第15話 みんなの応援 (=南✖人形✖家の中の主従関係+ジャンル指定なし)
アスカは、部屋に入って、すぐさまドアを閉めた。
「どうなされたのですか? アスカ様」
「……告白されちゃった」
アスカが呟くと、執事が首を傾げた。
「告白ですか? もしかしてお相手は、ミナミ様でしょうか?」
「そう!」
「それはおめでとうございます」
執事は、笑みを浮かべる。
「アスカ様の想いが届いたのですよ」
「そ、そうかな」
「それで、どう返事なさったのですか?」
「実は、まだ返事していないの」
「それはどうして?」
執事がおかしな格好で、尋ねて返してくる。人が真剣な話をしているときに、とアスカは思いつつも、おずおずと応える。
「怖くなっちゃって。ずっと好きで、好きになってもらえるように、努力してきたけれど、いざ、好きになってもらったら、私なんかで、本当にいいのかなって」
「なるほど。意外と小心者なんですね」
「ほっといてよ」
「察するに、怖がることなどないかと思いますよ。思いが成就したと、素直に喜んでいいかと」
「そうかな」
アスカは、不安そうに髪をくしゃりともんだ。
確かに、アスカの胸の内ではバクバクと心臓が早鐘をうっており、今にも昇天してしまいそうな思いだった。
大学に入ってから、ミナミに一目惚れしたアスカは、ミナミのとる講義をすべて受講し、まったく興味はなかったけれど、ミナミの所属するフットサルサークルにも所属した。
彼の視線を追って、好みの女性のタイプを調べて、髪も化粧も服も変えた。
奥手のアスカには、なかなか声をかけることができず、そうやって周りから整えていったわけで、結果のでない努力に悶々としていた。
それが、急に成功という結果として目の前に現れ、半ば逃げるように帰ってきたわけである。
「私は美人でもないし、スタイルだってそんなによくないし。ミナミさんには、もっとふさわしい人がいるんじゃ」
「それを決めるのはアスカ様ではなく、ミナミ様ですよ。そして、そのミナミ様が、アスカ様を選ばれたのです」
「それは、そうだけど」
「大丈夫ですよ。もっと自信をもってください」
執事が真剣な顔で言う言葉を聞いて、アスカは気を取り直した。
「今から、ミナミくんに返事してくる」
「いい判断をされましたね」
「この服、おかしくないかな?」
「アスカ様は、どんなお召し物を着ていてもおきれいですよ」
「もう、あなたはいつもそればっかりなんだから」
アスカは、鏡に向かって髪をセットし直してから、よし、と意気込んで扉を開いた。
「行ってくるね、みんな」
振り返ると、そこには、執事達が、部屋中に大小さまざまな人形が置かれている。執事服、学生服、スーツ姿、サッカースタイル。人形の顔には写真。大好きなあの人の顔。いろんな表情の写真が張り付けられている。
彼らは、大好きな彼の声で見送った。
「「「いってらっしゃい」」」
三文芝居~いや三文も稼げたらすごいと思う~ 最終章 @p_matsuge
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます