番外編 補足資料

「異邦人」台本

「異邦人」台本


宇宙人・・・隅田に昔一目惚れして隅田に会いにきたステアグマ星人。隅田の住む街を調査後滅ぼすという任務を背負っている。

隅田・・・宇宙人に魅入られた普通の男子大学生

地球防衛隊の男・・・宇宙人を殺すために地球防衛組織から派遣されたが宇宙人にあっさり殺される



開演


隅田の部屋のベランダに宇宙人が立っている。


隅田「お前!何者だ?」


宇宙人「宇宙人だよ」


隅田「宇宙人!?宇宙人が何しに来たんだよこんな家に!?」


宇宙人「会いに来たよ」


隅田「あ、会いに来たって……僕はお前なんか知らないぞ!?」


宇宙人「私は知ってるよ」


隅田「知らないって!」


宇宙人「私会えて嬉しいよ」


隅田「僕は嬉しくない!!」


宇宙人「開けて」


隅田「うるさい!警察呼ぶぞ!」


宇宙人「警察、ダメ、ゼッタイ」


隅田「お前もダメ!!」


宇宙人「ねぇ、早く部屋に入れてよ、寒いよー」


隅田「……しっ!静かにしろよ!くそっ……わかった、わかった……話だけでも聞いてやる」


隅田窓を開ける。


宇宙人「へー狭いね」


宇宙人に窓から部屋に入り部屋を見渡す。


隅田「狭くて悪かったな」


宇宙人「早速話をしますね!」


隅田「あのさ、今日はもう遅いから話は明日にしてくれない?」


宇宙人「え?」


隅田「おやすみ」


宇宙人「ちょっと!待ってくださいよ!絶対これ夢か幻覚だと思ってますね!?私は現実ですから!」


宇宙人、隅田の体を揺らし訴えるも隅田はすぐに寝てしまう。


宇宙人「起きてくださいよ!……ああ、もうなんで!」


一度暗転後、宇宙人はベランダに移動し、夜空を見上げている。宇宙にいる上層部と話している。


宇宙人「はい。いきなり寝てしまって話も聞いてくれない状況で……我々の存在が信じられず現実逃避しようとしているみたいです」


宇宙人「でも明日にはちゃんとした計画の旨を話すつもりです。……大丈夫です。観察は絶対に継続させますから……」


暗転後、ベランダに宇宙人は立ったまま、隅田がベッドから降りてカーテンを開ける。

カーテンを開けた先には宇宙人が。


宇宙人「おはよう」


隅田「うわぁっ!びっくりさせるなよ!」


宇宙人「私みたいな宇宙人じゃダメかな?」


隅田「なんだよ……うちに住まわせろってことか?」


宇宙人「でもね!地球人のフリは得意だから!頑張るから!」


隅田「信じるやつの方が珍しいと思うよ……というか何で僕の名前知ってるんだ?僕はお前のことを知らないぞ」


宇宙人「あっ、そ、そうか、初対面だもんね!名前……は事前に調べてたんだよ!そうそう!……ほら、疑わないで!」


隅田「事前って……なんだそれ……まるで最初から僕に目星をつけて計画されてたみたいな……」


宇宙人「さすが隅田くん!察しの通り、あなたは観察対象になったのです!だから私はあなたのそばにいなくちゃいけなくなったのです!」


隅田「はあ!?どういうことだよ!?」


宇宙人「まぁ、地球人に拒否権はないけどね!」


隅田「おい!待てよ!拒否させろ!」


宇宙人「えっとねぇ……という訳だから、一緒に住むことになったから!よろしくね!」


宇宙人はずかずかと部屋に入る。慌てる隅田。


隅田「勝手に入るな!」


宇宙人「うわうわぁ……どうしよう……いきなり同居はヤバイよね……やっぱり同居はやめた方がいいかな……」


隅田「え?」


宇宙人「ふっ、布団はさすがに別にしよっか……」


宇宙人は布団を敷き始める。隅田は呆然とその様子を見ている。

ここで暗転。ナレーションで隅田の声のみ。


