第21話 注意?
~大塚蒼太 side~
部活が終わり、疲れ果てた体にムチを打ち
自転車にまたがる。
となりにいる秀次も汗だくだ。
しかし『帰れる!』という嬉しさで
そんなことはどうでもいいという感じだった。
「よっしゃぁぁあ!終わったぁ!!」
「叫びすぎだろ…。元気余ってんじゃねぇか」
「うるせぇ。大塚はもっと元気でいた方が
いいんじゃね?
元気な男はモテるぜぇ?」
「なんの根拠があって
そんなこと言ってるんだよ。」
馬鹿みたいな話をしながら、
正門を出て、坂道をくだる。
火照った体に、風が当たる。
隣には「明日も部活かぁ…」と嘆く秀次。
……早く月曜日にならないかな。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
秀次とわかれ、自宅に向かう。
もうすぐ着く…と思って自宅の前を見ると
百花がいた。
…なんであいつがいるんだ。
今1番会いたくないやつ。
少し待っても、動かないということは
俺の事を待ってるのか。
このまま待っても時間が無駄になるだけだ。
俺は心を決めて、自宅に向かった。
「…あ!蒼太!おっかえりー!
今日も暑いね~、お疲れ様!」
馬鹿なのか、わざとなのか、
引きつった俺の顔にも気づかずに、
笑顔でそう言う。
「なんだよ、待ち伏せして。
なんか用があるのか?」
俺はいつもより少し低い声で百花に聞いた。
百花は、ヘラッとした笑顔でこう言った。
「もちろん。こうして待ってたのは蒼太に
言うことがあったから。
昨日、放課後に釣畑さんと会ったの。」
「…え、釣畑と?」
「うん。部活あったみたいで、学校に
残ってたみたい。
それでね、いい機会だと思って、
釣畑さんに注意しといた。」
「なんの注意だよ。」
「……それは言わないけど。
あんまり釣畑さんに話しかけない方がいいよ。」
「は?なんでだよ。」
「なんでも!」
悪さをする子供のように、にっこり笑う百花。
釣畑に何を言ったのか分からないが、
良いことでは無いんだろう。
「それじゃ、もう行くね。」
「それだけかよ。」
「ふふっ、また月曜日ね。」
そう言われたが、俺は何も言わなかった。
昔は仲がよかったが、この前の手紙の件で
俺は百花と距離をとっている。
きっと、百花は釣畑の事を
よく思ってないんだろう。
俺はシャワーを浴びて、汗を洗い流したが
さっきの百花の言った言葉は忘れなかった。
"注意しといた"
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
~釣畑美羽 side~
月曜日になってしまった。
いつもの平日が来てしまう。
今日もバスに乗り、電車に乗る。
あぁ、舞花ちゃんになんて言おう。
そんなことを考えながら、電車に揺られる。
「美羽ちゃん…?」
前を見ると舞花ちゃんがいた。
私は笑顔を作った。
ちゃんと笑えてるかな。
「舞花ちゃん!おはよー。
金曜日は急にいなくなってごめんね?
クッキー上手に作れた?」
「おはよう…。クッキーは上手に作れたよ。
じゃなくて!美羽ちゃん!
金曜日はどうしたの?
涙目で『用事あるから帰る』って
言われても信用出来ないよ…。
何があったの?」
あぁ、やっぱり隠せてなかったんだ。
心配そうに私を見る舞花ちゃん。
「…ごめんね。今は…何も言えない…。」
「…そっか。いつでも言ってね。」
そう言って、隣に座る舞花ちゃん。
こんな顔をさせているのに言えない私は
馬鹿だな。
学校に着くまで私は何も言えなかった。
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