じゃっじゃーん! 猫屋敷華恋ちゃんがキミラノの皆さんを紹介します!

いずも

●REC

「ニヒヒッ、これならバッチリです。よぉーし、それじゃ、これから何も知らないであろう先輩のために可愛い可愛い『猫屋敷華恋ねこやしき かれん』ちゃんがこれからキミラノの皆さんを紹介していきますからねー。……こんな感じでしょうか?」



 ご機嫌に鼻歌を口ずさみながら、金髪のミニスカ女子高生が歩いている。

 どこにでも居る可愛らしい少女だが、敢えて変わったところを挙げるなら、頭の上にトレードマークの猫を乗せていることくらいだろうか。

 今は猫を抱きかかえており、まるで猫と会話しているように話しかける。

「キミラノはみんな可愛いけど、浮気しちゃ駄目ですからねー。華恋ちゃんは先輩一筋なんですから!」

 眉間にシワを寄せながら、むむっと猫に近づく。

 その瞳には、もはや彼女の顔しか写っていない。

「……何やってんのさ」

 呆れ顔で少女が突っ込む。



「おっと、その声はさっちんじゃないですかー」

「何してるの?」

「これからキミラノの皆さんを紹介するための動画を撮影したいなーって思っていまして。ちょうど良かった、早速さっちんに練習台になっていただきましょー」

 華恋はニヤリと笑う。


「彼女は『皐月さつきレオン』。金髪JKで普段はクール、しかしミリタリーやアクションなど自分の得意分野になると熱く語るギャップ萌えに癒やされる人続出! ……キャラが被ってますねぇ」

