ほろほろ
清水優輝
.
肌に透ける蝶々を捕まえようと
太陽を映した産毛に触れる
束の間彼女は風に奪われて
ひとり残された僕は帰れずにいる
湖の水面が跳ねる 魚によく似た
僕の劣情
星が頭上を覆うときに
目を開く兎の耳の動きを
父は愛していると言っていた
ずっと昔の話
秘密基地に残された婚約指輪
溶けてしまったサイコロを何度も振っている
僕の知らない数字が
出るんじゃないかと
出るんじゃないかと 思うのだけど
初めて水族館でクラゲを見た
幼い僕の感動を毎日思い出しては
忘れていく
逆立ちをして夜の森を散歩した
父の愛した兎の耳が縮んでいく
苦しい 血が
頭に全身の血液が溜まってしまったら
僕は爆発してしまう
トマトを壁にぶつけたように
下品に笑う蝙蝠が返事をした
抱きしめてほしい 怪我が治らない
包帯を巻く手を自ら手放した
僕は今どこにいるのだろうか
歩き疲れて横たわる 香る草の生命を
彼女の汗を ごろりと転がる兎の瞳を
参ってしまう
ほろほろ 清水優輝 @shimizu_yuuki7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます