秋の匂いがより一層切なくさせる
「また来ちゃったんだ。」
「呼んだのはそっちじゃない。」
「まあそうなんだけど、急だったし来ると思わなかった。」
そう言いながらも
「そんな薄着じゃ寒かったでしょ、先風呂入る?」と用意していた部屋着とタオルを渡してくれた。
「ああ、うん。ありがとう。」
秋風にさらされてすっかり冷え切った身体をシャワーで一気に温める
頭からお湯を被りながら勢いで来てしまった自分に呆れて笑ってしまった。
同時に涙まで出てくる。これはなんの涙なんだろう、分からない
ただ分かっているのはやっぱり都合のいい女に自分からなっていってるんだなという事。
バカな女だって思われているんだろうな。
「お、出た?コーヒー飲む?」
不意の優しさにまで泣きそうになってしまう。
「うん、飲む。」
いつも出してくれたアイスコーヒーがホットコーヒーに変わっていて季節が移っているのを実感する。
あと何回この家に来られるんだろう。そう思うと自分から選んで来たのに勝手に悲しくなった。
「はい、暑いから気をつけて。」
手渡されたコーヒーを両手で暖をとるように持ち一口飲む。
シャワーで暖まったはずなのに少し震える。
「どうしてた?最近。」
コーヒーを口に運びながら何も変わらない先生。
「何も変わらず、大学もバイトも忙しくて毎日寝不足なくらい。」
充実していると言いたかったのに何故かその先が出てこなかった。
本当は会えなくなって悲しくて辛かった、毎日考えてた毎日思い出してたよ。
ちゃんと言葉にしたら先生はどんな反応をする?
面倒臭がられてまた終わりそうで怖い。
「なんでそんな眉間にしわ寄ってるんだよ。ほら、こっちおいで」
手招きされ素直に先生の足の間に入る。
優しく髪を撫でられて気持ちよくて寝そうになってしまう。
「春くんは元気だった?」
意識を手放さまいと無理に言葉を発する。
「来週から修学旅行だから準備で忙しいよ、沖縄行くんだけどさ。」
そう言いながらパソコンの中の資料を眺めていた。
「沖縄いいなー、私九州だったから羨ましい。お土産買ってきてね」
「いい子にしてたらね。」
「いつもいい子じゃん。」
ケラケラ笑いながらいうと首に顔を埋められた。
「っどうしたの?」
「最近ちょっと疲れてたからなんか安心する。」
首のあたりで話されると吐息でムズムズしてしまう。
「んっ、」
思わず声が出てしまった。それを誤魔化すように
「毎日お疲れ様。」と頭をポンポンするとそれが合図かのように首筋にキスが落ちてきた。
借りているトレーナーに冷たい手が入ってきて体が反応してしまう。
「ちょっ、冷たいよ。」
「すぐ熱くなるよ。こっち向いて。」
顔だけ振り返ると今までで一番深いキスに溺れた。
夏の匂いがする 芙雪 @ntntnrnr000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。夏の匂いがするの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます