ターミナル
回線弱者
第1話
ごく普通の高校二年生 丸井裕二は数学の授業を受けていた。
で、あるからして、、、と、先生が説明しているが、全く頭に入ってこない。それもそのはず。一昨日買ったばかりのRPGのゲームをやり込んでいたため、昨日はほとんど寝ていなかったのだ。さらに、今は夏。その上クーラーが故障しているため暑すぎて何かを考える気にすらならなかった。
(あー、早く家帰ってクーラーの効いた部屋でゲームやりてぇ、、、)
そんな事を考えていたのが先生に気づかれてしまったのか、この問題は、、、丸井!分かるか?と、当てられてしまった。
もちろん、聞いていなかった問題など分かるはずもなく、何も言えずに固まってしまった。 そんな裕二を見かねた友達がフォローをしてくれたおかげで何とかその場を乗り切ることが出来た。
そして、数学の授業が終わった。あとはホームルームだけだ。やっと家に帰ってゲームができる、と思っていた裕二に、先程フォローをしてくれた友達が話しかけてきた。
「さっき助けたんだから、今日ゲーセン行こうぜ!一昨日はあのRPG買うの付き合ってやったんだしいいだろ?」
しかし、こいつとゲーセンに行くと、やたらと無駄遣いしてしまう。何故なら、こいつは異様なほどUFOキャッチャーが得意なのだ。それに感化されて自分もやってしまうが、自分はうまい訳では無いので何も取れずにお金だけ減ってしまう。絶対に行きたくない。さらに、あのRPGを早くやりたい。そのため、
「いや今日はちょっと用事あるから、また今度行こうよ」
と、断った。しかし、
「どうせあのRPGやりたいとかだろ?」
と、見抜かれてしまった。さらに、ギクッ!という効果音が出たのではないかというくらい分かりやすく驚いてしまった。
「決まりだな!(笑)」
こうして、ゲーセンに行くことになってしまった。
友達と話しつつ、眠気と戦いながらゲーセンに向かう。
「お前眠そうだな。大丈夫か?」
「心配ならゲーセン行くのやめて家帰らせてよ」
「大丈夫だ。もう何を言ってもゲーセンには行くからな」
ダメだ。眠いしゲームやりたいのに全然隙を見せない、、、。逃げることを諦めた裕二と、やる気満々の友達はゲーセンに到着した。ここは、大型ショッピングモールの中にあるため、冷房が効いていてとても涼しい。ふぅ、、、と、皆が一息ついた所で入ろうとしたまさにその時だった。ついさっきまで話していた友達が急に消えたのだ。
「え。」
びっくりして思わず後ろに下がる。そこでさらに驚くことになる。直ぐ後ろにあったはずの自動ドアはおろか、その後ろはショッピングモールの中のはずなのに、人も建物も何もかもが消えていた。ただの真っ白な空間だった。
「なんだよこれ…。」
頭が真っ白になってしまい、出てくる言葉はたったこれだけ。そんな裕二に追い打ちをかけるように、青白い服を着た綺麗な女性が突然現れた。
「うわぁ!」
と、間抜けな声をあげる裕二に、その女性が優しく声をかける。
「大丈夫ですか?」
「いや、あの、ここはどこなんですか?」
驚きつつも質問をしてみる。
「ここを知らないんですか!?そんな人初めて見た、、、。」
ここはそんなに有名な場所なのか?いやでもただのゲーセンのはずなのに、、、。一回全部説明するべきか?
そう思った裕二はここに来るまでのことや一緒に来た友達のこと、本当はゲーセンに向かっていたことなど、今に至るまでのことを全てこの女性に話した。すると、驚きながらもこの場所のことを話してくれた。
「ここは、《ターミナル》です。この世界に存在する全ての種族の生命体、食べ物、仕事、娯楽など、があるため別名、全てが集まる場所。と言われています。」
「ターミナル、、?全てが集まる場所?」
「はい。ここでは全能神様の決められた規則を守りさえすれば、何をしてもいいのです。」
何をしてもいいだと!?そんな場所があるのか!?
「はい。」
「え?今口に出てました?」
思わず手を口に当てながらそう言うと、
「いいえ。ですが、私のような案内ガイド用AIには、迅速な対応を可能にするために、相手の考えていることを読み取る機能が搭載されています。但し、読み取れるのはガイドを求めている人に限ります。」
なっ、、、。じゃ、じゃあ、あの時この人がはい。って言ってなかったら確実に思っていたであろうあんなことやこんなことも知られていたかもしれないってことか、、?はっ、!これ聞かれてるから意味無いじゃん!そんなことを考えながら頭を抱えていると、ふふっ。と、AIらしからぬ笑みを浮かべた。
「AIって感情あるんですね。もっと冷徹な感じだと思ってました」
「AIも生きていない訳では無いですので。造られたとはいえ、全能神様の弟子。その中の1人である、創造神様に命を吹き込んで頂いたので、ロボットではなく生命体に分類されるのです。」
ちょっと質問したらまた知らない人物がでてきた。
「その全能神、、様?と、創造神様?って誰なんですか?」
ガイドとかなんとか言っていたし、分からないことは全て聞こうと思い、聞いてみたのだが、名前からしてわかる通りやはりこの世界の神様だったようで、知らないやつなんているのかよ、と言われているような顔をされた。
「いいですか?全能神様とはこの世界。すなわちターミナルを造られたお方です!そして、創造神は全部で4名の御弟子様のうちの一人。AIだけではなく、全ての*物を造られたお方なのですよ!?《外から来た生命体》でも他はみんな知っているのに!」
何やらちょっとキレ気味に言われた。まあそりゃそうだ。自分が崇拝してる上、知らない奴なんて居ないと思っていた存在を知らないやつが現れたんだ。誰だってちょっとはキレる。
そう考えていると、さっきこのAIさんが言っていたことで引っかかることがあったのを思い出した。
「あの!さっき、《外から来た人間》とかなんとか言ってましたよね?それはつまり、僕の他にも、ここでは無いどこかから来た方がいる、ということですか?」
これ次第では、僕の状況が大きく変わる。同郷者がこの世界にいないとしたら、元の世界へ帰る方法も分からないと思う。だが、もし同郷者がいるのならば、帰る方法が分からなかったとしても、少しくらいの情報は得られるだろう。つまり、AIさんの答えによっては、全てが変わると言っても過言ではないのかもしれないのだ。
さぁ。答えは?
「はい。」
キター!はい!これは大きい!
そんな感じで喜びまくっていたのだが、AIさんが思わぬことを口にする。
「喜んでいるところ申し訳ないのですが、非常に残念ながら、地球人はあなたが最初のようです。」
え?なんそれ。地球人1人目とかなんか普通なら喜べるワードなのに、全く嬉しくないんだが。
「いや、そもそも地球人がこの世界に来れることがおかしいのです。」
「どういうこと?」
「そもそもですね、世界間を行き来するためには、膨大なエネルギーが必要になるのですが、そのエネルギーは全能神様からしか得ることが出来ないのです。」
「ちょっと待って!世界間を行き来するって言ったけど、ここでいう世界ってどういうことなの?さっき、《ターミナル》のことも世界って言ってたし、よく分かんないんだけど。」
聞き逃すところだった。こういう凡ミスが後で命取りになるのだ。
「世界というのは、そうですね、あなたで言う所の宇宙です。」
はぇー。そんな大きいのかここ。
「はい。そして、《ターミナル》と宇宙を含めて、全部で5つの世界があります。」
いや多すぎやん。
「先程、創造神様の他に御弟子様は3名いると言いました。その御弟子様1人1人と、全能神様それぞれに1つずつ、世界が与えられているのです。」
なるほどなぁー。宇宙にも神様いるんだな。
「そうです。そして、その世界間を行き来するための話の続きなのですが。」
ああ、そうだった。宇宙というワードがでただけで親近感湧いちゃうから、直ぐに他のこと忘れちゃうな。
アホみたいなことを考えている間に、AIさんが説明してくれる。
「それがですね、全能神様からは毎秒、膨大なエネルギーが放出され続けているのです。」
へ?それ全能神様に近づいたら即死亡的なやつじゃん。
「そうです。実は、全能神様はこの世界を造られた時に、とても大きなエネルギーが必要だと思い、力を1度溜め込んでから造ったのですが、力を溜め込みすぎてしまい、全能神様の体内に、二酸化炭素をエネルギーへと変えてしまう器官が出来てしまったのです。」
なんか、木みたいやな、、。
「まぁ、環境にはいいとは思いますけどね。ただ、そんなエネルギーを常に放出していると、何かと危険な上、それを抑えようとすると、自分の力だけではこの世界を回すことが出来ないと考えた全能神様は、御弟子様を造ることにしたのです。」
え、弟子って造れるの?
「はい。全能神はその名の通り全知全能の神。少しのエネルギーと想像力さえあればなんでも出来てしまうお方です。そこで、全能神様は4名の御弟子様を造られました。そして、それぞれの御弟子様に1つずつ世界を作り、この世界を回せる環境を作られた。と、言われています。」
はー、なるほどね。ん?それで、エネルギーどうやってゲットするの?
「英雄となり、全能神様に弟子だと認めさせ、自らが神となれば、全能神様にも近づくことができるようになります。」
英雄!?なんかそれっぽいのきた!
「そうですね、あなたはRPGをやっているのですね。それなら話が早いです。この世界を含めて5つの世界があります。
『あらゆる生命体がいる*ウチュウ。
伝説の武器と伝説の防具が眠る*ソルド。
そこで生まれた生命体はAIしかいない*ビ ト。
数多の精霊が住まう世界*フェーリ。
そして、全てが集まる場所*ターミナル。』
これらの世界を巡り、装備や仲間、魔法などを覚え、全能神様の出す最終試験をクリアすれば、晴れてあなたも弟子となります。」
うわぁー!超それっぽい!めっちゃ楽しそうじゃん!
「ただ、ひとつだけ言えるのは、命をかける覚悟がない限り、弟子になろうなど思わない方がいいということです。」
命をかける覚悟、、、。
「はい。まぁ口で言ってもわからないと思います。とりあえず《ターミナル》の中央都市に行きましょう。そこで説明した方が早そうなので。」
なるほど。とりあえず言われるまま付いていくとしよう。ん?そう言えばめちゃくちゃ眠かったのに全然眠くないな。
「この世界では疲れと眠気は不必要だと思い、全能神が排除したからですね。」
なるほどな。全能神様超ナイス。
「それでは。行きましょうか。」
さぁ!冒険の始まりだ!(とか言ってみる(笑))
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