第6話
「はぁ、はぁ…」
音楽室の真ん前で息急き切ってるのはマツただ一人である。
勝負ふっかけてきた割には弱いな。
まあ、相手が元陸上部とサッカー部だからな。
「よしマツデコを出せ。」
「三井くん容赦ないね。
もう少し休ませたげようよ。」
そういって笑う香川くんのデコピンの構え方は俺の知るデコピンと構え方が違うのだが。
多分あれ痛いやつや。
にこやかな香川の背後からチラリと覗く黒いものを感じなんとなくそう思った。
「香川のはライフで受けていいか?」
マツも俺の感じたものと同じものを感じたのか、少し怯えたような声で言う。
「問答無用」
俺はマツの額にデコピンをかます。
ペチンと平たい音がしてマツは顔をしかめた。
「許せマツ」
続いて香川がマツにデコピンをお見舞いした。
ゴッという鈍い音と続いてマツの短い悲鳴が廊下中に響き渡った。
マツが額を抑えてた手を退けると真っ赤に充血していた。
「こりゃ順番逆の方が効いたかもな。」
ちょっと後悔。
「恐ろしいこと言わないでくれよ。
くそ、いてー。
誰だこんな勝負ふっかけたの。」
気がつくと周りに生徒が少し集まっていた。
邪魔になってるなこれは。
二人にも俺の気づきを肘伝いで共有し、申し訳なさを演出しながら音楽室のドア取っ手を握り扉を…あれ…開かない。
「それ下に倒すんじゃなく上に倒すんだよ。」
声をかけてきた女子生徒は一つくくりで鼻筋の通った綺麗だがどこかあどけない可愛らしい顔立ちをしていた。
小柄だったが、その体躯に合わない大きな木製の物体を抱えていた。
まるで彼女が運ばれているかのようだった。
それをくるっと回し地面に慎重に置くとドアを開けこちらを振り返り
「ようこそ吹奏楽部へ」
といってひまわりが咲いたような純真無垢を体現したかのようなやさしい笑みを俺に向けた。
「…どうも。」
しばらく見とれていた俺だったが、我に帰り二人を連れてそそくさと音楽室に入っていった。
俺はモテたいがために吹奏楽部に入った。なんか文句あるか? さかな @sakanann1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。俺はモテたいがために吹奏楽部に入った。なんか文句あるか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます