第26話
26話
<div name> lost every day</div>
濃艶な(闇)がまとわりつく
一歩を踏み出せばコンクリートを踏んだような感触
床も壁も天井もその素材はわからない
周囲の温度も寒くなく、暑くもない
ただ粘り気のある濃い闇を連れて歩いている、そんな(気配)だけを感じる
仲間が見つけ、仲間を失ったあのビルで咄嗟に飛び込んだ穴の中はそんな気配だけが漂う(どこか)だった
先へ進まなきゃいけない
ただその使命感だけで足を進めるも通路は永遠と続くような気配
何分?何時間?或いは何日歩いているのだろうかわからなくなる
通常の世界での時間や感覚とは違ってしまっているのかもしれない
最初は走りもしたがもう走ることもできなくなるぐらいに疲れ切っている
この(闇)にそういう効果があるのかもしれないな
琴木はそう考えていた
どこをどう曲がりどう進んだかももうわからなくなってきた
はると八木とさえもはぐれてしまい今は一人進んでいる
はぐれたのももう遠い昔のような感覚
スマホの電波も届かなく連絡も取れない
この先の組織の奥にたどり着いてもどう立ち回るかさえもわからない
琴木「ここはどこだよ。。」
不安、焦り、も疲れで何も考えれなくなってきた
後戻りすることもできない
(分かる)能力があればまだなんとかなるかもしれないが遺産自体は、はるが持っていて使用も出来ない
なぜ一人になった?
3人一緒に穴に入り、3人同時に走っていたのは覚えている
だが気づけば離れ離れになっていた
周囲を探し、声を上げても届かず前へ進むしかなく一人でも先へ進んだ
後にも止まれず先も見えない
何も視えずに進む
琴木には何も(視え)なかった
<div>hal day</div>
確かに一緒に穴に入ったはずだった
気付けば一人
いつもであれば当然混乱したとは思うがはるの場合はもう一人いる
清香「前へ進め!諦めずに!走れ!」
全てが(分かる)彼女がはるの中にいる
その彼女がずっと前へ進めと告げている
なによりも一人ではないそれが一番、はるにとって心強かった
それに(分かる)彼女がそう言っているのだからという安心感もある
はる自身にも(分かる)能力はあるが清香ほどではない
「全てをわかってしまった」
そう彼女が言っているのだからはる自身能力を使う必要も必要ないかも。。とは思っていた
思っていたのだが少し引っかかることがある
はるはこの穴に入ってからずっとそれを考えていた
「先へ進め!」
そういう彼女は本当に正しいのか?
周囲の闇がはるに不安を与えそう考えさせているのかもしれないが
はるには一つ(分からない)事がある
そして、同時にはるは自分に何が分かるのだろう?と考え込んでいた
友人の死も友人が消えたことも自分には分からなかった
自分の中の清香は、なぜそれを教えてくれなかったのか?
走り続ける周囲の(闇)ははるに猜疑心と不安を効果的にもたらしていた
<div >八木 day </div>
理解が追いつかない
最近訳の分からない事ばかりではあるが
扉でもなく、穴にはいり
入った途端に一緒にいた二人を見失う
そんな訳の分からない(今)
走るしかないと前に進むも同じ道を延々と進んでいる感覚
周囲の重苦しいまとわりつく闇
八木「あの時と同じ。。?か」
人生経験である
(あの時)よりはまだイージーモードではあるし
こういう時どうするべきか?はもう分かっている
ある道を進む
そして現状打破の材料を探す
使えるものを利用し血路を開く
それしか出来ないのだから
立ち止まり少し考える
八木「。。進む道しかないって事は進むようにされてるって事、だよな?」
懐からいくつか(道具)を取り出し組み立てる
八木「進めないと認識しているこの壁の向こうへ最速でたどり着くならこの壁を取っ払えばいいって事だよな?」
組み立てた道具に火をつけ行き止まりの壁に向かって放り投げる
数秒後に道具は周囲を巻き込み爆発、四散する
八木「いくつか破壊して進んでみようか、この道はどうもおかしい」
走り続けた道を八木は脳内でマッピングしていた
細かくは無理だが、簡単に左手を壁に沿わせ真っ直ぐに進んでいた
通路が封鎖されているのであればいつか入り口に戻る
同じような道は何度も通る、その幾度と見た道に、傷をつけて進んでいた。
八木「入り口で傷つけた道にまた戻っているが、出口は見えない、完全に封鎖された袋小路のようなものだとは思うが。。」
壁をぶち壊して進めば道が開けるのではと考えたのだ
八木「待ってろ。。二人とも。。必ず救い出してやるからなっっ。。。」
赤と黒に覆われた道を八木は思い出して進んでいた
<div name> 海都 遊離 day</div>
遊離と合流した海都
狂気
通路でお互いに対峙していた
退路はなく、出口のエレベーターは崩れ行く通路で塞がれていく
部屋へのドアももう開けれる事はなく
上に進む非常階段だけが唯一の希望ではあるが崩壊していく通路で非常口も塞がっていきつつあった
遊離「この範囲内の決定権を私だけに限定することを決定する!」
勝敗を分かつ言葉を遊離が言い放ち
遊離「通路の崩壊を止めろ!これは決定だ!」
次の言葉を放つが
通路の崩壊は止まらない
遊離「なんでだよ。。?」
狂気「そう来るだろうなぁぁぁってさ、分かるよね?普通ぅ。。
範囲内にいれば姉さんは決定権があるなら、範囲を縮めてしまえばいいよねぇ?」
狂気が崩壊を決定した後範囲を縮めて自分の周囲だけに縮小していた
海都「。。。フンっっ!!!」
狂気に尋常ならぬ速度で踏み込み渾身の一撃を繰り出す
狂気「ぬあっ。。」
腹に一撃を喰らい後退りする狂気
狂気「鬱陶しいっ。。。!
