第5話
難しいところを突かれれば、「私はタレントです。専門家の方々がいい知恵を出してくださるでしょう」と、笑顔と天然キャラで逃げた。そう言われれば相手はそう責められない。でもよく考えれば、彼女が家にいた時に、数字をあげて夕食時に私が述べた持論である。
夕食は、私は宅配を取っていたし、彼女は出来合いの好きなものを買ってきて、一緒に食べた。彼女もいける口なので、私の晩酌に付き合った。(お酒は無論家主持ち。嫌だね、家主になると、やたらケチくさくなる)
堅い話にも意外と彼女は興味を示し、私は自分の持論を展開した。そう言えば彼女は私に付き合ってくれていたのだ。
投稿先のSNSで、私は小説や詩以外にその他文として政経を述べることがある。読専と称する一般読者から、めったにメッセージが入ることがないのだが、そう言えばこのようなメッセージが入ることがあった。
「卓越した見解に敬意を持って読んでおります。つきましてはこの様な問題を多村様はどうお考えですか?」と、たまにあるのである。私は嬉しくなって丁寧なメッセージを返す。彼女は私が投稿していることは知っている。あれが彼女かも知れない。
まさかとは思うのだが、返した答えがそのまま語られていることがある。それとも私の見解は一タレントが考えつくモノ程度になってしまったのかも知れない。
憲法改正問題についての討論番組で、「憲法9条の上にまだ法律がある」と語ったのだ。「憲法は最高法規です。どういうことですか」と専門家が問うと、「安保条約です」と答えた。
専門家は「そんな馬鹿な」と反論した。「沖縄の基地の問題。集団的自衛権の問題、秘密保護法の問題。全てこれで説明つきません。沖縄の人はそう思っていますよ」と返した。私は思わず「いいぞ!紀子」と拍手を送った。これは彼女のオリジナルの意見だ。彼女は相当勉強しているのだ。
私の家での間借りが、もし少しでも役立っているのなら、家主は幸せである。
了
下宿生は女子大生 北風 嵐 @masaru2355
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