好きな食べ物は?

私は恋をしている。

横断歩道を渡っている

あの彼に。

彼は俗に言うイケメン。

高身長、スポーツ万能。

これは私以外に彼につり合う人はいない

と見かける度に私は思う。


彼は私のことを苗字で呼ぶ。

須藤さん、須藤さんと。

名前で梨花って呼んで?

って何度も言ったのに彼は断る。

なんで断るの?

私が呼び捨てで良いよって

言ってあげたのに。


席替えをして彼の隣になったことがある。

わざと忘れ物をしてくっついたりしたが

無言のまま授業が終了すること

も多々あった。

他にも、第2ボタンまではずしたり

スカートの丈を短くしたりしたにも

関わらずまったく彼は振り向かない。


私は勇気を振り絞り

彼に告白をすることにした。

私から告白するのだから

成功するに違いない。

根拠のない自信を

携えて彼を呼び出した。


「ねぇ、好きなんだけど

付き合ってくれない?」


「ごめん、無理」


即答であった。

あまりの速さに聞き取れなかっただけ

ではないかと思いもう一度聞いた。


「ごめん、須藤さんとは付き合えない」


どうして、私と付き合うことが出来ないの?

おかしいでしょ、

女子から告白しているのに

そんな簡単に振るなんてありえない。


「なんで、せめて理由だけでも教えてよ」


怒りと焦りが混じった声で尋ねた。


「俺さ、ゲイだから。

女の子に興味ないんだよね」


「ゲ、ゲイ?」


予想していなかった答えに戸惑った。

ゲイということは私と

付き合えないということでしょ。

あまりにもおかしい。

彼は嘘をついている。


「ゲイってどうせ嘘でしょ」


「嘘じゃないけど?」


「ゲイって病気だからね。」


「は?お前それ本気で言ってんの?」


「ゲイってこと皆に言いふらすから」


そう言って彼のせいで悪くなった空気から

走って逃げだした。

家に帰って泣きじゃくった。

なぜ、こんな私が嫌な思いをしなければ

ならないのか不思議でたまらなかった。

その日の夜のご飯は

大好きなオムライスだったが

全くスプーンを口に運べなかった。


ベッドに寝転がり

今までスマホに溜まった彼の写真を見る。

私はやはり彼がゲイであることを

信じることは出来なかった。



ーーーーーーーーーーーーーー翌朝


私は教室に着くなり

友達の輪に駆け寄った。


「ねぇ、知ってる?

三村くんってゲイなんだって」


「え、今更?」

「梨花知らなかったの?」

「それ多分みんな知ってるよ?」


「え、」

皆、彼がゲイであること知っていた。


「ゲイになんか思わないの?

気持ち悪くない?男同士とか」


「そうかな?私はそういうの

なんとも思わないな。」

「恋愛って自由じゃん」

「BL好きだから全然大丈夫」


「へ?」


彼はいつも通りの顔で

「おはよう」と言ってきた。

彼は今日も爽やかな笑顔だった。




あれから10年が経った。

同窓会で彼の話を聞いた。

彼はオランダに行ったらしい。

同性婚が認められているオランダに行き

夫夫で暮らしているらしい。

早く日本でも同性婚が認められる

社会になって欲しいと

今は思う。

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蟷螂詩集 蟷螂 @Daigom

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