秋の匂いがより一層切なくさせる

あれからまた連絡も来なくなり気持ちは少し落ち着いた。

きっともう来ない、期待しない、思い出さない。

そう自分に言い聞かせて生活をしていた。

冬に向けて大学も忙しくなり、今までサボっていたせいもあり毎日登校しながら

バイトにも進んで入った。

何かに集中していれば考える暇もないし、ヘトヘトに疲れて眠ればあの人の夢を見る事もない。

こうやって日常を取り戻して忘れてしまえばいい。

いいんだ、これでいい。また新しい恋をしてそんな事もあったなって懐かしめればいい。

そう思っていたのに。


〈最近どうしてる?〉

またこれだ。自分の勝手なタイミングで人を不安定にさせる。

この人はどれだけ人を振り回せば気がすむんだろう。

この一通の連絡でどれだけ心が揺さぶられるか、抑えていたものがどのくらい溢れてしまうのか、この人は分かっていない。

〈元気ですよ。どうかしました?〉

平然を装う。少しでも対抗したいという気持ちからだ。

〈今日か来週こっち来ない?〉

なんと。

夏に終わらせたのはなんだったんだ。

そう言いたくなるくらい勝手なことを言われ少し腹が立った。

結局この人の手のひらの上で踊らされていて、自分へ向けられている好意を分かっていての行動。

きっとこの連絡に返信がなくても彼はなんとも思わないだろうしすぐ忘れる。

会う必要はないし、会ったところで何にもなれない。

そんな事自分でも分かっているし正常な判断ができる人ならここで返信をせずおしまいにし彼とは会わないし、もう連絡を取る事も無くなるだろう。

ここで決めないと後戻りはできなくなるしきっと死ぬほど傷つくのが分かっている。

結局また都合よく抱かれて一方的に別れを告げられて目が開かなくなる程泣くんだろうな


〈今日も来週も行くよ。〉

思いとは裏腹にスマホに文字を打っていた。

ちょうど終わったバイトも予定を入れていなかった金曜日の夜も

全てタイミングが良くて会いに行かない理由がなかった。

それに宇多田ヒカルも昔歌っていたの。


「いつか結ばれるより、今夜一時間会いたい。」






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