第4話 恋への情熱

 今日も恋愛映画を見終えた。




 これで、恋の予習は完璧だ。

 恋愛映画を見始めて3年。


 車道側は男が歩く。

 レストランは予約しておく。

 デートの時に次のデートの約束をする。

 初デートで手を繋いでいいのは帰り道の時だけ。


 これで俺は恋愛マスターだ!



 しかし、気づいた。



 相手がいない!!!!


 だが、そんな壱も明日から高校生である。

 壱は特別勉強が出来るわけではないので、それなりの学校に通う事になった。


 おそらく四天王な人はいないような学校である。


 そして、いよいよ初登校の日である。

 田舎町から電車を使い1時間かけて、学校まで通った。


 教室に入るとクラスメイトが殆ど来ている。

 クラスの8割がただの人で残り2割が逆四天王の称号を与えられている人達であった。

 もちろん四天王の称号の者は1人もいない。


 男女比は半々くらいだが、モデル級の美女などは1人もいない。

 当然美女はモデルやタレントなどが学べる高校に進学する事が多いからである。


 だが、女の子と殆ど話した事がない壱は、まず女の子と仲良くなるところからである。



 恋愛映画で予習はバッチリである。

 よし、どんどん話しかけるぞ!


「はじめまして、猫神壱です。趣味は恋愛映画で好きな食べ物は柿の種です。」


 その後も出身の話や趣味の話などをするが、反応はイマイチである。



 思った。

 この話は面白くないというのを。


 そうとは気づかず一方的に話しかけてしまい、変な印象を持たれたに違いない。

 壱は恋愛映画で予習したのだが、恋愛映画の主人公は、自分から行動を起こさなくても相手が寄ってきたり運命的な出会いを勝手にする事が多く、出会ってすぐの女の子に対するアプローチ方法を映画から学ぶ事が出来なかったのだ。


 そんな都合の良い運命的な出会いなんてできるはずない。ましてや壱は逆四天王なのだから。


 そんな時、クラスの中でもただの人であるそこそこのビジュアルの男子が人気を集めており、半年も経つと付き合い始める者たちもいた。


 そんな中、壱はというと、授業のプリントを後ろの席の子に渡す時にくらいしかクラスの女子と話す事がなかった。


 そんな状況のままでは駄目だと思い、クラスの女子に積極的に話しかける。


 そして、3年間の高校生活で同じクラス、先輩、後輩と10人の女子に告白をした。



 答えは、いつも決まって

「逆四天王の人はちょっと」

 であった。


 壱は高校3年の夏、10人目の女の子に告白し、断られた後に自分の中で燃えたぎっていた恋愛に対する灯火が消えた。



「逆四天王の俺は恋愛も出来ないのか・・・」



 こうして壱は残り半年の高校生活を廃人と化して過ごした。

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零話(れいわ)〜人生は0からやり直せる トゥルーY @kking

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