 猫をレオンに向けながら、さながらマイクのように扱いキャラ紹介を済ます。

 その瞳が捉えたのは、ブレザーの上に羽織った橙のパーカーがふわりと揺れ、その容姿に不釣り合いな刀に手をかけた少女の姿だった。

 レオンは一瞬たじろぐが、すぐに表情を整える。

「そう……かな。でもボクは華恋みたいに可愛く振る舞ったりは出来ないから、華恋のそういうところちょっと羨ましい、かな」

「そうでしょー、そうでしょー。もっと褒めても良いんですよ。華恋ちゃんは褒めて伸びる子です」

 くるりと自分に猫を向けて、えっへんと胸を張る。

「ふふ」

 思わずレオンも表情が綻ぶ。


「あ、でもさっちんがとっても可愛い瞬間、知ってますよぉ?」

「え?」

「それは……これです!」

 どこからともなくメロンパンを取り出す。

「そ、それはっ……ゴクリ」

 華恋がメロンパンを上へ下へと動かせば、レオンの視線もつられて動く。

「さっちんはメロンパンを食べている時、まるで小動物みたいだとノエるんが言ってました! では、これからそれを実証してみましょう」

 リポーターのようにメロンパンをマイクに見立て、それをレオンに渡す。

「え、いや、ちょっと」

「さぁさぁ、さぁ! その小動物スマイルをこの目にしっかりと焼き付けさせてください!」

 目を光らせながら華恋が見つめている。

 鼻息荒い彼女に見つめられ、レオンは目をぐるぐるとさ回して冷静さを失ってしまう。

 メロンパンを食べたい気持ちと、それを見られることへの恥ずかしさによる葛藤がレオンの中で繰り広げられていた。

「――ボク、今日は『バイト』なんだ。じゃっ!」

「あ、逃げた」



「ふむー、仕方ないですねー。おっと、そこに居るのは……」

 華恋が捉えた後ろ姿はシッポがご機嫌に揺れている。

 それは犬や猫のような可愛らしいものではなく、無骨な、竜の尾である。


あねさん!」

「ん、なんだ猫の玩具ニンゲンじゃないッスか。どうしたんスか」

 振り返ったのは竜を擬人化したような真っ黒な厳つい角に鋭い爪、それに負けない真紅の長髪が映える妖艶な大人の女性だった。

「もぅ、ニンゲンじゃなくて華恋ちゃんですっ! 相変わらず人の名前覚えるの苦手なんですから……」

 華恋は猫の前足をバンザイするように持ち上げて怒っているアピールをする。

 効いている様子はない。

「これからキミラノの皆さんを紹介するための動画を撮ろうと思いまして。カメラって言う道具を使うんですけどね」

 その言葉を聞いた途端、彼女の態度が一変した。

「げげっ、それは『写真』として撮られたら最後、魂まで抜き取られてしまうという恐ろしい機械じゃないッスか!? また私を独りにする気ッスか!」

 恐ろしい見た目に反して、黒縁眼鏡の奥では涙目になりながらブルブルと震えながら気弱な発言を繰り出す。

「なんで中途半端にそんな知識持ってるんですか!? カメラはカメラでも、ビデオカメラだから大丈夫です。そ、れ、に、姐さんを独りになんてさせないですよっ」

 左手でピースサインを作って、歯をのぞかせてにっこり微笑む。

「ホホホホントッスか!? もー、カレンったら驚かせないでほしいッス!」

「痛っ、痛い! 姐さんバシバシ叩かないでっ」


「えーっと、姐さんこと『ディアナ・ファーヴニル』さんでっす。遠い昔の国からやってきた邪竜さんです。あ、でも悪いことはしない、とってもおしゃべり好きなおねーさんです」

「ぶどう酒があればもっと喋るッスよ」

「酔いつぶれちゃうんで、ダメです」


「それにしても――」

 ディアナの全身を舐め回すように上から下へと視線を動かす。

「肩出しルックの大胆な衣装にグラマラスなボディ、さらにメガネは知性の現れ……ふむ、これはキャラが被ってますねぇ」

「おっ、そうッスか? 私はてっきりカレンはおバカキャラだとばかり思っていたッス」

「ひどいっ! なんてストレートなっ!」

「はっはっはっ、ジョーダンッス」

「姐さんは時々毒を吐きますねー……」

 そういう表裏がないところが良いんですけどね、という華恋の独り言は頭に乗っかる猫だけが聞いていた。



「あら、何やら騒がしいと思ったら」

 二人の前に小さな冠をかぶった、ファンタジーの世界から飛び出してきた妖精のような出で立ちの、ピンク髪の少女が興味深そうに近づいてくる。

「異世界の玩具ニンゲンッス。ええっと……」

「ノエル・ミルフォードさんです。もぅ、ちゃんと名前を覚えてくださいね」


「ところで華恋ちゃんとディアナちゃんは何をしていたの?」

 ノエルは瞳を輝かせ、これから何が始まるのだろうという期待の眼差しを向け、両手のつま先を合わせて口元に当てる。

「これからビデオカメラを使って、ノエるんのことを紹介しようと思いまして」

 華恋の言葉を押しのけるようにディアナが口を開く。

「ノエル、聞いて驚け見て驚けッス! カレンの言う『カメラ』というのは、実は相手の魂を抜き取るとんでもない機械ッス」

 ディアナはカメラでシャッターを切るような動作を取りながら言う。

「ええっ! そうなの!? そそそ、そんな恐ろしいものがジャパンにはあるのね……。流石にそれは私の世界に持って帰りたくはないわ。魔法よりも恐ろしい道具ね……!」

「安心して、ノエるん。それ、嘘ですから」

「いやあ本当に何でも信じちゃうんスねぇ。……からかい甲斐があるッス」

「姐さん、ダメですよー」


「では改めまして。ノエるんこと『ノエル・ミルフォード』。彼女はなんと、異世界からやってきたお姫様なのですっ。こっちの世界の文化とかを勉強しながら、自分の世界へ一緒に来てくれる仲間を探しているんでしたっけ」

「ええ、そうよ。特にハンバーガーという食べ物は格別ね。あれを生み出した方はぜひ専属シェフとして迎え入れたいくらいだわ!」

「華恋ちゃんイチオシの肉まんも忘れないでくださいねー」

「ええ、もちろんよ」

 二人の会話を聞きながらディアナは「流石に未成年にぶどう酒を勧めるわけにはいかないッスね」と心の中で思っていた。


「ゆるふわ系のお姫様で思い込んだら真っ直ぐで一途な性格、何事にも興味があって行動せずにはいられないところもそうですし、何よりもそのチャームポイントのちっちゃな王冠! 頭の上に何か乗っけている系女子として、キャラが被ってますねぇ」

