第23話 六甲山の怪異
これは最近の話だ。
2018年の12月、俺は息子と今までの俺のオカルトの体験談の話をしていたときのことである。
俺
「そもそも幽霊ってのは夜に『うらめしや』と出てくるやつばっかりじゃないんだぞ」
息子
「え?どういうこと?」
俺
「例えば、昼間の渋谷のスクランブル交差点でたくさん歩いてる人たちがいるよな」
息子
「うん」
俺
「あれ全員が人間だと思うか?半分幽霊だったとしても誰もわからないよな」
息子
「と言うと、普通に昼間でもぶらぶら歩いてるって言うこと?」
俺
「そういう場合もあるということだ」
このような会話をしていた何日か後に俺たちは六甲山に登ることになった。
ちなみにその時の息子は24才である。
俺の自宅は六甲山に近いのであるが、六甲山は幽霊の目撃談も結構多いと言う話をしながら歩いていた。
中腹ぐらいまで登ってきたときに「ここらで休憩しようか」と言うことで2人で大きな石に座って休憩をとっていたときのことである。
後から4人組のじいさん達が俺たちの前を通過していった。
いでたちは全員、普通の登山者の服装と帽子をかぶっていて一見何の不思議もなかった。
ただ一点を除いて。
どういう訳か、全員がゴルフのアイアンを1本ずつ持っていたのである。
山登りにゴルフクラブ?
杖ならわかる。
よく登山で杖をつきながら歩いている老人を見るからお馴染みの風景だ。
しかし全員がアイアンのクラブを持って杖のように使いながら歩いていると言うことにまず疑問を抱いた。
そもそもフェイスを下にしているから杖のように安定していない。
六甲山上にゴルフ場はたしかにある。
しかも4人だ。
山上でゴルフをするのか?
しかしアイアン一本だけ?
そうこうしていると俺たちの前方で、老人たちは立ち止まった。
その中の1人が
「こういうところがいいんだよ」
とか言いながらいきなりゴルフクラブで地面を叩き出して穴を掘り出した。
石だらけの登山道の真ん中でだ。
すると他の人も
「そうそう、こういう所だよなぁ」
とか言いながら他の人間も、集まってゴルフクラブで同じ場所に穴を掘り始めたのである。
4人ともが一心不乱に穴を掘っている。
「ん?」
「何が始まったのだ?」
俺たちは座って爺さんたちが円になって穴を掘る光景を漠然と見ていた。
もちろん石でゴツゴツした道にゴルフクラブで穴が開くはずがない。
しばらくポカンと見ていたら、最後は4人の爺さんたちは、穴を掘ろうとした場所にクラブの先端を置き、反対側のゴルフクラブの柄の端を額に当てて、穴を中心にぐるぐると回っているのである。
「?」
「なんかの儀式か?」
俺はいきなり気持ち悪くなってきた。
こいつらは果たしてこの世のモノか?
すると後ろから黒いジャージ姿の若者が、割と早足で歩いてきた。
「こいつはこの異様な光景にどんな反応をするか」と見守ったが一瞥もしないで抜き去った。
「え?スルーかよ」
早足の若者は左カーブの山道を曲がり、姿が見えなくなった。
俺たちは額にクラブを当ててまだグルグル回っている爺さんたちの横を歩いて、先ほどの若者に追いつくため早足で歩いた。
左カーブを曲がると見晴らしのいい一直線である。
しかしその道には若者はいなかった。
脇道もない一直線の道だ。
爺さんたちが怖くて猛ダッシュしたのか?
いや、長くまっすぐに続く道はそんな短時間で見えなくなるような距離ではない。
背後を振り向くと、まだ爺さんたちはグルグル回っていた。
「要するに全部幽霊かよ!」
俺が体験した不思議な話 胡志明(ホーチミン) @misumaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。俺が体験した不思議な話の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます