第22話 クラスTシャツ
~釣畑美羽 side~
教室に入ると、いつもの同じ空気。
金曜日、あんなことを言われた時と同じ空気
だとは思えないくらいの明るさ。
あぁ、あんまり大塚くんの顔見たくないな…。
…思い出しちゃうから。
そう思っていても、大塚くんはいつもの様に
すでに席に座っている。
いつもは大塚くんの後ろの席だということを
嬉しく思っているが、今だけは違う。
自分の席に向かうため、大塚くんの横を通る。
私は大塚くんと目が合わないように
下を向いて歩いた。
大塚くんは私の方を見ているように感じた。
「あの…、釣畑?」
あぁ、話しかけられてしまった。
どうしよう。
文化祭の準備の事もあるのに、話さないって
いうのは無理だよね…。
「はい…。どうしたの?」
私の顔はきっと、引きつっているだろう。
こういう時に、上手に笑えてたらいいんだけどな。
「どうした?調子でも悪いのか?
顔が真っ青だけど…」
大塚くんは心配してくれる。優しいなぁ…。
「ううん、大丈夫だよ。
…それより、どうしたの?」
「あぁ、文化祭のクラスTシャツの事
なんだけど…。
デザインは大体決まった?」
「うん…、大体のは決まったけど、
何種類かあって、それを組み合わせて
作ろうと思ってるんだ。
その組み合わせはクラスの投票でやった方が
いいかなぁって。」
私はそう大塚くんに説明しながら
何種類かの原案を見せる。
すると、大塚くんはキラキラした目で
私を見る。
「すごっ!
…これ全部、釣畑がやったのか!?」
「う、うん…。
こんな感じで良かったかな…?」
「めっちゃいい感じ!
すげーなぁ…。他のクラスとは差ができるな!」
ニコニコと笑顔で言う大塚くん。
そんなにも喜んでくれると、思ってなかった。
「さすが、釣畑だな!
ありがとうございます!
今日の6限目、文化祭についてやるから
その時に投票しよう。」
「うん。」
嬉しいけど、少し照れる。
…このままの普通のクラスメイトでいいかな。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
~大塚蒼太 side~
やっと月曜日の朝になった。
今日はちゃんと本当のこと言えるかな。
少しソワソワしながら朝の準備をする。
家を出ると、雲ひとつ無い綺麗な空が
広がっていた。
「…今日も暑くなりそうだな。」
独り言を言って、自転車にまたがる。
いつもの平日が始まった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学校に着く。
いつもの様なメンバーが教室にいた。
釣畑はまだだよな。
釣畑はいつも、俺が来てから
10分後くらいに来る。
……把握してるの気持ち悪いなぁ…
と、自分に自分でつっこむ。
そうこうしているうちに、
釣畑が来る時間なった。
…あ、来た。
なんか、下向いてるな…。
まさか俺と目を合わせないようにしてる?
…そんなこと言っててもしょうがない。
まずは話しかけなきゃ。
「あの…、釣畑?」
「はい…。どうしたの?」
あれ?
「はい」って…。
いつもとはやっぱり少し様子が違う。
調子が悪いのか?と聞くと彼女は
大丈夫、と言った。
心配だけど、あまり首を突っ込まない方が
いいのかな…。
そう思い、クラスTシャツの件について聞く。
原案をいくつか考えてきた、とのことで
見せてもらう。
どれもすごく考えられていて、良いものばかり。
俺には出来ねぇなぁ…。
素直に彼女を褒めると、彼女は少し照れながら
ありがとうと言った。
流石だなぁ…。
朝は結局、言えずに終わった。
いつかまた君に会いたくなるだろう。 清水 優杏 @kiiyafu
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