羽賀兄妹と神木刹那との出会い

「そういえば、穂村さんと雪菜さんたちっていつ出会ったんですか?」


 私が穂村さんに聞く。


「ああ、俺らが出会ったのは小学校に入学したときだな」

「意外ですね、幼稚園の時も一緒なのかと思ってました」

「雪菜と悠我がちょうどその時に神木家に居候し始めたんだよ」

「居候…?なんでそんなことに?」

「羽賀家のある場所が本当に辺鄙なところにあるんだとよ。俺も羽賀兄妹の親父と神木の親父になんの関係があるのか正直わかんねぇが…神木の親父がそれじゃあ満足な教養を得られないだろうってことで神木家に居候することになったらしい」

「ずいぶんと気前がいいんだね、現カミキエンタープライズの社長さんは」


 優紗とわちゃわちゃしてた御神楽さんが話に入ってくる。


「会った回数は少ないけどよ、あのオヤジさんはいい人だったぜ。忙しいはずなのに、神木、雪菜、悠我にたくさんの愛情を注いでいた」

「そりゃあ『ユグドラシルONLINE』を作った会社の社長さんだもの、忙しいよねぇ」

「テレビとかで見る社長さん、すごく人が好さそうでしたもんね」

「わぁ…いいなぁ…。すぐ八つ当たりするぼくの父さんに神木社長の爪の垢を煎じて飲ませてあげたいくらいだよ」


 明後日の方向を見ながらの御神楽さんの言葉にその場にいたメンバーが全員気まずい雰囲気になる。


「あっ、ごめん。つい本音が」


 御神楽さんは失敬失敬~と呑気に言う。


「すっげぇ気まずかった…急にぶっこんで来るなよ、返答に困るわ!」

「慧架様があやまってるだろう!野蛮竜ごときに!」

「野蛮言うな!」

「千染、これに関しては完全にぼくがわるかったから炎真に突っかかるのはどうかと思うよ」


 御神楽さんがそう言うと千染さんはおとなしく食い下がる。


「話を戻させてもらうと、俺と雪菜たちが出会ったのは小学一年生の時…同じクラスだった。入学したての頃は三人と絡むことはそんなになかったな」

「…ということはなにかしらのきっかけがありましたの?」


 優紗がそう質問する。


「ああ、小1の遠足の時以降、俺らはよくつるむようになった。班決めで俺、雪菜、神木、悠我と一緒になったんだ。それまで絡むことなんて全然なかったから当時は小学生ながらめちゃくちゃ気まずかったことを覚えてる…。でもそんな中、気にすることなく話しかけてくれたのが雪菜だったんだ。それがすごい心強かった」

「そうだね、すごく心強そう。炎真に連れていかれてだけど、ぼくに会いに雅遼家に忍び込んでくるような子だもんね。すごく肝が据わってるよ」

「すっごく閉鎖的な田舎で暮らしてたって本人の口からきいたが、その違和感を感じさせないくらい周りの空気を円滑にするのが得意な人間だったな。雪菜は」

「ひゅ~う、炎真ったらべた褒めだね~」

「うるせぇ、お前だって雪菜のことめちゃくちゃほめてんだろうが」

「ですが、それほど雪菜さんは人望がある方ということですわね。わたくしもお会いしてみたいものですわ」


 優紗がそういうと穂村さんと御神楽さんはまるで自分のことのように嬉しそうにしかし、恥ずかしいのか穂村さんはすこし照れていた。

 そのあとも私たちは穂村さんと雪菜さんたちのことについてたくさん聞いた。

 遠足で登山に行くことになったらしいけど、途中で雪菜さんが班からはぐれてしまうという事件が発生した。

 穂村さんと神木刹那さんは先生に報告するべきだと言ったけど、悠我さんはそれを聞かず、一人で山の中へと雪菜さんを探しに行ってしまったらしい。

 悠我さんを一人にするのは危ないと穂村さんは悠我さんを追いかける。

 その時、二人は当然の如くもめたのだそうだ。

 穂村さんをつっぱねてまで雪菜さんを探す悠我さん。

 しかし、そんな重い空気をぶち壊すかのように二人のそばの茂みが揺らぎ始める。

 山の中だし、獣が現れるんじゃないのか?そんな恐怖を抱いたところに現れたのがはぐれてしまった雪菜さんだった。

 なんではぐれたのか、のちに雪菜さん本人に聞いたところ巣から落ちた小鳥を偶然見つけて巣に戻そうとして班からはぐれてしまったそうだ。

 雪菜さん、心優しいな~…というか思ったよりも活発な人だったんだ…。

 データの中で見た雪菜さんはおっとりとしているから想像もつかなかった。

 あと、正体は雪菜さんだったからよかったけど、一緒になって揺れる茂みにビビり散らかした悠我さんはここで少し穂村さんに心をひらいてくれるようになったそうだ。


「まあ、あいつにとって口封じみたいな感じだろうけどよ。それでも心を開いてくれたのは嬉しかったな。素直に」

「ふ~ん。悠我のほうはなんとなくだけど分かった。んで、神木刹那の方はどんなかんじなの?」

「あー…あいつは悠我以上にプライド高いし、周りから天才だとか言われてたからすごいとっつきにくかったな。雪菜に心を開いたのもずいぶん時間が経ったみたいだし。…まさか友情通り越して恋愛感情抱いてるなんて驚いた」


 最後の方になにかぼそりと言った穂村さん。

 しかし、御神楽さんはそれを聞き逃さなかったようで穂村さんの方を見てニヤニヤする。


「炎真も大変モテるような子に恋をしてたわけだね」


 そう言った御神楽さんに対して穂村さんは顔を真っ赤にした。

 真っ赤になりすぎて爆発しそうになってた。

 だいぶ図星だったみたい。



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