第43話
「
「入りなさい」
義父の書斎に一歩足を入れると、義父と義母がソファーに並んで腰掛けていた。何だかんだ言いつつ、このお二人はラブラブなのだ。
私室で昨年の騒動を思い返して『あれからもうすぐ一年になるなあ』と思っていたところに、『お暇ならいらっしゃい』と義母から呼ばれて書斎に登場したのだった。
「色々な話を聞きたかったでしょう?ちょうど旦那様にもその話をしようと思って」
義母の微笑みに苦笑する。
義母は『私の話が聞きたいなら今すぐ来なさい』と影に言葉を含んできたのですから。
「では早速話しましょう。あまり時間を掛けすぎて、トルスタインの睡眠の妨げになってはいけませんからね」
そう言って、グラセフの話が始まった。
あの男は『自分は優秀だったから招かれた』と思っているらしい。
「バカな話よね。自分が今いる領地は『誰のところか』って分かっていないのよ」
「グラセフは義母上のご実家の領地にいるのですよね。それで分からないとか」
「それだけじゃないわ。実は『娘はある人物に貶められた』って言っていたの。そして『
「─── その相手は、私ですか?それともリリアーシュ嬢ですか?」
「どちらも、なのよ」
「殿下は『不貞のエステル』の名の事実をご存知ですよね」
「ええ。グラセフの実父が
そう。『エステル自身』ではなく『両親となった人たち』を指した言葉なのだ。
「その事情を知っている者は『可哀想な娘』として見ていました。ですが、アレを『不貞を働く娘』と誤解した者たちが彼女にイタズラをしました。彼女の『年齢にそぐわない体型』は避妊薬による副作用です」
彼女はそうして育てられた。それでも、母親や姉たちの注意を受けて育てば問題なかっただろう。しかし、事情を知る父親グラセフが甘やかして育てた。
「義父上。義母上。お尋ねしたいことがございます」
私の言葉にお二方が黙って頷いた。
「何故、『男爵家の息子』が『伯爵家の娘』に手を出せたのでしょう?それに侍従侍女はいなかったのでしょうか」
「トルスタイン。それに関してですが・・・」
「殿下。仮定しているのでしょうか?」
「ええ。グラセフが裏で手を回していたのではないでしょうか?」
そう考えれば、母親たちが正そうとしたのを邪魔していたのではないでしょうか?
第二王子は『冷酷令嬢』を愛でています アーエル @marine_air
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