1話でざまぁして終わる、パーティ追放

ひつじのはね

第1話 追放とその後

最近、パーティ内の雰囲気が悪いと思っていた。飯の時も、以前はオレの作った料理をベタ褒めしていた3人が、妙に静かだ。おかわりもしないなんて。だからこのところ、きちんと人数分だけ作るようになった。

3人だけで話していることも多いと気付いていた。でも、激しくなる戦闘の中で、魔王討伐の責任を負うパーティとしては、色々と詰めなければいけないことは多いだろうと思っていた。


能力値の高くないオレだからこそ、そういった話し合いに参加せずに、他のことに気を回せるのだと、オレなりの役割を認識して役立っていたつもりだった。


「なあ…お前に言っておかなきゃいけないことがある」

ある日、戦闘後に3人の手当をすませたところで、アレクが口を開いた。

「どうしたんだよ?」

何かを察したように、3人が立ち上がった。冷たい瞳に、思わずオレも立ち上がる。

「何だってんだ…?」

「フェリオ。悪いが、パーティを抜けてくれ。これは、皆で話し合った結果だ」

突然の通告に、耳を疑った。

「……なに?」

「お前の実力ではもうついて来られない。お前を守って戦うのはもうたくさんだ!もう器用なだけでは生きていけないレベルに来てるんだよ!!」

吐き捨てるように言われた言葉。

「ここならミラルの町まで近いわ…最後の慈悲よ。送ってなんて…言わないわよね?」

ケイトの言葉が冷たく響く。呆然と3人の顔を眺めても、その無表情に変化はなかった。

「オレが…守られていたってのかよ…?オレが器用なのは知ってるだろ?今回の戦闘だって…」

「お前に傷が少ないのは、俺達が前でお前を守っているからだ!!」

そんなはずはない!オレはいつだって…そう思いはするものの、明らかに実力が上の者が言うことだ。オレが…気付いていなかったのか…?

「だからね!もう邪魔になってるの!出て行ってほしいの!!」

言いたいだけ言って、くるりと背中を向けたカレア。そうかよ、最近雰囲気が悪かったのは、オレのせいかよ。

「いいのかよ…お前ら、飯、作れるのかよ。荷物持ちすらいなくなるんだぞ?!」

「分かってる。旅の終わりはもうすぐだ。お前じゃなくても飯は作れるし、保存食でいい。お前がいることを思えば、荷物くらい分担すればいい。」

「だからもう、行ってちょうだい…休みたいの。」

ケイトの疲れた顔に、オレは本当に邪魔な存在だったのかと、歯を食いしばる。

「そうかよ……じゃあな。」

「ああ……。」

オレは、たったそれだけのやりとりで、小さな道具袋ひとつ持って、勇者パーティを離れることになった。大丈夫、オレは能力こそ低いけど、したたかさは人一倍だ。こんな所でのたれ死んだりしない。



「……行った、か。」

どのくらい無言で立ち尽くしていたのだろう。アレクがどさりと座り込んで俯いた。

「カレア、泣かないって約束じゃない…いきなり泣くんだもの…。」

「だって…だって…!!ケ、ケイトだって泣いてるじゃない!」

「もう、いいのよ…だって、もう…いなくなっちゃったんだもの。」

わあわあと泣き出した二人を見て、アレクが顔を歪める。本当に、本当にこれで良かったのだろうか。脳裏に過ぎるのは、あの明るい笑顔。疲れ切った俺達を、いつも励まし、助けてくれる、強く優しい声。こんな風に辛い時、必ず側に来てくれるはずなのに。

大好きだったよ、ごめん、こんな最後で。


にじむ視界に、どれほど失ったものが大きいか思い知らされる。彼はこんな時、絶対に肩を抱えて言うんだ。その片手に湯気のたつお椀を差し出して。


「…泣き虫アレク、これでも食え。元気出せ?」


ずしりと肩にかかった重みと、鼻先をかすめたいい香り。

がばりと顔を上げた拍子に、ぱたたっと涙が地面へ滴った。

突如俺達の輪の中に現われた男に、ケイトとカレアも呆然と目を見開いた。

「お……お前……なんで…。」

「勇者サマともあろうものが、オレ程度の隠蔽に気付かないなんてな!どうしちゃったんだよ?ほら、泣くな、食え。」

押しつけられた椀を見つめて、ケイトとカレアは子どものように泣いた。

「なんでぇ……だって…あんなこと言ったのに…」

「ごめんなさいぃ…だって…だって…フェリオに…じんでほじくながったからぁ!!」

フェリオは、ふう、と息を吐いた。

「そんなこったろうと思ったぜ。お前らがオレの心配するなんて10年早いっての。」

「でも…でもぉ!フェリオ…このあたりの魔物じゃ一撃で…!!」

「一撃も当たらなければいいんだよ!」

「おま…お前ぇ…俺たちが…俺達がどんな思いでアレをやったと思ってんだ…全部台無しにしやがって~!」

喜びと、照れと、後悔と…複雑に絡まった感情でぼろぼろ泣いたアレクが、フェリオの胸ぐらを掴んだ。


「フン、オレを出し抜くには不器用すぎたな!ざまぁねえな、勇者サン!」

フェリオはにやっと笑うと、ぽんぽんとアレクの頭を撫でた。






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1話でざまぁして終わる、パーティ追放 ひつじのはね @hitujinohane

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