「ふふっ、そうかもね」

「確かに二人は似てるッスね。猪突猛進系女子ッス」

 両手の人差し指を牙に見立て、猪のマネをしながらディアナが言う。

「ええっ。わ、私そんな風に思われてたの!?」

「姐さんの方がよっぽど凶暴な見た目ですけどね……」



「おっ、あの二人も似た者同士ッスね」

 ディアナが指差す先には同じくらいの背丈の女性が二人、並んでいた。

 一人は銀髪に濃い青のエプロン姿、ポケットはハサミや厚紙などの文房具で膨らんでおり、腕や脚からは真っ白な肌がちらりとのぞかせる。

 その隣を往く制服の少女は長い黒髪をなびかせ、通学カバンと文庫本を両手に持ち軽やかに歩く。

「ほほぅ、あれは本屋ちゃんと綾乃っちですね」

 後ろ姿からキミラノの関係者だとわかり、華恋は声をかけながら近づいていく。


「やぁやぁそこの仲睦まじいお二人さん。ちょっとお話を聞かせてもらいましょうかねぇ。なーに、悪いようにはしませんぜ、へっへっへ」

 やけに芝居ががった調子で華恋が言う。

 猫をピストルに見立て、その銃口を二人に向けている。

「あっあれは伝説の魅了魔法『猫のまなざし』! あの瞳に魅入られたものは骨抜きにされてしまうという……まさか華恋ちゃんがその使い手だったなんて」

「あのサングラスどっから出したんスかね」


「あら……猫屋敷さん。相変わらず可愛い猫ちゃんを連れているのね」

 振り向いた黒髪の少女は白いカチューシャの似合う、まさに深窓の令嬢という表現がぴったりな見返り美人である。

「むー、こっちは猫ちゃんなのに華恋ちゃんのことは猫屋敷さんですか。良いのです、これから少しずつでも仲良くなって、綾乃っちに『華恋ちゃん』と呼ばせてみせます!」

「そう気合を入れられると、こっちもちょっと身構えちゃうなぁ……」

 やや困り顔で彼女は返事する。


「ん、つむぎちゃん、何か言いたそうね」

 ノエルが二人のやり取りをじーっと見ていた銀髪の少女に話しかける。

「っ! ……っ、……、……!」

 彼女は何か言葉にしようかどうしようかと悩んでいる素振りをして、エプロンのポケットから蛍光ペンや黒マジック、B4サイズくらいの厚紙を取り出して一心不乱に何かを書いている。