隅田「こうして半ば強制的に僕と宇宙人との生活が始まった」



暗転終わり。舞台はスーパーへと変わる。隅田はカートを押して宇宙人はその横をついてくる。


隅田「何で買い物までついてくるんだ?」


宇宙人「これも地球の生活を観察するためだから!あっこれおいしそうだね!」


宇宙人は勝手に商品をカートに入れていく。


隅田「勝手に入れるな!」



暗転後、舞台は道端に変わる。宇宙人と隅田が買い物袋を片手に並んで歩いている。


宇宙人「今晩はカレーか〜初めて知ったなそんな料理。楽しみ!」


隅田「なぁ、お前いつまでうちにいるつもりなんだ?明日あたりに帰ったりしないのか?」


宇宙人「それは無理ですよ。少なくともあと3日くらいは私はあなたを観察しなくては」


隅田「うっわマジかよ」


宇宙人「私は本当はもっとここに居たいんだけどね……」


隅田「なんだって?」


隅田は不機嫌そうに宇宙人を睨む。


宇宙人「いやいや!嘘!嘘だから!」


すると道の前方から帽子を被り作業着を着た男が歩いてくる。すると宇宙人は立ち止まり、隅田を静止させる。


宇宙人「すみません、隅田くん先に行ってて」


隅田「え?なんで」


宇宙人「いいから早く!」


鋭い声で隅田に言う宇宙人。仕方なく隅田は先に歩いていく。


宇宙人と作業着の男の二人は対峙し、しばらくの沈黙。


宇宙人「あなた、私を知っているんですね」


男「……気づいたか……消えろ!侵略者!」


男は拳銃を取り出すも、すぐに宇宙人が触角からビームを出して男に攻撃する。効果音が入る。

男は倒れ、宇宙人はその場で上層部と交信を行う。


宇宙人「早速気づかれたみたいです。地球人の組織がもう狙ってきています。……はい、対象は排除しました。至急室内に入ります」


宇宙人はその場を走り去る。

しかし、その後、反対側から隅田が歩いてくる。実は回り道をして、こっそり宇宙人と男の様子を見ていたのだった。


隅田「なんか変だなと思って回り道して見てたら……あいつ本当に宇宙人だったのか……?」


隅田は倒れた男の様子をしゃがんで一度確認する。


隅田「し……死んでる……」


隅田は部屋に向かって急いで走り去る。


暗転後、舞台は隅田の部屋へ。部屋に宇宙人が入るも隅田が居ないため不審に思い、周りを見渡す。手に持っていた袋も床に置く。


宇宙人「あれ?隅田くん?先に帰ってないのかな?」


隅田が部屋に入ってくる。


隅田「回り道してお前らの様子を後ろから見てたんだ」


宇宙人「隅田くん!?」


隅田は手に持っていた袋を床に置きながら言う。


隅田「全部見たぞ、お前があの男の人を殺したのも」


宇宙人「そんな……見てたんだ……」


隅田「お前の正体は何者だ!本当の目的は何だ!」


宇宙人は先程までと打って変わって、淡々と話す。


宇宙人「あなたを観察するために来ました。これは事実です。私はステアグマ星から人間の生態について調査のため地球に派遣されたエージェントです。」


隅田「ど、どうしたんだ急に……」


宇宙人「最初に言ったように私は宇宙人です。そして、あなた達地球人の敵になるでしょう」


隅田「なんだって!?て、敵だぁ!?」


宇宙人「この街はステアグマ星の攻撃によって直に侵略されるでしょう……人間もみんな殺されるでしょう……そして、あなたも……」


隅田「ちょっ……ちょっと!飛躍しすぎじゃないか!?侵略とか殺すとか……何でそんなことされなくちゃいけないんだ!」


宇宙人「それは上層部が判断することです。私には決められることではありません……私だってこんなことしたくない……」


隅田「だったら!どうにかしてくれよ!上と話しつけて説得するなりさ!」


