第2話

AIさんが「では行きましょうか」と言うと、突然謎の装置が起動した。円形の装置が床に置いてあって、その装置が緑色の光を放っている。そして、天井にも同じものが付いている。その装置の間に筒状の青白い光が通っている。

めちゃくちゃカッコイイこの装置が何なのかはちょっと予想出来ているが、一応聞いておく事にした。

「このカッコいいのなんすか?」

「これは、*ターミナル専用・都市間移動装置です」

キターーーー!!!カッコイイやつキターーー!!!最高すぎでしょこれ!

語彙力の無さがAIさんに伝わったところで、AIさんが僕でも分かるようにこの装置の性能を教えてくれた。

「この*ターミナル専用・都市間移動装置。略してTCMAは、その名の通りターミナルにある都市へ瞬時に移動できる装置です。しかし、TCMAにも種類があり、色で区別されています。これは青色と緑色のTCMAなので、青色か緑色かその両方の色の光を放っているTCMAのみへ、移動することが出来ます」

制限くらいあるとは思ったけど、どこに移動できるかわかりやすくていいね。

「はい。但し、どこにどの色のTCMAがあるのかは知らされていません。その上、その場所は教えては行けない、というルールがあります。これは、創造神様がこの装置を造った時に、面白そうだからと言う理由だけで、このルールを全能神様に作って貰ったのです」

いや面白そうだからって言うだけで作って貰うのは笑っちゃうな。でも、いいルールだと思う。ゲームでも、最初から全ての場所に行ける訳では無い。スタート地点から地道にワープポイントを探していくものだ。逆に楽しそうだな。創造神様ナイス。

「それなら大丈夫そうですね」

「そうですね。じゃあ早速行きましょうよ。これ乗ればいいんですか?」

僕の問いに「はい」と、答えた後に装置に乗った。そして、僕も乗るとAIさんが「ターミナル中央都市へ」と言った。すると、僕らは光に包まれ、あっという間に瞬間移動した。どうやら、この装置は行き先を言う事でその場所へ行けるようだ。

光が消え目を開けると、そこは想像を絶するほどの巨大都市だった

その目に映った世界の凄さに、思わず固まってしまった。

目の前に広がるのは無数のビルやモニュメント。しかも、歩いている人(人と言っていいかはわからない人型の何か)は緑色や青色など、とてもカラフルな肌をしている。これには裕二も興奮を隠せない。

「なにこれ!やべぇ!なんか車みたいなのが空飛んでる!なにあの人!すげぇ緑じゃん!なんだこれぇ!」

うわぁー!と言いながらはしゃぐ裕二と同類だと思われたくないのか、AIさんは他人のフリをしながら歩いていく。それに気づいた裕二は、「ちょ待ってくださいよ!」と言いながら追いかける。

「はぁ…。はぁ…。…ちょっと!なんでそんな急いでるんすか?」

ようやく追いつき、息を切らしながら言うと、

「ここはこの世界で最も栄えている都市です。そんな所でそんなアホみたいな子供のようなはしゃぎ方をされたら、こっちまでアホだと思われてしまいます。それだけは何としても避けたいので。」

と、またもや馬鹿にしてきた。

(うっわ。無駄に感情とか持ってるからそういう所気にするのめんどくさいな。)

「聞こえてますよ?」

うっ、、。

これは相当厄介なガイドだなと思いかけたが、それ以上は考えるのをやめた。もっと普通のガイドさんがいいなとも思いそうになってしまった。先が思いやられる。。

そんなやり取りをしていると、ずっとずっと遠くに、天まで届くような高い建物が目に映った。

「えっ。大き過ぎないですか?あれ。」

「あれは《英雄の塔》と、呼ばれるものです。」

「なんですかそれ。」

「《英雄の塔》は英雄になろうとする者を拒むかのように建つ塔のことです。

英雄になるためには、あの塔を登らなねばならないのです。これも、全能神様の出す試験のうちの一つです。通称、*力の試験。と、呼ばれるものです。武器や防具を集めて、数多の仲間の力を借りて、塔を登り切ったものには、《力の証》が授けられるのです。」

ほぇー。ってことは、僕もあれ登らなくちゃいけないってこと、、、?

「はい。」

まじかぁ、、、。めっちゃ高いんだけどあれ。めっちゃ時間かかるじゃんあんなん。しかも、僕高所恐怖症なんだよなぁ、、、。あんなの登れるかなぁ。

「別に登らなくてもいいんですよ?ただ、地球へは帰れませんがね。」

ガイドに脅されるとかやばいと思うんだけど。創造神様AIちゃんと造らないとダメだよこれ。

「私を侮辱するのは100万歩譲って許しますが、創造神様を侮辱するのはダメですよ。神様を侮辱したり、馬鹿にすると、違法行為とみなされ、二度と出られず、二度と死ねない牢獄に入れられます。終身刑ってやつです。」

いや怖っ。やっぱ全能神様怖いわ。もう名前で怖いと思ってたけど、やっぱ怖いわ。

もう何も言わないでおこう。そう心に誓った裕二だった。

そんな話をしていたら、裕二はお腹がすいてきてしまった。

「あのー。AIさん?お腹すいちゃったんですけど。眠気と疲れは無くしたのになんで空腹は無くさなかったんですか?」

問いかけると、

「食事は、一種の娯楽だと全能神様は考えました。美味しいものを食べたり、オシャレな盛り付けの料理を見ると、生命体は自然と幸せになるそうです。もちろん、睡眠で幸せになる人もいますが、必要ではないと考えたそうです。そのため、空腹は無くさなかったそうです」

