秋の匂いがより一層切なくさせる

あの夏の別れから二ヶ月ほど経ったある日、

その日は先生の誕生日で返信が無いと分かっていても送らずにはいられなかった。

どうせ返信はないだろうとその日は夕方からバイトに勤しみ、スマホを見れたのは

夜も深くなった頃で数件のメッセージが来ていたが先生からのものはなかった。


着替えて帰ろ。そう思い帰り支度をしているとスマホが震えた。

さっき返信した楓からかな、なんて思いながらながら見すると

一番上に来ていたメッセージは先生からで。

思わず動きが止まる。

一度深呼吸をしてそれを開くと

〈ありがとう!元気にしてるか?〉

拍子抜けするような返信で少し怒りさえ覚える。

元気な訳はないし、それはあなたのせいだし、なんなの本当に。

そこに当たり障りのない返信をすると、またすぐ返信が来た。


〈彼氏出来た?〉


「はあーーーーー。」

「どした。」

深いため息が表まで聞こえてしまったのかシフトが被っていた一臣が

サロンを外しながら裏に入ってきた。

「片付け終わったんだ、お疲れ〜」

「お疲れ。そんなでかい溜息ついてなんかあった?」

飲みいかない?のジェスチャーをすると

「結構深刻そうだな。了解、ちゃちゃっと着替えちゃうわ。」

こういう時元彼って有難い。

自分の性格も相手の性格もそれなりに知っているから話しやすい。

友達に戻れていればの話だけど。

着替え終わって二人で店近くの遅くまで開いている居酒屋へ行き

取り敢えずビールというありがちで定番な注文を済ます。

「悪いね、付き合ってもらっちゃって。」

「良いよ、俺も飲みたい気分だったから。」

なんて話しているとすぐ出てきた待望のビールで乾杯をした。

一気に半分くらい飲み干すと、

「それで?溜息の原因は例の先生?」

「そうね、その通りよ。」

そう返し残り半分を飲み干す。

「おお、荒れてるね〜良い飲みっぷり。」

茶化され眉間にシワがよるが気にせずおかわりを注文した。


「なるほどね、何考えてるんだろうね。」

「何も考えてないんだよ、自分の都合のいいようにしか動いてないもの。」

「あれ、分かってるなら無視しちゃえばいいんじゃない?まあそれが出来たら今飲んでないか。」

いつもだったら言い返せるのに、見透かされている一臣の一言が今は辛い。

自分でもちゃんと分かっている。結局そういう扱いしかされえないのだ。

連絡なんて放っておけばいいし、なんならどうして自分から送ってしまったのか

少し後悔すらしている。


「でもさ、嬉しいって思っちゃうんだよ。」

自分でも珍しいと思うほど情けない声が出た。

「彼氏出来た?とか茶化されても?」

「それでも。」

一臣は入っていたビールをあけると溜息をつき

「バカな女だな〜」

「知ってるよ。」

無理に同調されるよりそう言ってもらった方が気持ちが楽だ。


その日は私の話ばかり聞いてもらってしまい程々に飲んで解散した。




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