遠くの『アニメ新世紀宣言』より近くの本

愛 絵魚

このメカ、どうなってんの!?

 マシンガンを乱射するザクの頭越しにビームサーベルを手にしたガンダムが飛び上がり、ストップモーションの後、画面が赤く染まる。

 そこに被さる「君は生き延びることができるか?」のナレーション。

 何話目からだったか、次回予告の最後に流れるようになったこの映像。


 ほとんど後頭部しか描かれていないザクからひしひしと伝わってくる、明らかな「怯え」に何かを揺り動かされた私は、当時中学一年生でした。


 今にして思うと、田舎にしては珍しくキー局と同じ時間帯に放映されていた「機動戦士ガンダム」。

 流されたり叱られたり殴られたりしては落ち込むアムロが、それまでに観たロボットアニメの主人公とは大分違っていて珍しく、当時の自分と年齢が近いこともあって妙に惹きつけられました。

 また、「ガンダム」は、小学生の時に「宇宙戦艦ヤマト」を観た流れから「実在する戦艦や兵器、戦記」に興味を持ったところに現れた存在でもありました。

 「ロボット兵器」、「量産型」、「一体一体を人が動かしてる」何と心躍ることでしょうか。


 とは言っても、中学生にも中学生の生活があります。

 本放送時、全話を観ることはできませんでした。


 今でこそビデオやDVD、ブルーレイレコーダーと、「テレビ番組は録画しておいて観るもの」あるいは「映像ソフトを買って観るもの」になっています。

 しかし、当時はそんな物は無く、テレビ番組は「その時間にテレビの前に座っていないと二度と観られないかもしれないもの」でした。

 運良く観られた場合でも「さっき出てきたロボットの武器、どうなってたんだ!?」と思っても、その時には最早確認する術はありません。

 同じシーンを見るためには再放送を待つしかありませんでした。


 そんな状態の私に「番組そのものを観ることはできないけれど、あのメカがどんな物だったのかは見せてくれた」のがアニメックでした。

 そう「設定資料」というものの存在を教えてくれたのがアニメックだったのです。


 そして、「劇場版 機動戦士ガンダム」の公開直前、東京では「アニメ新世紀宣言」というものが宣言されたそうです。

 実のところ、自身の記憶を探ってもこれはほとんど印象に残っていません。

 田舎の中学生にはそれを見に行こうという発想さえなく、丸っきり別世界の出来事だったのです。

 そういうものがあったということだけは、後にアニメックの記事で読んだように思います。


 それよりむしろ、その後の自分のおたくとしての生き方に確実に影響を与えたと思われる本が、ほぼ同時期に同じラポート社から出ています。


 アニメック第16号『機動戦士ガンダム大事典』。

 大量の設定画と記事に埋め尽くされた、ガンダム好きのバイブル。

 今見るととても十分とは言えない情報量ですが、当時は他に類を見ない一冊だったのです。

 角が擦り切れたこの聖典は今も私の本棚に並んでいます。

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