隅田、宇宙人に突っかかる。


宇宙人「私にはそれ程の権力を持ち合わせていません……ただの派遣されたエージェントです。反対などすれば殺されるだけです」


隅田「じゃあお前を今すぐさっき殺された男の人の仲間に突き出してやる。きっとあの人達なら宇宙人達と戦ってくれるに違いない」


隅田はドアに歩いていく。ドアノブを握ったところで宇宙人に呼び止められる。


宇宙人「行っても無駄ですよ。彼らの組織……地球防衛隊は私の仲間が早速壊滅しに向かいました。直に全滅します」


隅田「さっきの……お前がやったみたいにか……」


宇宙人「戦力差が違いすぎます。きっと太刀打ちできないでしょう……悲しいですがあなた達地球人は滅びるのを待つしかありません……」


隅田はドアノブから手を離し振り返る。


隅田「くそっ!ふざけんなよ!なんでただビクビク地球が滅びるのを待たなきゃいけないんだよ……」

隅田は頭を抱える。


宇宙人「で……でも今すぐ滅びる訳じゃないんですよ!だから、ね?今は忘れて楽しく過ごそうよ!あと3日くらいは何にも起きないだろうから、せめて今は楽しく、ね?……あっ!そうだ!今日はカレーというものを作るんだよね!早速何をすれば良いのかな?」


宇宙人は台所のシンクに買い物袋を持って行き隅田の方を見る。


隅田は何も言わず仏頂面で包丁を台所の棚から取り出す。


隅田「ふざけんな!この侵略者め!」


と言い、勢いよく宇宙人の胸に突き刺そうとする。しかし、宇宙人はそれをかわす。


宇宙人「ご、ごめんなさい……無神経過ぎたよね……」


隅田はさらに包丁を宇宙人に何度も振りかざす。


隅田「なんで!お前らなんかに勝手に殺されなきゃならないんだ!……僕たちが一体何を……!」


包丁は一つも当たらない。全て宇宙人にかわされる。隅田は包丁を振りかざすを止め、包丁を持ったまま俯く。


隅田「クソ……なんで……」


宇宙人「もしかしたら上層部の考えも変わるかもしれませんし……今は楽しく過ごしませんか?」


隅田はだまって台所のシンクに向き宇宙人に言う。


隅田「玉ねぎを袋から出してくれ」


宇宙人「え……えっと、あの丸くて茶色いのだよね?」


隅田「宇宙人、玉ねぎを僕に渡したらお前は人参を取り出してピーラーで皮を剥くんだ」


宇宙人「はい?」


隅田「早くしろ!時間がないんだろ!」


宇宙人「はい!わかりました!」


暗転後、隅田と宇宙人はテーブル上に置かれたカレー前の床に座りこんでいる。


隅田「初めての割にはうまくできたな宇宙人」


宇宙人「そんな〜隅田くんのおかげだよ。それに見た目大丈夫なの?なんか茶色いしドロドロしてるし」


隅田「食べてみればわかる。いただきます」


隅田手を合わせる。宇宙人も真似て手を合わせる。


宇宙人「いただきます」


隅田「お前いただきます知ってるのか」


宇宙人「おはようもいただきますも知ってるよ、前見たことあったから」


隅田「ふーん、あっうまい」


隅田と宇宙人カレーを食べ始める。


宇宙人「これがカレーの味かぁ、変な味」


隅田「変ってなんだよおいしいだろ」


宇宙人「だって初めて食べるし……でもこれがおいしいってことなのかな」


暗転。夜になり、隅田はベッドの上で寝ている。

宇宙人はその横に肘をつき、隅田の寝顔を見つめている。


宇宙人「隅田くん昔、カレー好きって言ってたからどんなものかと思ったら、まさかあんなドロドロしたものとは思わなかったなぁ。……昔から本当に変わってないね……私が最初に地球に視察に来た時からずっと……ずっとあなたのことばかり考えていた……宇宙に戻ってからも……私あなたのことが……」


