第9話「相対する敵2」

中央通路、ほかの二組と同時期に優雨はパソコン、薬と思われる液体、何かの組み立ての機械などがある空間にたどり着く。

顔を上げれば、一つ上の階にカプセルの中で横になっている朝陽が見える。

「朝陽!」そう心配と安心したような声を荒げ、階段に近づこうとした瞬間。

ゾクッと背筋が凍るような殺意が感情を焦りへと変貌させた。

「ッツ!!」

不意に殺意の先を噴出した汗顔で確認しに振り向く。

白衣姿、細身姿に眼鏡をかけた男性。

肌は人形のように白く眼にはクマ浮き出ておりその視線にはゾッとするほどの不気味さと明らかな敵意を感じた。

さらには、触手のようにうねり周りの物をガシャンガシャンと破壊していく。

この現象に驚きの表情はなくなっていき、怒りと共に静かに睨む。

「............お前か...朝陽をさらった奴は...。」


「...ああ、俺だ...それでどうする?」

「撃ち倒す...。」

ぶつかり合う殺意と敵意ぶつかり合い火花を散らす触手と弾丸の戦いが始まろうとした。



【左通路側真也、桜咲組】


飛び交うナイフ軍。

確実に真也の手足をめがけ飛ぶ。

刃を刀の刃に当てはじく真也。

真也が近づき刃をふるおうとすると男は逃げ、桜咲の根からも逃げる。

「シャーシャシャシャ!当たらないよ~ん。」

「クッソ!!逃げ足が速いやつめ!!」

腹が立つのかそう声上げ怒りを声に変え額がピクピクと動く。

「ほ~ら来てみろ~」

男が煽り、真也一歩近づいた瞬間。

落ちていたナイフがふわっと浮き、真也を円を作り囲み下から上へと切り刻もうと這い上がる。

「何にぃ!?」

刀で周りを振り張ろうとするが、無数の刃は絶え間なく真也の皮膚へ突き刺さろうとする。

体中が一瞬にして冷えた

油断、焦り、死

言葉が頭を巡りたった一つの言葉が思いついた。

「やばい...。」

その時

さらに地面からバキバキとタイルを破壊しながら大きな根がナイフをまとめ吹き飛ばす。


「桜咲か...すまない助かった。」

後ろを振り返ればぎりぎりだった間に合ったのか桜咲が地面に座り込みほっとしたように息を吐き、肩の力が抜け、ぎゅうっと杖を握る。

(よかった...間に合った...)


「シャーシャシャシャ、お仲間に助かったな~」

と笑いを上げる男の周りには尾を作るナイフの大蛇がいた。

「厄介な...!」真也は額に汗を落としながら見上げ自分の不甲斐なさと相手の強さの苛立ちで舌打ちをつく。

「シャーシャシャシャ、ほら行くぞ!」

指を二人に向けると大蛇はうねりながら全身凶器をぶつけよう突進する。

「っく!」

キィーン!!と刀で受け止めると身体ごと後ろへとじりりと靴からは地面との摩擦で音が鳴りながら押される。


「クッソ!止まれえええ!」刀に心層を集め刃を大きくし止めようとするがまだ止まらない。

さらに地面から根が現れ巨大な手を形成しながら大蛇にぶつける。

大蛇は地面に抑えられながらもうねり暴れ進み、それを形成するナイフは飛び散り真也の身体を浅く切りつける。

それを見ればにたぁあっとさらに口角が上がった男は高音質の笑いを密かに上げる。


地面をえぐり巨大な手と刀を進もうとした大蛇はやっと止まりその場で元の素材の姿に戻って行く。

息をあら上げ、腕、額、手から血を微量に流しながらも刀を男に上げ口を開く。

「どうだ...お前の蛇は退治してやったぞ。今度はおまえ...を...。」

と真也はすべてを言い切る前にその身体がぐらっとよろめき受け身も取れず倒れる。


「し、真也君!!」

喉がかき切れそうな声で彼の事を呼ぶ。

すぐさま近づきその動かない身体を揺さぶる。



同刻、右側。

橙夏は巨大な男の鎚とその武器と体でぶつかり合っていた。

ぶつかり合った物は大きな金属音と衝撃で風が吹く。


「おまえ、強い。」

「お前こそな。」

距離をとるため、下がり相手の技量を図る為目の前の男を見る。

どこが隙だ...どこが弱い...どこが見えずらい...

風の音すら聞こえず、呼吸音がうるさくなった頃。

不意に後ろ、来た道から声が聞こえた気がした。

悲しく、焦るような...

何か失ったような...。


「どこ見ている!!」

よそ見をした橙夏を見逃さないと言わんばかり鎚を振り上げ筋力と重力に任せ叩きつけた瞬間、何かとてつもない硬いものが阻んだ気がした。

「うん?」

衝撃で舞った、埃が晴れると、そこには先ほど変わらない橙夏と自分の身長よりもデカく膨れ上がったオレンジ色の不定形の心層が鎚を受け止める。

それは、泥のような、スライムのように形が見えた。

「な、なんだ。」

今までと全く別の形態、まったくの未知の状態。

鎚を引き抜き急いで下がる。

(なんだ?...あれは?武器か?)

男が注目する先の女性はまた別の道を見ていた。

誰かが...まさか!

何かにはっと気づいたようにしたかと思えば、彼女は持ち手を持ち大男に向け直す。

「すまない...よそ見をしていた。そしてもう一度謝る。すまない、これで貴様を打ち倒す。」

彼女の眼光は先ほどまでとは比べものにならないほど鋭く睨み、それは、獲物を見つけた肉食動物のようだった。


「ぬう。......おれも、負けられない。」

その眼光に少し恐怖はあれど体制を強く持ち構え走り出す。

ドスンドスンと地面を蹴る音が近くなる。

橙夏は二か所の持ち手てでバットの要領で構える。

「千の武具は一つ大先槍」彼女が発した言葉に反応し不定形の先端は形を変え先の鋭く大きい刃の槍となる。


「うおおおおおお!」

それを見てもなお止まらない男鎚を振り落としまたぶつけようとする。

「これを、くらえぇぇええ!!!」

大きく長い槍と大鎚のぶつかり合い。先ほどまでとは比べものにならない衝撃は辺りを少し揺らす。

「ぬおおおおおおおおお!」

「はぁああああああああ!」

二人のぶつかり合い、声に混ざり何かが当たり摩擦音が聞こえる。

ガリガリガリと削れる鎚、槍の刃はチェーンソーのように回り削り取る。

「そ、そんなバカな...。」

「心層は想像が力となる...刃を回し削り取ることも想像さえできれば、可能だ!」

鎚を削り取り男の体に触れようとした瞬間刃は消え棒だけが男を捉え地面へ叩きつける。

「......おれが負けた...。」地面に転がり口で息を整える男。

そこへ橙夏が歩きながらが近づく「私は一旦もどる、最後にお前の名前を聞いておこう。」

「...大山武蔵...」ポツリと喋った男に橙夏は「そうか、よい戦いだった武蔵。」おう言い残すとあっと言う間に走り去って行ってしまった。

「...あいつ強かった......お前は勝てるか?あいつの仲間に?正幸?

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外世町と心層探偵 さくさく @sakusaku09

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