 そしてその用紙を自分の顔の右に掲げる。

<綾乃はどちらかというと『可燐』ちゃん>

 文字をフキダシで囲って、漫画みたいにセリフを喋っているかのようにみせる。

「ま、まさかの本屋ちゃんがダジャレとはっ……!」

 予想外の展開に華恋も思わず真顔になる。

「本当に、驚きだわ。あの小さなポケットのどこにあんな大きな紙が入っていたのかしら? まさに魔法ね……」

 同じく予想外の展開にノエルも驚きの顔を隠せない。


「ちょ、ちょっと二人ともフザケているのっ!?」

 綾乃がぴしゃりを声を上げる。

「えっ、ご、ごめんなさいっ。ちょっとあの四次元ポケット欲しいなって思っただけなのっ」

 よくわからないままにノエルが謝る。

「もう、そうじゃなくて。違うでしょ!」

 凛とした声を上げ、綾乃はつむぎと呼ばれた少女の方に近づき、厚紙を指差す。

「ほら、ここ。漢字が間違っているの! 可憐の憐は"りっしんべん"よ。よく見なさい、"ひへん"になっているわ」

 つむぎは「しまった!」という顔で自分の書いた文字を見直している。

「あ……本当ですね。さすが綾乃っち、書道が得意なだけはありますねぇ」

「すごーい。私全然気付かなかったよ~」

「ノエルさんはまだ日本に来て日が浅いもの、これからよ」

 四人が和気藹々と笑い合っている中、そのやり取りを見ていたディアナが「あの本の虫ニンゲンの行動には誰もツッコまないんスね」と小さく呟く。

 そして「私、もしかしてこういう役回りッスか……」と心の中で諦観の境地に達していた。



「あのですね、キミラノのことを紹介する動画を作りたいなと思っていまして、どんな感じになるのか未知数ですが、お二人のことも紹介させてくださいっ」

 改めて華恋が二人に説明する。

「紹介動画の練習ってとこかしら。青春の思い出みたいで面白そうね、私は構わないわよ」

<本の気持ちになって、紹介されちゃいます♪>

 ふわふわの雲みたいなフキダシと蛍光ペンによる装飾、文字には下線部が引かれてまさしくポップのような形式で返事する。


「えーっと、ではでは。まずこちらの黒髪美少女が綾乃っちこと『柴藤綾乃しばふじ あやの』。クラスのマドンナ的存在であり、憂いを見せる表情の奥では物語のような運命的な出会いを夢見ているロマンチストな乙女なのです! だがしかーし、ただの文学少女かと思いきや、実は体を動かすことが好きで趣味は水泳、先程の漢字の訂正のように勉強もできるまさに才色兼備! くぅ~、キャラが被ってますねぇ」

「そんなこっ、え、ええ、そ、そうね」

 綾乃は褒め過ぎだと謙遜しようと思ったら、最後の一言で急に混乱する。

「あー、カレンのお約束だから聞き流せば良いッス」


「そしてサイドテールの三つ編みが似合う銀髪美人は『綴野つづりのつむぎ』。華恋ちゃんとは『本屋ちゃん猫屋ちゃん』の間柄です!」

<ねー>

 語尾にたっぷりハートマークを付け加えながら、つむぎはフキダシを掲げる。

「普段はちょっぴり口下手な女の子ですが、本の紹介となれば彼女の紡ぐ言葉はまさに無限大で、誰もがその本の虜になるような言葉の魔術師なんです。オールジャンル、何でもござれ。気に入った作品はとことん深く。夜通しキャラ愛や理想のシチュエーションについて語り合えるのは本屋ちゃんだけです! これこそまさに、キャラが被ってますねぇ」

