All in Action,

第1話 夕焼けの空に

　思えば―――

　ここから見える景色を何度見た事だろう。

　不思議なことに、この桟橋から見てきた風景にどれ一つとして同じものはない。

　私が喜びの中にいる時には、空は青く澄み、水面も煌めいて見えた。

　逆に失意に打ちひしがれている時には、重く雲がかかり、高くそびえる赤い橋もひどく恐ろしいものに思えた。

　だがもうこの景色を目にすることはない。

　汽笛が遠くに聞こえ、小さな船影が近づいてくる。

　別れには慣れているはずなのに、つい後ろを振り返ってしまう。

　私の役割は此処までだ。この後はきっと彼らがやってくれると信じている。

　そう思い返して私は波止場を後にした。