第14話

「全部……」


「あの日、ここでなにがあったのか。どうして僕が死んでしまったのか。全てね」


あの日、千石が俺に声をかけ、俺は小久保を呼び出して三人でキャンプ場に来ていた。


そして千石が小久保を断崖まで連れて行き、崖っぷちへと押しやった。


そして二人で嫌がる小久保を小突いていたのだが、たまたま二人同時に小久保を強めに押してしまったために、バランスを崩した小久保は崖下へと転落してしまったのだ。


千石が警察に連絡した。


そして警察が来る前に、千石が俺に言った。


「口ぐらを合わせろ。やつは勝手に落ちたんだ」


二人の証言を、警察は少しも疑わなかった。


その結果俺たちにはなんのおとがめもなく、そのまま平穏な大学生活を続けてきた。


しかし今、小久保はその全てを思い出したのだ。


「おっ、俺がわるかった。だから、もう、やめてくれ!」


俺は崖っぷちに立った。


そしてそのまま崖下に身を投げ出した。


崖下の岩が顔前に迫ったとき、俺は小久保の笑い声を聞いた。



        終

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

断崖 ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