白い世界
白い、白い世界-
見渡す限りの無の世界
ありとあらゆる物が消滅した世界
夢とうつつの定かでない、不確定な世界に-少年-ヴィセルはいた……
僕は知っている…この世界を。
何度も何度も来たことがあるからだ。
そして、
「やぁ、元気だったかい?」
「……………………!」
「そうか、それは良かった」
「…………………………?」
「僕かい?僕も凄く元気だよ」
「……………………」
この、会話をしている少女のこともまた、知っている。
声は聞こえないが聴こえ、姿は見えないがみえる……
そんな、不思議な少女だ。
いつから、この少女を知っているのか。
それは、僕にもわからない。
だが、とても昔から知っている気がする。
不意に少女は複雑そうな顔をした。
当然、少女の顔は見えないが…
「どうしたんだい?」
「………………?」
「うん、そろそろ戻るよ」
「………………」
少女はこの無の世界から帰ってしまうことを、残念がっていた。
しかし、もう来ないでとも願っていた。
この世界に来るときは以下の3つのことをやってしまったときである。
1つは僕が禁忌魔法を使ってしまったとき。
1つは僕の魔力が尽きてしまったとき。
1つは僕が死んでしまったとき。
とまぁ、なかなか来れないのである。
「大丈夫だよ。また僕が無茶をしたら、そのときはよろしくね?」
「………………」
「そうだね、最近は来れないね。でもそれは、世界が平和になったってことだよ!」
「………………………」
「そんなに悲観するなよ。また来るから。ね?」
「…………!」
ヴィセルはみえない少女の頭を撫でて、諭したこともあり、複雑な表情をしながらも納得したようだった。
「それじゃあ、よろしく」
「……………」
少女はヴィセルと向き合い、ほのかに紅潮している顔を上にあげた。
そして、目を閉じ………
ヴィセルと唇を重ねた-
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ヴィセルの視線の先には、2つの大きな膨らみがあった。
後頭部を乗せている場所はひんやりとして、とてもすべすべである。
もう、わかるだろう………膝枕です。
膝枕をしている人は、だいたい予想がつく。
逆に、膝枕をする仲など、ただ1人しか思い付かないが。
僕の幼なじみであり親友の-少女-レヴィンである。
彼女とは生まれた時から一緒だった。
故に、幼なじみであり、親友であり、ライバルでもある。
彼女ははっきりいって、才色兼備である。
特に、この世では珍しい白銀の髪をしている。
贔屓なしでも、素晴らしい女性だと思う。
だが………
「起きてるなら、はやく退いて頂戴」
「へいへい」
「あっ…………」
僕に対してだけ、時々ツンデレであるのだ。
(そんな残念そうな顔するなら、退いてなんて言わなければいいのに…)
昔は純粋な天使みたいな娘だったのに、中等部に入った途端、不器用少女になってしまったのだ。
まぁ、彼女の扱いはもう慣れっこであるが。
「ありがとうね。また、助けてくれたんだろ?」
「ち、ちちちち違うわよ!貴方を助けるためにやった訳じゃないわよ!?」
「そっか、ありがとう」
「……………うん」
レヴィンの頭を優しく撫でてやると、それまで意地を張っていたのがウソのように素直になった。
ついでに頬も紅潮している。
「また、やっちゃったか…」
「もう!魔法の練習をするっていうから見に来たら、暴走してたんだから!!」
「見に来てくれたの?」
「…っ!は、は?少し気になって、しょうがないから見に来てあげたのよ。そ、そう、しょうがなくよ!!」
「はいはい」
うむ、また暴走させてしまったか。
僕は魔力が尽きると、無自覚で暴走してしまうそうだ。
理由は………知らない。
「いま何時かわかる?」
「もう、夕刻よ」
「ああ、もう夕刻か……………っ!」
「ど、どうしたのよ?」
「じ、実は………………」
「………っ!」
実は………夕刻に王宮に来るように言われていました。
誰にかって?そんなの決まってるじゃないですか。
王様ですよ。
あの日紡がれた唄に、僕は憧れたんだ 現役高校生 @akatuki-rin
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