死にたい時のおまじないを試したら大変なことになった話

佐藤深槻

第1話 死にたい二人

「死にたい……」

 これはなんとも便利な言葉である。


「宿題を忘れて、死にたい」

「振られた、死にたい」


 小さな出来事から大きな出来事まで、自分の身に何か事件が起これば口をついて出るのは、死にたいという言葉。この呟きはきっと、いつの時代でもどこの国でも人類共通の「あるある」なのではなかろうか。通学中に鈴木秋人はそんなことをぼんやり考えながら歩いていた。


 彼の身には今日、人生最大の大事件が起ころうとしている。


 ――


「死にたい……」


 山口麗奈は、そう思うことが歳を重ねるごとに増えてきた。そしてその言葉が内包している闇も、段々と深まってきている。


 ブブブッ


 手に持つ携帯が震える。彼女はすかさずスマホを取り出し画面を叩いた。メッセージアプリを起動すると、彼氏からメッセージが来ている。


「話したいことがある」


 この改まった一文に一抹の不安を感じつつ、簡単に返事をする。時刻は12時45分。そろそろ昼休み終了を知らせるチャイムが鳴る頃である。山口麗奈は授業の準備をして、教室へ向かった。

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死にたい時のおまじないを試したら大変なことになった話 佐藤深槻 @satomi333

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