はー。なるほどね。確かに学校帰りの買い食いは美味しいもんなぁ。確かに幸せになれる。でも、睡眠は最近は要らないなと思っていた。ゲームをやる時間も無くなっていたから。それを考えると全能神様は天才なのかもしれない。なにか僕と近しいものを感じるな。

「天才なのはそうだと思いますが、あなたと全能神様に似ているところなどありません」

ちょっと考えただけですぐこれだからな。気をつけないと。

さっき心に誓った事を、すぐ忘れた裕二は、そんなことなどすっかり忘れ、考えなくていい事まで考えてしまった。

話に夢中になっていて、食事についての話を聞きそびれてしまっていたのを、思い出した。

「あのー!AIさん!もうそろそろ空腹が限界に達しそうです。。。お店とか無いんですか?」

もう死んじゃうよと、言わんばかりの顔で頼み込む裕二を見かねたのか、AIさんは、「しょうがないですね」と言いながら、飲食店への案内を始めた。

その道中、裕二はこれから行くお店のことをAIさんに尋ねた。

「ところで、今向かってるところって、どんなお店なんですか?」

ここが異世界だということは、もしかしたらゲテモノ料理ばかり出てくるのかもしれないと感じたため、咄嗟に聞いてみたのだ。すると、

「着いてからのお楽しみですよ」

と、AIさんが言った。

いやいや。そんなサプライズ性要らないから、、。美味しいものじゃなかったとしても、見た目がアレな物とか、味がアレな物は食べたくないんだよ、、。だから今のうちに知っておきたいなぁ。もしそうだったとしても、今ならまだ変えられるから、、。

うーん、と言いながら悩む裕二を横目に、AIさんはスタスタと進んでいく。

そしてたどり着いたお店の名前は、、、ゲ、ゲロンズ、、?

日本語でも英語でもないこの世界特有の言葉なのかはわからないが、何故か読める。そんな言葉で書かれていたのは【ゲロンズ】という、名前からしてダメな匂いがプンプンするお店だった。

「AIさん?本当にここで大丈夫なんですか?」

怖くなってきた裕二は、AIさんに問いかけた。だが、AIさんは笑みを浮かべただけで、店の中に入っていく。もう諦めるか。。。そう思いながら、裕二も店の中に入った。そして、テーブルに着くと、何故かは知らないが店員らしき人が来ない。それどころか、メニューすらないのだ。

「店員さんまだですかね?」

たまらず裕二が聞くと、AIさんが、「え?」と、言いながら首を傾げた。

「いや、え?じゃないですよ。店員さん来ないし、メニュー無いから何食べれるのかわかんないじゃないですか。」

裕二が、おかしいでしょ?と言いながら聞くと、AIさんが、

「あーなるほど。地球の飲食店はそうなってるんですね。ここはまたやり方が違うのです。ここでは、お店を巡回している*料理思考読み取り専用AIが、お客様の頭に浮かんでいる、料理の思考だけを読み取り、それを厨房にいる料理人さんに伝え、それを料理人さんが作る。というやり方なのです。なので、何を食べられるお店、というものはなく、飲食店は全て、なんでも食べられるお店、になっているのです。」

へ?つまり、ラーメンを考えればラーメンが、お寿司を考えればお寿司が出てくるってことか!?

「はい。ただ、思考を読み取る時間が5分と決まっています。なので、あと1分程経つ前に、食べたいものを思い浮かべなければ、そのゲテモノ料理とやらが出てくることになります。」

「はぁ!?ちょっ、それ早く言ってよ!」

想定外のルールがあったため、裕二は驚きつつも、今食べたかったラーメンを頭に浮かべた。豚骨スープで、分厚いチャーシューが5枚乗っている。さらに、裕二はネギが好きなので、ネギもたっぷりに想像した。

いつこの時間が終わるのかと、気を張りながら考えていると、料理思考読み取り専用AIが、厨房に行く姿を見ることが出来た。

「ふぅ…。やっとか。これで僕のラーメンが来るのか。素晴らしいシステムだ」

うんうん、と頷きながらこのシステムを褒めていると、厨房からさっきのAIとはまた違ったAIが、手に料理を持って出てきた。そして、僕らのテーブルの前に立つと、「お料理をお持ちしました。熱いうちにお召し上がりください。」と言ってから一礼した後に、「それでは、ごゆっくり」と言って、また厨房へ戻って行った。

持ってきてくれた料理は、僕が頭に浮かべていたラーメンそのものだった。色味も匂いもこの湯気の具合でさえ、全てが想像通りだった。

「うわすげぇ!めちゃくちゃ美味そう!早速食べよ!」

僕はそう言って料理を食べようとした、その時だった。店の外が異様なほど騒がしくなったのだ。

「何があったんですかね?」

と、ガイドAIさんに聞いてみたのだが、返事が無い。いつもなら僕を馬鹿にしながら説明してくれるのに。

おかしいなーと思いながらAIさんの方を見た。しかし、そこにAIさんは居なく、ビックリしながらも周りを見渡した。すると、何故か今いる場所があの飲食店ではなく、僕がAIさんと出会った場所に変わっていた。

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ターミナル 回線弱者 @kaisenjakusya0655

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