第6話甲葉と乙葉②

二羽姉妹によるキュートインパクトをくらい、数分間死んだように倒れた俺たちは何もなかったように椅子に座らされた。


「それでは今日呼び出した要件について話しますね」


ゴクリ…

俺は固唾を飲んだ。

例えどんな事だろうと、先輩の為ならやり遂げてみせる!


「次の中間テストで学年順位50位以内に入って欲しいのよ」

「すみません、それは無理っす」

俺にだって出来る事と出来ない事がある、なんだってやる?現実見ようか


「そもそも何で俺なんすか?言っちゃ何ですけどあまり勉強できませんからね?」

ここは、賢くもなく、バカでも無い高校で俺はそこの中間ラインよりちょっと上くらいの位置にいる。

まぁ、頑張っても難しいと言う事だ。

「私も別の人がいいんじゃない?って聞いたんだけど、乙葉が君じゃ無いと嫌とか言うんだって」

「俺をですか?」

乙葉先輩を見るとうんうんと、元気に首を振っている。本当の事らしい。


「でも確かに気持ちはよく分かるよ、私達も今後の生徒会活動で1年生との協力は必要不可欠だからね」

「でもそれと学年順位って何の関係があるんですか?」

ガタッと、先程までフリーズしていた先輩が席を立ち、鼻で笑ってくる

「貴方、そんな事も分からないのですか?ただでさえ二羽姉妹がいるこの生徒会、何の取り柄も無さそうな人が1年の代表だ何て誰が認めると思うのです?目に見える成果の一つや二つ持ってないと生徒会はやっていけないのですよ」


ま、貴方には出来れば先輩に近づいて欲しく無いのですがねと、何気に失礼な事も言ってきやがる。


「で、そんな安藤先輩は学年順位高いんすか?」

「無論です、定期テストでは常に10位以内に位置しています。故に私にはこの学校生徒を導く力があると言う事です」

どうですかと、お粗末な胸を張り、自慢をしてくる


しかし、そこまで話を聞いていた生徒会長である甲葉先輩がとんでもない発言をしてきた

「じゃあ、迷える学校生徒である真君を助けるために勉強を教えてくれるのかな若葉さん?」

『へ?』

何故か隣の安藤先輩も反応してくる

「甲葉先輩?流石の私も人を選びたいと言いますか、それに彼で無くとも他にもっと良い人材がいるはずです!」

「でもね?やっぱり私も可愛い妹の意見を尊重したいのですよ、最初っから何も無しに否定しては真君が可哀想でしょ?だからちゃんと良い人材なのか確かめる為にここに呼んだの」

しかし…と、なかなか引き下がらない後輩に何故かにこりと笑うと

「でも、確かに若葉ちゃんには何のメリットも無いのよね…。うーん、どうしよっか?」


頭を抱えて数秒悩むとバッと勢いよく頭を上げ

「じゃあ、貴方たちが協力して学年順位50位内に入ってくれれば何でも1つずつ出来る範囲なら言う事を聞いてあげる」


どうかな?と可愛く首を傾げる先輩を見ただけで幸せな気持ちになってくる。

しかし、気楽な俺とは裏腹に安藤先輩は物凄く何かと葛藤していた。


「くっ、貴方なんかを生徒会に入れたく無いけど、無いけど!先輩の頼みと言うなら仕方がありません!次の中間まで私が勉強を教えてあげます」

「そして先輩とあんなことやこんなことを…」

よだれ垂れてますよ先輩


「真君、覚えておいて。あれがツンデレってやつよ」

「や、やめて下さい!そんな感情はこれっぽっちも無いですから!」

「おい、人が聞いていたら好き勝手に言ってくれますね!」

「貴方は黙って下さい」

はい、すんません

「ま!そう言うことなので!二人ともがんばってね」

その言葉を最後に緊急集会はお開きとなった


「はぁ、疲れた」

結局日が暮れ、パフェを食おうと思っていたがどうせ混んでいるのでそのまま帰る事にした。

春の夜の心地よい風が肌を撫でる何気ない帰り道の…はずなんだが

「あの安藤先輩、一体どこまで着いてくるんすか」

後ろに佇んでいる電柱に声をかけると濃い緑色の髪をした少女が顔を出す

「…いつから気づいていたのですか?」

「学校出て数分後ですかね」

「ちゃんと気づかずに来たはずなのですが…」

「そのやけにでかいかばんはみ出てましたよ」

「まぁ、早かれ遅かれ話すつもりでしたし別に気にしなくても良いですよ」

林檎のように顔を赤くして言われても…

「兎に角私も貴方の家まで同行します」

「何でですか?」

「貴方に勉強を教える為ですよ」

「別に家に来てもらわなくても…」

「時間は刻一刻と近づいています、調べによると貴方、一人暮らしでたまに親戚などが来るくらいなので突撃しても問題ないと言う判断です」

「いや、問題しか無いだろ」

それ立場逆なら犯罪だろ多分

「私も嫌ですよ、嫌ですけど先輩にやって貰いたい事もありますし、貴方には頑張ってもらうしか無いのです。利害は一致する筈ですが」

「急に言われても家の片付けとかやって無いんだが…」

「そこも問題ありません。行き遅れた母がいつ異性の家に出向いても恥ずかしく無いように炊事、洗濯、掃除など必要な事は全て教え込まれましたから」

それ多分意味履き違えている気がするのだが…

しかし、俺としても数少ない先輩との繋がりを大事にしたい

「…痴漢とか冤罪かけないで下さいよ?」

「無論、そんな失礼な事はしませんよ、私をなんだと思っているのですか」

2日間連続でロッカー前に居座っていた不審者だとは思ってるよ


「では向かいましょう、美味しいご飯を振舞って上げます」

上機嫌で俺の家に走っていく彼女を見て少し可愛いなと思ってしまったのは内緒である


先輩なんで俺の家の場所分かってるんすか?

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好きなんだったら姉じゃ無くても愛せますよね?(300PV超) 龍大悠月 @rader25252

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