第二話 黒夜病

「ケント、大活躍やったな」

「いやいや……お前強すぎだろ…」


俺たちは近くの洞穴に住みついているトロール退治の帰路についていた。少々の生活費は稼げたが、正直俺は要らないレベルだった。義眼で何とかサポートしようと頑張ったが、ほとんどアオガミ一人で蹴散らしていた。元王国兵というのは伊達じゃないらしい。


「まあパッと呑みにでもいこや」

「俺未成年だし……」

「あ?お前何歳や?」

「17だけど」

「なら大丈夫やんけ」


聞くところによるとこの世界での成人は15歳らしい。だからお酒も大丈夫、か。

なんだかんだ話しながら街に帰ると、集会所前の大通りに人だかりができていた。


「何かあったんか、おっちゃん?」

「黒夜病だよ。また出たって。もう勇者様によって“葬儀”されたけどな」

「葬儀ってなんだ?」

「黒死病患者、所謂“黒炎人”を殺すことや。それを葬儀といって勇者団も別名

『葬儀屋』って呼ばれとる」


なんだか俺が思ってた勇者像と随分かけ離れてるな。この世界では魔物じゃなくて人を狩るのか。ちょっとおぞましいな。

しばらくの間人ごみに紛れていると南の方からどよめきが聞こえてきた。歓声や掛け声もどんどん近づいてくる。


「勇者様の凱旋や」


どんな奴がこの世界の勇者なんだ。俺は背伸びをして何とかその姿を視野に捉える。目立つ金髪に水色の瞳、頬には傷があり首から下は紫の鎧で身を包んでいる。腰には大型の剣が据えられていて正に勇者そのものだった。さらにはその周りを取り囲むように四人の様々な恰好をした人物が歩いていた。髭を生やした盗賊のような男に、水色髪でシスターのような服をまとっている少女。格闘着のようなものを着ていて大きな胸を半分チラつかせている褐色肌の女。どいつもこいつもアニメや漫画で主役を張れそうなほどオーラと華があった。中でも一際眼を引いたのは、全身を鎧で包んだ騎士。


「あれだろ、新入りの女騎士」

「とびきり美人らしいぜ」

「今日もさっそくお手柄だったんだろ?」


口々にその騎士に対しての噂が囁かれ始める。しかし、騎士は聞こえていないのか興味が無いのか唯前を見て歩いていた。

すると、人だかりの中からこんな声が飛び出してきた。


「新入りの騎士さん、顔見せてくれよ-!!」

それに便乗するように人々が歓声を上げる。騎士は無視するつもりだったらしいが、勇者が騎士の胸のあたりを鎧の上からニヤニヤしながらつついている。呆れた様な素振りを見せつつも騎士は渋々といった感じで鎧を外した。観衆からは再度どよめきが起こり、それはさざ波のように広がっていく。


「噂以上のべっぴんやな、ケント?」


だがその時その言葉は俺の耳には届かなかった。茫然とする頭の整理が追い付かない。暮れゆく夕日とは逆から照らすその光が確かにその顔を浮かび上がらせる。

それに焦って詰まった喉からは言葉が出ない。音を出そうにも引っ掛かって絡み合って上手くいかない。やっとの思いで零れた名前も俺はいまいち理解できていなかった。


「琥珀……?」

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新人女神のミスで鍛冶屋として召喚された俺、お詫びに貰った異能で成り上がる。 爆裂☆流星 @okadakai031127

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