第4話 ─ 「猛獣・子狸トリオ」




「クゥ~!!今日も御客オキャクさん、向かいのチーズ屋に持っていかれてる~う!!」

 

 秋葉原蔵前通りをハサんだ、チーズ専門店が、近頃チカゴロ、売り出した、タピオカシェイクが大当たり。

 これまで、繁盛ハンジョウしていた、当店、狸山タヌヤマ商会・タピオカ店は、そのあおりを食う羽目と成り、連日、閑古鳥カンコドリが鳴いている。

 

 ポン、ポン、ポン、オスの子狸コダヌキ3匹が、愛らしいメイドちゃんに化けて、店員さんになっているのだが、この様に、毎日、ヒマと成れば、社長のポンアニキにドヤされてしまう…。


「ナンゾせんと、いかんゼヨ!!」

 ポン蔵が、ツメめ寄る。


「エ~ン!!こんなんじゃサァ~。ポン太アニキにシカられるサァ~!!」

 ポン吉が、泣き付く。


「オレも今、その事を考えていたんだ…。このまま、指をクワえて待って居ても、解決は着かねぇ!!」

 腕まくりをしたポン助が、二人の肩を抱き寄せると、


「昔の兵法家 ″ 孫子ソンシイワく。

『敵を知り、オノレを知れば百戦危うからず!』と在る。

 ここはまず、相手を知る事が先決だ!!

 これより、オレ達、狸山商会・猛獣モウジュウ子狸トリオ様が、敵陣テキジンに乗り込んでやるんだよ!!どうだ!!お二人さん!!」


「オッシャア!!ナメたら、いかんゼヨ!!」ポン蔵が気合いを入れる。


「エ~ン!!二人が行くなら、オイラも連れて行ってほしいサァ~!!」

 ポン吉も賛成する。


 店前の横断歩道を、腕組みをしたポン助を先頭に、ポン蔵、ポン吉と続き、前者の腰の辺りをツカむと、電車の様にゾロゾロと進んで行く。


「♪いらっしゃいませぇ~。どうぞ、お好きな、御席へ~」


 筒兎ペコが声をける。


 いささか緊張した3人は、店内の丸テーブルに着く。そこへモゾモゾと、ポン助が、ポケットから、お金を出し、


「オレは、230円だ… 」

 チャリン!!とテーブルの真ん中に置く。

「オラッチは170円ゼヨ…」

 ポン蔵も、その上へと置く。

「オ…オイラは…80円サァ~!!」

 一枚ずつ丁寧テイネイに置く。


「なんだよ…タピオカシェイクは450円だから、3人合わしても一つしか買えないじゃんかぁ…」と、ポン助が残念そうに言い、そのまま注文を頼む。


 3人のテーブルの中央に、運ばれて来たシェイクをジッと見つめる子狸トリオ。


 じゃあオレから…とポン助が手をばし一口含むと、も言えぬ表情と変わり、そのままポン蔵に渡す。ポン蔵も一口含むと、美味しそうな笑顔で、ポン吉の前に置く。何も言わない、二人をイブカしげに見つめながら、ポン吉も一口。


「ああ~なんで、美味しい飲み物なんサアァ~。両方のホホが落っこちてしまいそうサアァ~」


 他の二人も、無言で大きくウナズく。


「おっ!?そこの子狸めら、どうやら満足した様子じゃのう!!」


 将軍様ポールが嬉しそうに近寄る。


「なっなんだって、オレ達の正体がわかったんだよ!!」ポン助が驚いて、タピオカを一つ、口元から飛ばしてしまう。


「分かるも、分からないも、シッポが丸見えじゃゾ!!」


 3匹が、お互いに確認すると、興奮のあまり可愛いメイド服のミニスカートから、フルフルと大きなシッポが踊っている。


「イテッ!!イテテテッ!!」


 座敷わらしが、ポン助とポン蔵のシッポを、ねじ上げる。


「ワァ~!!この娘!!いきなり、いて出たぁ…!!化け物サアァ~!!!!」

 ポン吉が、泣き出す。


「アンタ達だって、化け物じゃないっ!!あたいの事なんて言えた義理じゃないさ!!」


 サラに、ギュッと力を入れる。


「これこれ、スズ(座敷わらし)…!!手荒なマネはよすんじゃ!!」


 ウナガされたスズが、不満そうに手を離す。


「正体が、バレちゃ仕方ねぇ…。ばかりは、使いたくなかったがよう!!」


 ポン助が、イスの上に立ち上がり、スカートの中から、ピストル一丁を抜き出す!!


「オレ達、猛獣・子狸トリオを敵に回しまっちゃあ、最後まで、を見ない訳には、いかないんだよう!!」


 そう言うと、パシュン!!パシュン!!パシュン!!と、引き金を引く。


 その都度ツド、ポールのオデコの真ん中で、ポヨーン、ポヨーン、ポヨーンと、黒く丸いタマがハジかれる。


「オイ!!ポン助!!そのピストルのタマ、タピオカの弾丸ダンガンゼヨ!!」

 ポン蔵が驚く。


「そんな事、当たり前だろう?ピストルなんて危ない物、人に向けてはいけないって、お父さん、お母さんから教わって来なかったのかよ!!

 まして、こんな物突き立てて、相手がケガなんかしたら、大変じゃんか!!」


 それを聞いたポン吉が、ポカンと口を開けている。


「ああもうもう、店内をこんなにタピオカだらけにしおってぇからにぃ…困るじゃないかのう!!」


「ううう…それは、手間をけさせちまってすまねぇ…

 ムムッ!!今日のトコロはこれぐらいで勘弁カンベンしてやる!!

 野郎ども!!引き上げだ!!おぼえてろよ!!」


「忘れたらイカンゼヨ!!」

「忘れないでイテほしいサァ~!!」


 3匹は、一目散に店を後にした。








 ─ 横断歩道を渡る子狸達。


「ポン助!!ポン蔵!!

 タピオカシェイク、本当に美味しかったサァ~!!」


「今度は、お小遣オコズカいをめて、一人、一個づつ買うゼヨ!!」


「そうだな!!また、3人で行こうなっ!!」


「3人一緒なら、美味しさ三倍サアァ~!!」


 3匹がニッコリ笑顔でうなずく。







 ─秋葉原蔵前通り、昼下がりの出来事である。



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