第5話 消された記憶

 私達は3階から1階まで走って逃げ、教室に隠れた。私は凛音が目の前で殺されたことに大きなショックを受けていた。

「おい、大丈夫か? 」

 そんな私に気づいたのか、貴大が優しく声をかけてくれた。

「うん、大丈夫」

 大丈夫ではないけどそう言わないと私は崩れてしまいそうだった。と、その時、突然校内放送が流れた。

『凛音さんがたった今脱落しました。残り6人。頑張って下さいネ』

 そういい終わったあと校内放送は終わった。

「え、なんであいつ知ってるんだ?何処かで見てたのか? 」

 でも、例え貴大の言った通りだとしても一体何処から見ているのだろうか。まさか、この近くに────。そう思って私はとっさに辺りを確認したが誰かがいる気配はなかった。

「どうする? 取り敢えずみんなを探す? 」

 そう尋ねると貴大は少し悩んで

「探さなくていいだろ。あいつらいたら色々と厄介だし。取り敢えず俺達だけで手掛かり探すか」

 確かにあの人達といるとまたこれからも色々と起きそうだな……。私達はこの逃げ込んだクラスを調べることにした。でもしばらくしても何も出てこなかったからこのクラスもないな……。そう思っていた時、机の中にぐちゃぐちゃに丸められた紙が入っているのを見つけた。これってもしかして────。

「貴大! 何かあったよ! 」

「ほんとか!? 」

 貴大がこちらに来てそのぐちゃぐちゃに丸められている紙を開いた。

「きゃっ────!! 」

 私はその紙を見て思わず叫んだ。その紙には黒いペンでびっしりと文字が書いてあった。しかも内容は《呪ってやる》《殺してやる》《復讐してやる》という言葉ばかりだった。

「何なんだ、これは……」

 貴大も顔から血の気が引いているようだった。

「これだけ、かな? 」

「そうみたいだな。俺も全体的に探したけど何も無かったしな」

 ということはもしかしたらこの紙が手掛かりなのかもしれないと私達は考えた。

「ねぇ貴大、本当にこれが手掛かりだとしてもどうしてこの教室なのかな? 普通に考えたら私達のクラスにありそうなのに」

 今私達がいるのは1階の3年5組の教室で私達はまだ1年生。何も共通点が無い。なら何故ここにあったのか……。

「なぁ、今気づいたんだけどこの3年5組って俺達の中3の時のクラスじゃないか? 」

 そう言われて気づいた。そういえば私達が中3の時3年5組だった。しかもこの学校に残っている人全員同じクラスだった。そんなことってあるのだろうか。

「じゃあ中3の時にここの席だった人がこれを書いたの? 」

「そうじゃないか? 」

 私の質問に貴大は悩みながら答えた。ということは、このゲームを始めたのもあの放送の声の人もここに座っていた人だということになる。

「なぁ、ここの席に座っていた人って誰だっけ?全く思い出せないんだけど」

 ここの席は窓側の一番端のちょうど真ん中の席。誰も座っていなかったということは無いだろう。貴大の言葉で私はここに誰が座っていたか思い出そうとした。でも全く思い出せなかった。他の席に誰が座っていたのかは覚えているのに何故かここの席だけ思い出せないのだ。

「私も、思い出せない……」

 一体これはどういう事なのか……。

「もしかして貴大ってここの席以外で誰が座っていたのか覚えてる? 」

「うん、覚えてるけどこの席だけ何故か思い出せないんだよな……」

 貴大も私と同じ。ということは────。

「ねぇ、これってもしかしてあの黒幕が私達の記憶の中から自分に関する記憶を消したんじゃないの? 」

 これしか考えられなかった。そう、黒幕は私達に謎を解かせず、殺されるように仕向けているのかもしれない。

「確かに、そう考えたら筋が通るな。まぁ、取り敢えずここにずっといても何も出来ないし移動しようぜ」

 その貴大の言葉に私達はすぐ隣の図書室に入った。

「なぁ、でもこいつは一体なんでこんなこと書いたんだ? 」

「これは私の考えなんだけど、もしかしたらこの人いじめれたんじゃないのかな。それで紙にこんなことを書いて自殺した、とか……」

「あぁ、でもその可能性もあるな」

 貴大も私の考えに納得してくれたようで大きく頷いた。でももしそうだとしても、これはやりすぎなんじゃないか。死亡者も出ているのに。

「じゃあもしそうならもしかしたら新聞の記事に載ってるかもな。探してみるか」

「そうだね。えっと、去年のやつだよね」

 そして私達は去年の新聞を集め、それらしい記事が載っていないか調べることになった。しかし全く自殺した中学生に関する記事は載っていなかった。もしかしたら私の考えは間違っていたのかもしれないな……。そう思った時、ふとある記事に目が止まった。それは旅行中の3人家族が乗った車とトラックが事故を起こしたという記事だった。別に自殺のことと全く関係はないが、何故かこの記事を見ると悲しくなり、胸が締め付けられるような感じがした────。





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revenge game~真実を明らかにするまで終わらない~ @ayupaku

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