第11話 浴場大戦
「零、ハリスお風呂入りに行こうぜ!」
おれはうきうき上機嫌で二人を大浴場に誘った。
日本人というものはお風呂というものが好きなものなのである。これは日本人に刻まれているといっても過言ではないほどの不変なものなのだ。
「ふふんーふーんふーん」
「ゆうはあいかわらず風呂になると上機嫌だなー」
「だって気持ちいだろ?」
「んー僕は親の関係もあってシャワーが多いかなー、でも日本のお風呂の文化は本当に素晴らしいと思うよ」
「だよな!ハリスはわかってるねー」
大浴場につき温泉のシンボルともいえる「ゆ」とかかれた暖簾をくぐるとそこには脱いだ衣服をいれるかごとそれを置いておく棚、洗面台と機能性に富んだ脱衣所であった。
「なんか旅館みたいだね、」
「旅館なんて今のご時世ないだろ、」
「まーもうここ最近はカプセルホテルとかが主流みたいだしな。老舗旅館とかはもう30年前くらいからどんどん減っていったからなー、」
たわいもない話をしながら服を脱ぎお風呂に入る。
引き戸を開けると湯煙がたちこめ洗い場と浴槽が一つ、水風呂が一つそしてなんといっても極めつけは外にある露天風呂である。
体を洗い湯船に向かう。
「あーやっぱり気持ちいいなー」
「顔が緩んでるぞ」
「あぶないあぶない」
零の注意でなんとか湯船によだれをたらさずに済んだ。
「えい!」
おれは面白半分で零にお湯をかけた。やっぱり1日目だしちょっとした旅行気分でテンション上がっちゃうもんだ。
「やめろよー」
あまり乗り気ではないものの零もかけかえしてきた。
「あまりはしゃぎすぎたらだめだよー」
ハリスはおれたちを見て親のようにやさしく注意した。
この時おれたちはこの後痛い目にあうなんて思わなかった。
そうそれはこの後起きた。
零と何ラリーしただろうか。
それは突然起きた。
バシャ
おれが零に向かってかけようとしたお湯は手元が狂いハリスの顔へと向かっていった。
かかる!と思った時にはもう遅かった。能力で水を操作すればよかったと思いついたのはこの出来事があってしばらくたった時のことだった、、、
ゾクッ
湯煙に包まれていた浴室に不穏な空気で満たされていく。
おれと零は顔を見合わせてからそっと静かに視線を向ける。
そこには黒いオーラをまとっているかのようなほほえみでこちらを向いている
ハリスだ、
「あんまりはしゃいじゃダメっていったよね?」
こんなにも安心を与えないほほえみがあるのか、
「ご、ごめん」
「わるかった、」
「すこしクールダウンしようか」
そういうとハリスの髪の毛が逆立ち始めた。
俺は知っている髪の毛が逆立つときなんて戦闘民族が形態変化するときか【静電気】を
帯びてる時くらいだってことを、、、
「ハ、ハリスくん?それはまずいんじゃ、、、ここお風呂だしさ、、、」
「一回落ち着こうね」
「ごめんなさあああああい!」
ハリスの笑顔と同時に体がしびれはじめおれの意識は暗闇へといざなわれた。
目を覚ますとベッドで横になっていた。服は着ておらず下半身にタオルがかけられているだけだった。隣にハリスがいた。ドアのところに零がもたれかかりながら立っている。
おれが目覚めたのに気付いたハリスは読んでいた本にしおりをはさみパタンと閉じた。
「やあ、目が覚めたかい」
「たく、誰のせいでこうなったと思ってるんだよ。」
「いやー思っていたよりも力加減がむずかしくてね、」
「午前中に解放されたばっかりだし当たり前だろ、」
「今はちょっと反省してるよ、」
「ちょっとかよ、、、てか、なんで零は平気なんだ?」
「俺に触れていた水を能力で瞬間的に全部なくした。」
「はー、なんてやつだ、て、それおれもやればよかった、」
ドタドタと廊下が騒がしくなってきた。
おれの部屋のドアが開いた
「ゆうき大丈夫!?」
栞奈が飛びついたきた
「ちょっ、くっつくなよ。大丈夫だから。」
「ならよかったよー」
ニヘラとかわいい笑顔を見せる。
かわいいやつめ
「あの、本当に大丈夫なの?」
「あー心配ないよ!このようにぴんぴんしてるさ!心配してくれてありがとう時雨ちゃん」
得意の爽やかなハニカミをかます。
「な、ならよかった。」
なんでもじもじしてるんだ?とりあえずなんか小動物みたいでかわいらしい。
「奏も颯来もみんな心配してくれてありがとう!」
「ほんと心配したよ。」
「お前が言うなよ!ハリス!」
みんなの笑い声がこの部屋を満たした。
嚮後のユートピア 温泉ゆう @0nsen
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