すると言い終わらないうちに宇宙人は窓の方を振り向き、ベランダに出て宇宙人の上層部からの信号を受け取る。


宇宙人「計画は予定通り実行されるんですね……」


宇宙人「3日後ですか……分かっています」


暗転後、部屋の真ん中に座りトランプをする隅田と宇宙人。


宇宙人「また私の勝ち!いやートランプって面白いね!」


隅田「なぁ、やっぱり地球が滅びるの嘘じゃないよな?」


宇宙人「うん、嘘だよ。滅びるはずないじゃん!」


隅田「だから!そうやって安心させるためにあからさまな嘘ついてもムカつくだけなんだよ!」


宇宙人「だって……本当のこと言っても悲しくなるから……」


隅田「本当……なんだろ……」


宇宙人「うん」


隅田「僕、何にもない大学生活送ってきたんだ……彼女も友達もできずに、このままつまらない一生終えるくらいなら……お前に代わりにやって欲しい事があるんだ」


宇宙人「やって欲しいこと……?」


隅田「明日、恋人のフリして僕と遊園地に行ってくれないか?」


宇宙人「恋人……!?……い、いいよ!……でも遊園地って何かな?」


暗転、二人は遊園地の広場にいる。


宇宙人「あー楽しかった!遊園地ってショボい乗り物を面白おかしく再利用しているんだね!」


隅田「ショボいって言うなよ」


宇宙人「隅田くんは今日一日楽しかった?」


隅田「……そんなこと聞いてどうするんだよ……僕、もうすぐお前たちに殺されるんだぞ?」


宇宙人「私は……楽しさを隅田くんと共有できたら嬉しいから……だから聞くの」


隅田「……楽しかったよ!……悔しいくらいに……!もっともっと死ぬのが嫌になったよ!クソ!」


宇宙人「隅田くん……明日は電車に乗ってもっと遠くに行かない?」


隅田「遠くって?」


宇宙人「ずっと遠く」


暗転。部屋に隅田が寝ていて、ベランダに出て宇宙人はまた上層部と交信している。


宇宙人「明日の晩ですか……午後7時……わかりました。決定事項ですね……」


暗転、宇宙人と隅田は駅のホームに立っている。


隅田「本当にどこに行くつもりなんだ?」


すると空が複数の光に包まれて明るくなる。


隅田「何だ!?今夜だってのに、明るくなってるぞ!何が空に浮かんでいるんだ!?」


宇宙人「我々ステアグマ星の制圧軍が今から攻撃を始めます」


隅田「ついに来たのか……滅びの日が……」


すると宇宙人が隅田の手を取り、電車に引き入れる。


宇宙人「今から電車に乗ってこの街を脱出するのです!」


隅田「脱出!?」


二人は電車の座席に並んで座る。電車が走り出すと外から光と爆発音が響き出す。


宇宙人「街が滅んでいくね」


隅田「ああ……本当だったんだな」


宇宙人「あなたは悲しい?」


隅田「……」


宇宙人「他の人が死んでいくのは悲しい?」


隅田「わからない……何が起きているんだ」


宇宙人「殺戮。宇宙人による一方的な」


隅田「本当にやったのか……」


宇宙人「ごめん」


隅田「どうして君が謝るんだ」


宇宙人「あなたの大切なものを奪ってしまった」


黙る隅田。


宇宙人「…….」


隅田「実はさ、僕は最低な人間だから、自分が助かれば街が破壊されようと悲しいともなんとも思わなかったんだ。それに気づいてしまったんだ。むしろ今の状況を面白いとも感じてる」


宇宙人「面白いかな……」


隅田「面白いよ……だって僕は殺されないんだもの」


宇宙人「そっか……なら良かった。じゃあこれからどこに行く?」


隅田「どこって宇宙に連れてってくれよ、君は宇宙人だろ?どこまででも行けるじゃないか」


宇宙人「うん、どこまででも行こう。連れてってあげる、宇宙の果てまで」


隅田「ありがとう」


隅田「でもずっと気になっていたことがあるんだ。何で君は僕の前に現れたんだ?どうして僕だけを助けてくれたんだ?」


宇宙人「それはね……あなたのことが好きだから」


爆発音が鳴り、幕が閉じられる。

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星降る夜の天引き らなっそ @konripito669

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