悪役令嬢になったので、現代兵器で異世界を破壊してバッドエンドを回避することにした

中七七三/垢のついた夜食

1.兵器を生み出すチート

「イザベラ、君との婚約は解消する!」と、言う感じで言われるのであろう。


 破滅が、終焉が、でもって殺される。最悪。


 と、ワシは気づいた。

 ワシは悪役令嬢に転生したのだった。

 

 元おっさんなのでTS転生という事態なのであるが、このようなケースは想定してなかった。

 

「わたくしは、乙女ゲームなるものを知りませんわ。おほほほ」


 誰もいない豪華な貴族的なお部屋の中で言ってみた。

 おほほほ。お嬢様の声だった。


「しかし、破滅を回避しないと、死ぬな~。それしか知らんけど。おほほほ」


 語尾に「おほほ」が似合う声だなと思った。

 試しに「らめぇぇ~、あ、あ、あ、あ、来ちゃうのぉぉ」と言ってみた。

 興奮したが、おちんちんがない。当然である。


 ワシは「悪役令嬢」という役割について詳しくはしらない。

 ヒロインの邪魔をして、王子様とか、イケメンの貴族とかとの結婚を阻止する存在であるかな――と、漠然と理解している程度だ。


 ワシは現状を整理する。

 ワシはイザベラという、名前であり、なんとも工夫も臆面もない悪女っぽい名前に脳内がむずがゆくなる。

 そもそも、この甘ったるい「中世ヨーロッパ風」の異世界?

 そうですか、異世界ですね。これが、たまらなく嫌だった。


「神よ、何でワシをこんな目に!」


「わっ!!」


 心臓にトマホークが直撃しかたかと思った。つまり驚いたのだ。

 ワシの豪華な天井のあるベッドまである、いかにも貴族ご令嬢ってこうだよな――と、いう薄っぺらい想像力を振り絞って創ったように見える部屋に、創造主が出てきた。


「すまん手違い」


 いわゆる、ニーチェに死亡宣告された輩だ。

 ワシも殺したい。今は。


「ごめん。その代わり、チートな能力を上げるので許してください。お願いします」


 神は見事な土下座を決めた。

 仕方ないので、ワシは許してやることにしようと思った。

 が――

「チートの力」なるものの魅力次第であろうなぁと思うわけだ。


「なにくれるの?」

「無から近代兵器をどんどん生み出せる力です」

「質量保存の法則は?」

「いんですよ。細かいことは。チートだから」

「なるほど、チートか……」


 この一言で全てが解決する。


「どうすればいい」

「兵器を思い描けばいいのです。それで出現します」

「なるほど」


 ワシはちょっと考えて、「FNファイブセブン」を思い描いた。

 ベルギー製の自動拳銃の未来形を作り出したとも言える先進的オートマチックハンドガンである。


「おお!」


 ワシの嫋やかな指が構成する手のひらに「FNファイブセブン」が出現する。

 神がドヤ顔で「ほら、私の言ったとお」


 パーン!

 

 神が眉間に穴を開けひっくり返った。

 おほほほほ。神の血の色も赤いのだな。まあ、人間が神に似ているのかも知れんがな。


 ワシは「FNファイブセブン」を握り締め、次の血祭りの標的を考える。


 まあ、遅かれ早かれ、この世界はワシが現代兵器で破壊することを決めたのである。

 

「おほほほ、バッドエンドなど回避いたしますわ!」


 ワシは5.7ミリ×28ミリ弾をパンパンとベッドに打ち込み、高らかに宣言するのであった。

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