3.悪役令嬢がタンクのってやってきますわ。おほほほ

 ワシは移動のために戦車を呼び出した。

 チートの能力でやりたい放題である。最高ですわ。おほほほ。


「操縦の心配があったのだけど、この点はご都合主義のこの世界のおかげだな。おほほほほ――っ!」


 ワシはキューポラから身を乗り出し、高笑い。

 呼び出した戦車は、悪役令嬢だけが持っているウルトラエクセレント第六感AIで動くのであった。

 最高なのかサイコなのか分からぬが、爽快極まりないのであった。


 

「なんだか、わたくし、わくわくしてますわ。ときめいているのかしら。おほほほほ」


 戦車は自衛隊の最新鋭戦車10式である。

 C4Iシステム搭載の第四世代戦車であるのだが、戦術情報を共有しようにも、チートの能力で呼び出された戦車は一両であり、宝の持ち腐れであった。

 

「50トンで街を蹂躙しまくれる90式の方がよかったかしら? おほほほ」


 ワシは、120滑空砲が街を破壊していく様をみてエクスタシーを感じていた。

 メスイキしそうだった。おほほほ。

 そういえば、大砲は男性器の象徴であるとアホウなことをいったのは、どこの心理学者だったか。


「よく、思い出せませんわ。でも、最高ですのよ。おほほほ」


 火を噴く120ミリ滑空砲は、いんちき臭い、中世ヨーロッパ風といわれる、石造りっぽい建物を破壊していく。

 この時代の建造物で最も巨大なものは、教会の大聖堂であり、それと風車のメカニズム、鐘の製造による冶金技術など、もろもろも社会的要因により工学的な知識が蓄積されていくのである。


 しかし、そのような統一性、合理性をみせない「中世ヨーロッパ風」の町並みは120ミリ滑空砲の前に崩れ去っていく。


 逃げ惑う人間は搭載機銃が無慈悲の銃弾を送り込む。

 女も子どもも容赦しない。


「それが、戦争です。悲しいことですわ。ほほほ」


 ワシは無限軌道で、この世界の薄っぺらい存在感の人間を44トンの重量で蹂躙しまくるのだった。

 生意気にも、血と肉を破断させ、生命活動をとめたかのように、見えるのが「こん畜生でございますわ。おほほほ」というわけである。


 そもそも、こんな考証もなにもなっていない。バックヤードの食料や消費財をどうするかの設定すらされていない世界が成立する方がおかしいのであって、そのような世界に住む住民も皆殺しが当然であろうな――と、思うわけありますわ。ああ、はしたないですわ。おほほほ。



 7.62ミリ機銃が軽快で愉快なレクイエムを奏で、三菱水冷10気筒ジーゼルエンジンが、スーパーチャージのタービンブレイドの金属音を響かせる。


「ああ、異世界が滅ぶ様はなんて、素晴らしいのでしょうか。おほほほ」


 ワシは町中を破壊しまくる。

 そして、遠くに見える、この国の王城を目指すのであった。

 全員往生させるために。おほほほ。

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