背負う

ちゅけ

第1話

その子と話をすると、必ず被せるように歌声が聴こえるので困っていた。


歌声は女性のもので、歌詞まではわからないがメロディはとてもなめらかで、ふと気を抜けばその子との会話より歌を聴いてしまいそうになる。


視覚ではなにもわからなかった。みえない、というのは私にしては珍しいので、戸惑うばかりだった。


数年後。


その子は元気な赤ちゃんを出産した。私はおむつケーキと彼女の服をプレゼントに、お見舞いに行った。


赤ちゃんはとても愛らしかった。ふにふにのほっぺ。小さな小さな指。


そして。


ふぇっ、ふぇっ、と赤ちゃんがむずがるたびに、やはりあの歌声が聴こえてきた。


そのかわり、その子が話しても、もう歌声が聴こえてくることはなかった。


もしチャンネルが合ったら。声の主をみれたら。一体どんな情景が広がったのか。


天使を背負う親子をみれたかもしれない。

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背負う ちゅけ @chuke

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