あとがきみたいなもの
武術を目指す者の志とは何か。
現代において人を殺す技を修める事の意味は?
力の弱い者が、いざという時に自分の身を守る為の技を身に着ける。
だがそれは大抵の場合、一瞬で相手の急所を確実に突くような危険なもの。
相手を気付ける事無く無力化するなんてのはそれこそ物語上の達人の域です。
現代において、最悪の事態を想定した護身技術なんて、まあ何の役にも立たない。
それよりも強そうに見せる事の方がはるかに有益です。
普通は喧嘩で殺されるなんて事はまずない。
だから強さを突き詰めるよりも、いかに周りを味方に付けて、自分を強いかのように演出する方が現代の生き方としては正しい。
しかし稀にホンモノが現在にも生きているんですね。
本当に相手の息の根を止める技を培っている者もいるんですね。
そういう人達は有事に備えて誰に語る事もなく鍛錬を続けているのですが、まあ使う機会なんて無いです。
それはむしろ良い事なんだと昔の人は言いましたが、現実にそれを悟るのは難しいものです。
実際、寄り集まって一番弱そうな個人を集団でもって攻撃し、自分達が加害者であると意識しなければならないような者に、技を使用して殺してしまうような事件が起こったりしています。
彼らは失敗した、いわゆる脱落者なのですが、決して他人事ではなく、人知れず技を練る者は、そうならないよう教訓としなくてはなりません。
力を誇示する事なく技を練る者達に、活躍の場を与えてあげられる物語を届けられたら――という事でこの『忍武士』をお届けします。
なんて大層な事をのたまいましたが、本当の所そこまで考えていたのかは自分でも分かりません。
実際にはこれは長編四作目にあたりまして。四年ほど前になりますか。
それを今回改稿の済んだ物から公開していたんですね。
一般公開は今回が初めてです。
長編を書くようになってから、物書きとしての実力を確かな物にするために、仕事的な要望にも応えられるようにならないといけないな、と挑戦してみたものです。
ラノベでよく見られる「妖怪物」を一つ書いてみよ、と自分自身に課してみた。
まあごく普通にありきたりな展開と設定でストーリーを考えたのですが、やはりガラではない。
その内に欲が出てきて設定が膨らみ、もう一つ考えていた話と繋げて、結局ライフワークと言える『狭間シリーズ』の一遍にまでなりました。
冒頭にあるような自分の感性も入り、より『狭間シリーズ』の世界が膨らんだ。
いわゆる狭間の戦いにただの人間の力で関わっていく者達の話です。まあプネットガールもそうなんですけど。
余談ですが続編は既にあって改修段階なのですが、続編見たいな――なんて人がいればレビュー書いて頂けると公開できるようになるかもしれません。
忍武士の話に戻りますが、主人公魁にはモデルがいまして。
「覚悟のススメ」の覚悟です。
知ってる人はイメージ近かったもしれませんね。
パクリだと言われれば否定はしませんが、実際近い思想に基づいて作られているのだから似るのはむしろ必然。
作者の山口貴由さんは、知り合いの漫画家さんのツテでお会いした事があり、やはり彼自身も武術家でした。
もっともそれは僕が感じ取った事であり、彼自身は自分では全くそんな事は語らず、とても謙虚な方でしたね。
正に現代に生き残る隠れ武士の一人。
それをリスペクトする意味でも、同じテーマを僕の感性で語った物語を世に届けられれば幸いです。
魁は覚悟に比べるとはるかに未熟で、それは至る所から指摘されている部分でもあります。
しかしながら、これは魁の成長物語ですのでね。
ここで魁が満弦を倒してしまっては、そこで完結してしまいます(なので続編が出来て公開ができた)。
冒頭でもあるように、魁の甘さが殺人剣術から人を活かす技を見出す可能性になっていますから。
それを導く役を蟇目が担っています。
鋭い人は気が付いているかもしれませんが、鏑矢に対する蟇目矢。
二人はそういうコンビの構図を持っています。
そんな感じでまだまだ発展させて行きたい物語でありますので、応援して頂けると非常に励みになります。
この忍武士は登場キャラクター多いので、誰か一人にでも共感し、心に残る者があると嬉しいなぁ。
シノブシ ~忍武士~ 九里方 兼人 @crikat-kengine
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