第13話

確認しなくてもわかる。


それが一体なんの音であるかは。


膝の力が抜け、頭がくらくらする俺の前に、小久保がいきなり姿を現した。


かと思うとまた一瞬で消えた。


すると俺の体が勝手に歩き出した。


千石と同じく断崖に向かって。


「えっ?」


なんとか踏ん張ろうとした。


しかし無駄だった。


止めようとする力が全く無いわけではないが、断崖へ進もうとする力のほうが強い。


必死で足に力をこめても、ごく短い時間しか止められない。


気付けば俺は、千石と同じような不恰好な歩きで崖へとむかっていた。


不意に小久保の声が聞こえてきた。


耳のすぐ近く、いやそうではなく頭の中に直接声をねじ入れられているような。


そんな不快な感覚だった。


「全部思い出したんだよ」

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