<だね~>

「そういうのは『似た者同士』って言うッス」


「それを言うなら私もそうかも!」

 ノエルが嬉しそうに声を上げる。

「ファンタジーや冒険のお話とか、一旦読み始めたら続きが気になっちゃって眠たくっても最後まで読んじゃうかも」

「ノエルは"これ"ッスからね」

 ディアナが再び両手の人差し指を突き立てて、猪のポーズを取る。

「も~、それはやめてってば」


「……ねぇ、猫屋敷さんはその、ラノベとかも読んだりするのかしら」

「もちろんですよ! ラブコメが大好物ですが、ラノベ全般読み漁ってます」

「じゃ、じゃあ! 今度、その……ラノベについて、ちょっとだけで良いから語り合ったり、その、……したいかなって」

 文庫本で口元を隠しながら、顔を真っ赤にさせて綾乃が華恋に語りかける。

「もちろん良いですよー! 綾乃っちとこんなに早く親しくなるチャンスが出来ようとは! これはアレですか? ラブコメの波動ってやつですかー?」

<あまーい!!>

 すかさずつむぎがフキダシを掲げる。

「つむぎちゃん、甘い物好きって聞いていたけど、こういうのもイケちゃうのね……まさにオールラウンダーね」

「ちょっとネタ古くないッスか。私に言われたらお終いッス」

 古よりやってきた邪竜の冷静なツッコミだった。


「ふっふっふ、綾乃っちがそのつもりなら、今夜は寝かせませんよぉー」

「ちょ、何よその殺し文句は」

「綾乃ちゃんも満更でもないって顔してるわ」

 ノエルが二人のやり取りを見ながら微笑ましく見つめる。

「殺し文句ッスか。どんな武器よりも強力な一撃ッスね」

「武器がなんだって」

「わっ!!」

 どこからともなくレオンが音もなく現れた。



「もー、びっくりさせないでよ。レオンったら、相変わらず武器って言葉に反応しちゃうのね。まるで魔法ね、瞬間移動してきたみたい」

「ノエル、日本じゃこういう超人ニンゲンのことを"シノビ"って言うッス」

「まあ! やっぱりまだまだジャパンには凄い文化が残っているのね……!」

「キミたちはボクをなんだと思っているんだ」

「陰でジャパンを支える、女子高生エージェント?」

「……そんな風に思ってるから、たまにボクのことを尾行するんだね」

「なっ、なんのことやら」

 ギクッという効果音を出しながら、ノエルは視線をそらす。


「もうバイトは終わったの?」

「うん、今日はもうおしまいさ」

 仲睦まじく会話する二人。

 それを華恋が恨めしそうに眺める。

「……お二人は仲が良さそうですねー。じーっ」

「ふふっ、色々あってね、仲良くなったのさ。というわけで。はい、これ」

 そう言ってレオンは小さな紙切れを綾乃に渡す。

「バイト先で貰ったC賞の『麻婆豆腐引換券』だよ」

「ありがとう! 私、実は麻婆豆腐が大好きなの。ここのお店の麻婆豆腐、とっても辛くて私好みなの!」

「ボクは辛いのは得意じゃないから、これくらいお安い御用さ」

 レオンのバイト先って一体……。と、誰もが疑問符を浮かべていたが、何故か聞いてはいけない雰囲気が蔓延していて誰も追究できなかった。



「そういえばレオンの紹介は良いの?」

 綾乃が華恋に話しかける。

「ええ。さっちんの紹介はすでに済ませましたから!」

「そういえばキミラノを紹介する動画がどうとか言ってたね」

「これだけ練習したらバッチリッスよ」

「そうね。華恋ちゃんったら、本番さながらの紹介ですごく気合入ってたものね」

 皆が口々に紹介動画についてあれこれと話しているのを見て、華恋がニヤリと笑う。


「いやぁ完璧ですよぉー。これでバッチリ、皆さんの紹介動画は

「……ん?」

「へ?」

 華恋の言葉に得心がいかないといった様子で皆が顔を見合わせる。

 その光景を楽しむかのように悪戯な笑みを浮かべ、華恋は両手を頭部へ挙げる。

「よいしょっと」

 彼女はトレードマークとして頭に乗せていた猫を持ち上げ、抱きかかえる。

 そして手品の布を持ち上げるように右手で猫を持ち上げると、その下にビデオカメラが姿を現す。


「「「「「ええええっっっ!!!」」」」」


 残りの五人は声を揃えて驚きの声を上げる。

「皆さんの自然な様子を撮りたいなぁと思って、敢えて黙っていたんです。華恋ちゃんの思ったとおり、予想以上にキミラノのみんなの魅力を紹介できたんじゃないかと思います!」

「そういうことか……。いや、ちょっと怪しいなとは思ったよ」

 レオンが思い当たる節があるように頷く。

「なんで猫ちゃんを必要以上にこっちに向けたり、自分に向けたりしているんだろうって感じてたけど、そういうこと……」

 綾乃も同様に思い起こしていた。

「私はいいッスよ。もう一回やれって言われた方が面倒ッス」

 ディアナはあっけらかんと答える。

「うん、本番とか練習とか、何も言ってなかったわね……」

 ノエルは猪突猛進系女子、と自分で言って落ち込んでいる。

<一番の策士は猫屋ちゃんだったのね。錯視だけに>

 つむぎも取り乱す様子もなく、フキダシを掲げている。

「錯視じゃなくて、擬態ね」

 綾乃の訂正という名のツッコミが決まり、賑やかな一幕は終わりを告げる。



「さて、どうでしたか先輩。少しはキミラノのこと、わかりましたかー? 華恋ちゃん達はいつでもお待ちしていますからねー。見たいお話、知りたい物語、何でも聞いてくださいねっ。ではではー」

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