第9話ピリオドの種

 宏と会わなくなってから数カ月が過ぎた。

 失恋のショックを引き摺りながらも、スクールには通った。。

 宏がいる会社を辞めて、資格を取って転職ができた。

 

 まだ付き合っていた頃に、宏から仕事について話したことを思い出した。


「自分にしか出来ないことを探してごらん。」と私に言ってくれた事。


 だから転職先の職場では与えられたことは全部引き受けた。

 もう頑張っても無意味だとは思わない事にした。

 迷うことなく目の前の仕事を懸命にこなしていた。

 弱くて情けない自分からは逃げたくなかった。

 こんなに仕事を頑張ったのは生まれて初めてだったし、辛いこともあったけれど歯を食いしばって頑張った。

 次第に職場の環境にも馴染んで、親しく話せる人もできた。



 私は宏を失って、自分の愚かさと向き合えた。

 今までどれほど甘えていたんだろう。

 私を黙って受け入れてくれていた宏の優しさに気が付いた。

 もっと早く気持ちを素直に伝えられたら、何かが変わっていたのかな?

 悲しい結末にならなかったのかな。


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