第5話 話の塗り替え
一週間後――
二人が作戦を続けてからあっという間に時間が過ぎた。
本当なら、昼にはここを出て自分の住んでる場所へと戻るのだが、
残念ながらそうはいかずに、 これから一世一代の重大任務を
遂行することとなる。
そんなわけで居間には、 筒城、 綾葉、 彼女の母嫌がすでに待機しており
残りは父親だけという形になっていた。
数分後、 他愛もない話しをして時間を潰していると手の空いた
彼女の父親が入ってきた。
「おぉ、 悪いね。 時間がかかってしまって、 それで話っていうのは? 」
彼女の父親が床にゆっくりと座りながら話を聞いてきた。
「私達結婚するから!!! 」
綾葉のいきなりの結婚宣言に両親の目が点なった。
つられて筒城の目も点になる。
少し微妙な間が空いたがすかさず訂正を促すように
彼女に言った。
「結婚じゃないだろ、 飛ばし過ぎだ。 」
綾葉にそっと耳打ちをし、 それを聞いた彼女も慌てて先程の言葉を訂正をした。
「違う! 彼氏!! 私この人と付き合うから! 」
「えーっと、 とりあえず落ち着きなさい。 一体何がどうなって今に至るのか教えてくれないか? 」
彼女の父親の言葉はもっともなことだった。 確かに泊まりに来た客と実の娘が
一週間で恋仲に落ちるなんて話は親としては詳しく聞きたいだろう。
聞いたとしても待ったをかけてくるものだと筒城は思っていたが、
ここでまたしても綾葉が両親を言葉で攻め続ける。
「どうなっても何も、 好きになったんだから仕方ないじゃん! 将来は私の旦那さんになるんだから! この店だって私達で何とかするし! 」
――だからちょっと待て話を飛ばし過ぎだアホ。
結局、結婚の流れ・・・ てか店持っちゃってんじゃねーか!!
「その理由だけでは親としては承認しかねるんだがな」
「ねぇ、 もしかして二人がそういうこと言うのってもっと
別の意味があるんじゃないの? 」
彼女の母親が鋭い所を突いてきたのがびっくりだったが、
悪魔で冷静を保ちつつも筒城は話を聞いていた。
「この一週間、 私たちの前で仲の良い感じに話していたけどきっと理由があるのよね?でなけえば、普通は両親への挨拶はもう少し時間がたってから吸うものだと思うし。するにしても急すぎるっていうのが不自然なのよね 」
本当に、全てバレてしまってるんではないかと思うくらいに核心を迫るその
言葉に、いよいよ本題を話さなければいけないと筒城は覚悟していた。
しかしその前に彼女がまた両親を攻める。
「・・・ 急すぎるって何なのよ、 自分たちだって話もしてくれないくせに、 自分の子供が付き合うってなったら口出しするの!? 」
「ちょっと待て綾葉、 何の話だ 」
「何の話って、 とぼけないでよお父さん! 離婚のこと知ってるんだから! 」
「お前、 いつからそれを・・・ 」
「だいぶ前から知っていたよ! この宿を存続させるかどうかで
離婚の危機にあることくらい! 」
「落ち着いて、 綾葉 」
「お母さんは黙っていてよ! 大体・・・ いったぁ! 」
話し始める彼女の頭上にチョップが降り注いだ。
スコーンと威勢の良い音を立てながら彼女の頭を直撃する。
「落ち着けって、そもそもここまで来た以上はきちんと話すべきだろ 」
「
「フゥ、 落ち着いたところで話をさせていただきますね 」
それから事細やかに筒城は二人に話をし始めた。
離婚を阻止するために動いたこと、 そのためだけに二人の目の前で
仲がいい雰囲気をだしていたこと。
とにかく自分の持っている情報は持っているだけ出した。
「・・・ 以上が全てです。 責めるのは私だけにして下さい、
娘さんは何も悪くないので 」
「いや、 筒城君も綾葉も私は責められないよ、そうかそこまで私たちは綾葉を追い詰めていたのか・・・ 」
「私は二人が離婚するのは死んでも嫌 」
「そうか・・・ しかし私としても譲れないんだ 」
「そのボロボロの身体で何言ってるの! 」
「うるさい! 元はやめるタイミングは俺に一任されていたはずだ! 」
「それを見ていられなくなったからこうして止めているんじゃない! 」
両親二人が段々と険悪な雰囲気になっていく。
それを見かねた筒城は半分呆れながらも、 二人に向かって話し始めた。
それがもう他の家族の問題だとか、 この先のこととか一切考えずに
感情だけで突っ走る。
「いい加減にしてください! ここで争っても意味なんてないでしょう!何のために僕らがこんなことをしたと思ってるんですか!
綾葉さんの気持ちも考えてください! 」
「・・・ しかしこの宿を潰させるわけには・・・ 」
「そんなもの、 俺がやってやりますよ! これ以上、 彼女を傷つけるのは
やめてください! 」
「
「・・・二人の気持ちはよくわかった。 離婚はしない 」
彼女の父親が離婚の取り消しを申し出るとともに、
筒城たちに条件を突きつける。 その様子を見て母親は
ニマニマと笑っていた。
「その代わり、 娘をよろしく頼む 」
「えっ? 」
「あれだけ熱いアプローチを受けたら親として答えるべきではないかなと思ってな、娘さえよろしければこの店も一緒に・・・ 」
「ちょっ!? 俺はただ店の手伝いを・・・ 」
「私で良ければよろしくお願いいたします 」
――嘘。 こんな結末って・・・
どこで
end
海辺の少女と革命を!!! 夜月 祈 @100883190
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