あの日紡がれた唄に、僕は憧れたんだ
現役高校生
プロローグ
「あぁ………はもう…逃げ…かな……身体が…動か…いや……」
ビルベイン奪還戦争終盤、焼け野原となってしまった戦場に1人の少年がいた。
年は12くらいだろう。
少年の身体はどこから出血しているのかが分からないほどに酷い状態であった。
魔力も底を尽きており、回復魔法を掛けることすら出来ない。
少年のまわりにはなにもなかった。
そう、なにも存在していなかったのだ。
そこだけこの世界からどこかへ捨ててしまったような奇妙な円ができている。
「も…すぐ…死ぬ…のか……」
少年が『死』を悟った時である。
「…………っ!」
どこからか唄が聞こえてきた。
その声はすごく綺麗で、美しくかった。
そして、どこか寂しそうで悲しそうでもあった。
その唄を聞いた少年は
「死に…く…ないっ!…」
泣きながら、途切れ途切れとなった声で叫ぶのだった。
段々と唄が聞こえなくなってくる。
代わりに、段々と意識が遠退いていく。
しかし、不思議と痛みはない。
どこか安心感さえある。
脳裏に誰かの声がよぎる。
しかし、少年は反応することができずに、ただただ安心感を抱いて意識を虚空に投げたのだった―
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