第10話エピローグ

 あれから1年が過ぎていた。

 その頃は仕事にも慣れて、1人暮らしをしたいと思うようになっていた。

 今までの私は実家に頼り切っていたために両親から反対された。

 

 今までの私なら両親の意見に従っていたけれど、どうしても自立がしたかった。

 フラれて傷つけられたけど、いつの間にか私は宏の真似をして背中を追うようになっていた。

 

 宏の両親は厳しい人だったようで、子供の頃は暴力を受けたこともあったらしい。

 けれど宏なりに両親を気遣い、実家から近いアパートに住んで実家にすぐ帰れるようにしていた。

 両親の不満はようだったけれど、反抗するわけじゃなくて静かに自立する姿は大人だと思った。

 


 ある日、アパートを見に不動産屋に行った。

 そこでフッと記憶が甦る。

 まだ二人が付き合っていた頃、二人でたまたま不動産屋の前を通りかかった時だった。

 宏はガラス窓に貼ってある物件を眺めていた。

 あの時、二人で住める物件を探していたように思えた。

 私が狭いアパートの生活に不満だったことを宏は知っていたから。

 2人のこれからについて、ひょっとして考えてくれていたのかもしれない。



「私ね、宏と会う前日がとってもワクワクするの。」


「そう? 俺は理帆に会っている時のほうが嬉しいよ。」




 子供っぽい私と比べて、宏はずっと大人だった。

 未来は全くないわけじゃなかった。


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ピリオドの種 tarina @tarina_po

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