第4話 作家の秋
カチャカチャダンッ!
早朝、俺の家に居候しているスライムが楽しそうに、パソコンの前を一心不乱でタイピングしている。
覗こうとそっと後ろから見ようとするが、まあいいやと思った俺は床の上でゴロゴロすることにした。
「できたスラ!!」
いつの間にか寝ていた俺はその声にびっくりし、飛び起きるように起き上がる。
「あーびっくりした!いきなり声をあげるなよ。」
「ぷぷぷ。これを見るスラ」
スライムがパソコンに向かって指をさす。釣られて俺もその方向に向く。
パソコンにはネット小説画面が映し出されており、『投稿済み』の文字が載っていた。
「お前小説書けるのか?」
「そうスラ!読書の秋ならぬ作家の秋スラ!スライムの力を見せつけてやるスラ!ぷぷぷ」
スライムは更に上機嫌になり、ちょっと出掛けてくるスラと言って出てった。
~30分後~
「ただいまスラ!早速、読者の反応をみてみるスラ!」
カチッ
先程の小説画面を更新する。 読み込みが少し遅い。 期待が高まる。
ちなみに、小説サイトにはpvといって何人が自分の小説を読んだのかがわかるありがたい機能がついている。 もし、10pvであれば10人読んだという事になる。
更新が終わった画面を見るとそこには.....
0 pv
「ぷ?」
スライムはわけがわからないという感じで、カチッともう一回更新ボタンを押す
0 pv
「........」
「どうだったんだよ?あははは、0か!!まっドンマイ!」
珍しく落ち込んでいるヤツに、俺は元気になってもらおうと背中をバシッと叩いた。
「最初はそんなもんだよ。俺も」
「ち、違うスラ!小説があまりにも素晴らしすぎて、みんな悶えてるだけスラ!今に『通知』の嵐スラ!」
必死になる様を見た俺は両手を前に出しながら、「まあまあ落ち着け」と言ってなだめる。
それからもスライムは40分か30分置きに更新するが一向に増えないpv。 段々と不安になってきたのか、いつの間にか数分いや1分置きに更新ボタンを押している。
そして...........
「スラアアアア!!なんで、0pvスラアアア!?この小説の偉大さがなぜわからないスラアアアアア!?」
スライムは頭を抱え(顔と頭の境目がわからねぇ)ながら畳の上をのたうちまわった。
「まあまあ。最初はこんなもんだって。」
「このストーリーの面白さがわからないなんて、人間はおかしいスラ!」
「ところでどんな話を書いたんだよ?」
「.....こんな感じのスラ....」
「どれどれ....」
俺はスライムの小説を読んでみた。 内容は伏せとくが(宣伝になるといけないし!)、良くある系統の話の中に意味不明なポエムが挟まれている。 これがどう人気になると思ったのかわからないが、努力は間違いなくしているので、これ以上突っ込まないでおく。
「スラアアアァァァアアア!!」
スライムは嘆きながら買ってきたコンビニ菓子を全部食ってはふて寝した。
俺は寝てしまったスライムを横目に「仕方ねぇなぁ」と呟くとスマホをいじりだす。
奴が寝てからしばらくすると、外は暗くなり出した。腹も減り出したので、夕飯を作ることにした。
「今日はエビチリだ!」
一人暮らしを長くしてるので、手際よくてきぱきと作っていく。
「おい、ご飯の時間だぞ」
「もう、そんな時間スラ?」
「そうだよ。ほら、水」
スライムの目は真っ赤に腫れ上がっていた。 相当、喉が渇いていたのかあっという間に水を飲み干した。
それからはいつも通り奴を風呂に入れたり、テレビを観たり過ごした。
「そろそろ寝るぞ」
「まだ観るスラ」
「明日仕事なんだよ」
「辞めればいいスラ」
「そんなに簡単に辞めれるか!!」
「うるさいスラね」
奴はぶつぶつ言いながらも寝支度をし、もう一回アクセス数を見ることにしたらしくまたパソコンの前に座る。
「ぷぷっ!!!」
奴はペシペシと俺の頬を叩く
「やっと読んでくれる人がいたスラ!」
「おう、よかったな。で、何人だ?」
「1人!!しかも、コメント&レビュー付きスラ!!!!」
眩しいくらいの笑顔を放ちながら、奴は左右上下に跳ねながら躍りだす。
「人間も捨てたもんではないスラ!続きを書くスラ!!」
カチャカチャダンッ!
奴は朝と同じように勢いよく、また小説を書き始めた。俺はその音をBGMにしながら電気を消し、寝る事にした。
誰がスライムの小説を読んだかって?
さあ?どこかのお人好しだろ。
俺の家にスライムがやってきやがった!! ぷるるん @lady-tsubaki
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