「二人の将来」

「ま、君も若いんだから将来なんていくらでも決められるわよ。

 ああ、そうだ。さっき島を出る直前に島の監視ロボットの

 映像データを一部拝借して解析に回してみたんだけど、

 …ルナちゃん、ずいぶんと島で進んだ勉強をしていたんじゃない?

 数学に物理に生物に実は大人顔負けの知識を持っているでしょう?

 ジョン太くんと一緒に暮らすんだから家庭教師になってあげたら?」


そんなクロサキのとつぜんの発言に、

ルナもジョン太も「え?」と顔を見合わせます。


ついで、クロサキはタブレットの通話履歴を見せ、

二人にニコッと笑いかけます。


「ついさっきね、ジョン太くんのおじいさんと電話をしたの。

 クローンであるルナちゃんには身分を証明するものがないからね。

 ルナちゃんを養子にする形でおじいさんの家に引き取って

 彼女の保証人になってもらうことにしたのよ。」


履歴には『サイトー博士』の文字と

ジョン太のおじいさんの顔写真。


「…もちろんルナちゃんが嫌なら、別の方法も考えるけど。」


それにルナは「いえ、それでお願いします!」と大きく返事をします。


「私、ジョン太と一緒に過ごしたい。

 ジョン太と一緒にこの世界のいろんなことを知りたいんです。

 見ているだけじゃない、この手で触れて知りたいんです。

 それにジョン太が一緒にいるなら…人生がもっと素敵になるから。」


そうして、なぜか顔を真っ赤にするルナ。


それにクロサキは「ふふっ」と笑うと、

「じゃあ、決まりね。」とジョン太を見やります。


「ああ、そうそうジョン太くん。サイトー博士なんだけど、

 知らなかったとはいえ自分のせいでジョン太くんを

 危険な目に合わせたってずいぶん落ち込んでいたわ。

 私も一緒に謝りに行くけれどジョン太くんの説明も欲しいところでね。

 だからお願いしたいんだけど…ジョン太くんはいい?」


「ええ、いいですけど…。」


そうして、半ば上の空で答えるジョン太は

とうとう我慢ができず、ルナの手をとって声をあげます。


「やったじゃん、ルナ!

 これで僕ら一緒に過ごせるよ!」


それに、ルナも声を合わせます。


「そうだよね、もう独りぼっちじゃないよね。」

 

ジョン太はルナと一緒に過ごせる嬉しさのあまり、

彼女の手を握ったままぴょんぴょん室内を飛び跳ねました。


ルナもジョン太の行動にちょっぴり驚きますが、

すぐに彼に従い、楽しく一緒に室内を跳ね回ります。


その横ではパトリシアがあきれ顔で

「クゥーン」と不満そうな声をあげ、


『私がボトルを持ってきたからこうなったんだよ。

 この浮かれ野郎が!』


と言っているようにも聞こえましたが、

その声もジョン太とルナの歓声によってかき消され、

飛行船の室内は明るい雰囲気に包まれていったのでした…

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ジョン太の島 化野生姜 @kano-syouga

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