僕の周囲の物理打撃を反射することを決定する!」
追撃を加えに行った海都が自身の打撃によって後方に吹き飛ばされる
海都「くぁっっ。。。!」
狂気「打撃反射は今後永続的に続くものである、これは決定!」
海都「っっ。。!!」
投石による攻撃を試してみるも
投げつけた速度と同じ速度で反射して返ってくる
狂気「さぁ?どうするのかなぁぁ?
楽しいねぇ楽しいねぇぇぇ??」
遊離「。。もう、もう、やめて!」
弄ぼうとする狂気に
止めに入る遊離
遊離「元に戻って、一緒に帰ろう?
一緒にテレビ見て、ご飯作ってあげるから!もうやめて。。お姉ちゃんがなんでもするからっ。。。」
狂気「。。。
壊したのは、姉さんだろ?」
遊離は必死だった、親はどんどん崩れていき、弟を守ろうと必死に生きていた、
弟だけが楽であればいいと、危険な仕事に身を置いて
狂気「あんな仕事に身を置くから僕が狙われるんだろ?」
遊離「っっ。。。。」
返す言葉もない
どうすることもできずに運命に振り回され。
唯一の幸せだった弟にさえ拒否され
遊離の今までが、周囲の通路と同じように崩れていく
狂気「姉さんが僕に何をできるの?
今何ができるの?
死ねよ
それが姉さんが決定出来る一つのことじゃないの?」
突きつけられた言葉の刃
狂気「意志があるなら範囲に入れてあげるよ、さっさと自害すればいい、僕のためになんでもするんだろ?」
遊離「っ。。。うあ。。。あ。。。。」
海都「っ。。!いくな!遊離!」
崩れそうになる遊離を海都が手を伸ばす
遊離「あたしが。。。あたしが。。何もできなくて。。選べなくて。。。」
懺悔だろうか、涙を流し、遊離は泣き崩れる
親に捨てられて、弟だけを大切に、弟のために生きて
弟を失い
今までの過去も失って
もう遊離に残るものは何もなく
海都「遊離っ!!」
海都は遊離を抱きしめていた
海都「大丈夫だからっ、。私が守るから。。一緒にいてあげるからっ。。。」
遊離「う。。ん。。」
涙の止まらない遊離を抱きしめて
呟いた
遊離もまた呟き
狂気「二人で死ねよ!自害の権利をやるよ
この女の自害の決定権のみを許すぅ!これが決定だ」
遺産の範囲を広げていく
通路は崩壊していく
退路はもう埋まった
部屋の中の3人はもう穴に向かい進んだだろうか
範囲が徐々に広がっていきやがて海都と遊離まで広がる
海都「。。一緒に行こう、一人で行かなくていいから、はる、ごめんね」
遊離「うん。。
私とこの通路に存在する全てを一気に崩壊させろ!これが私のっっ言葉(決定)だっ!!!!」
狂気「キサマっ。。。!!とまれっ!!とまれぇぇぇぇ!!!やめろぉぉぉお!!」
海都「生きたいと思ったか!!それがお前の言葉で意思だ!その言葉は受理されない!!」
初めて出会ったときのように
遊離はただ泣きながら海都に抱かれて
通路全てを巻き込み
崩壊した
極めて普通な非常識 はる @halhaahal
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。極めて普通な非常識の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます