんは、一生にテーブルの上に置かれてある食器などを東條さんや他の店員さんたちの指示に従い片付けていく。

 片付けを始めてから約30分であらかた店の中は片付いた。



「ありがとう、2人とも。2人のおかげで思ったよりも早く片付けが終わったわ。」

「いえ、このお店を使わせてもらった身ですからね。これくらいして当然です。」

「ふふっ、本当に宮村くんはしっかりとしてるのね。これなら明日からも大丈夫そうね。」

「バイトの方も少し不安ですが……全力で頑張ります。」

「ええ、よろしくね。白神さんもいつでもうちにバイトに来てくれて構わないからね。」

「え?わ、私ですか?」

「ええ、今日の作業の様子を見てたらとても丁寧だし気も使える。接客業に必要なものは持ってそうだしね。だから、もし気が向いたら宮村くん経由でもいいから言って欲しいわ。」

「は、はい、ぜひバイトさせてください!」



 ゆっちゃんは、東條さんのバイトの誘いに迷うことなくそう答えた。

 さすがにすぐに答えを出すと思ってなかったので俺も東條さんも驚いた。



「え?いいの?そんな即答しちゃって。」

「は、はい!大丈夫です。けー……宮村くんもいるので……」

「……そっか。それじゃ、白神さん、これからよろしくね。」

「よろしくお願いします。」



 あっさりとゆっちゃんのバイト参加も決まった。



「明日から宮村くんと黒羽さんはバイトを始めるけど白神さんはどうする?」

「なら私もその日でお願いします。」

「分かったわ、それじゃ、明日の午後2時に来てね。」

「はい、分かりました。」



 白神さんは、バイトが決まったことで嬉しそうに笑っていた。



「白神さんもバイトがしたかったんだね。」

「う、うん、社会経験は多くしておいた方が将来生かせそうだからね。それに………けーちゃんと一緒………」

「ん?何か言った?」

「う、ううん!」



 白神さんは、俺の問いに慌てて首を横に振った。

(何か言ったと思ったんだけど……本人が違うって言うんなら違うんだろうな。)



「それじゃ、もうほとんど片付けは終わったし宮村くんと白神さんは帰っていいわよ。」



 店の周りを見てみるともうほとんど片付いていて俺たちの出来ることは無さそうだ。



「はい、分かりました。それでは明日からよろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「ええ、よろしくね、宮村くん、白神さん。」



 俺たちは、最後に東條さんにもう一度感謝の言葉を述べて帰っていった。

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