最終話:かぐや姫の未来は如何に?

 「で、お前たちは我々をどうする気だ?」

 イトツキが賢匠院こと俺に訊く。あの後、月の使者達は取り敢えず用意した縄でグルグル巻きにされ、イトツキ、キノツキもその例外ではなかった。

 それどころかキノツキは身体能力を危険視されて毛糸玉や縛られ地蔵のように縄で達磨のようになっていた。

 「一応、帝や翁からは俺の方に任せると言われてるから…。まぁ、『大人しく帰って貰う』ってことで、」

 縛られて座らされたイトツキを見下ろしながら提案をしようとした。が、

 「断る。かぐや姫様を月へ連れ帰る。それが我らが使命。果たされなくば死を。」

 食い気味に即答。俺が丸め込もうと思ったところで無理だろう。多分一単語さえ聞いてくれない。だから。

 「そう言うと思いまして、特別に説得役を招待いたしました。本人の強い希望で実現しました説得役。さぁ、お願いします。『かぐや姫』様。」

 俺はその場から横っ飛びに飛ぶ。仏頂面だったイトツキは俺の陰に隠れていた光を目前にして、信心深い人間が神聖なものでも見たかの様な顔になった。

 特別ゲストのかぐや姫様の登場です。

 「姫、様。おおぉ、おひさしゅう御座います。またこの両の眼で貴女を拝顔できるとは…」

 俺との対応の差に泣きそうだ。

 「………、イトツキ。ひさしぶり、ですね。」

  正に『輝夜』の名に相応しい輝き。

月が東から昇り、西に沈むが如く、ゆっくりと、イトツキに近付いていく。それを無言で見ていたキノツキも少し表情が変わった。

 「我らが姫よ。最早貴女は十分過ぎるほどの罰をお受けになりました。地上にて貴女は我々の想像等おこがましいほどの苦痛を味わったでしょう。月の誰もが貴女のことを事を責めませぬ。どうか、どうか月を、我らが月に輝きを。月へお戻りください。」

 縄に縛られながらも頭を下げる。キノツキもそれに倣う。

 「貴方達には苦労をかけました。地上までの旅。大変だったでしょう。よく来てくれました。」

 慈しみと優しさに満ちた態度で振る舞う姫。

ちなみに俺は使者の返り討ち以上のことは何もしていない。

これから姫の話すことは完全に姫の胸の内だ。俺には解らない。

「ですが、私は月へは戻れません。ごめんなさい。」

 跪き、頭を下げる。姫としては有り得ない行動だ。

 「何故?何故ですか!何故そのような事をおっしゃるのですか?穢れた地上に何故残ろうというのです!?」

 涙を流しながら吠える。必死の形相で食って掛かりそうだ。

 「ごめんなさい。でも…、でも、私はここが好きなのです。私を罪人だと言って追放した月の民よりも、私の為に、私に帰って欲しくないと言ってくれる地上の人が、絶対に勝てない筈の貴方達をこうして下し、私を思ってくれる人が大好きなのです。」

 姫も泣きながらイトツキを見つめる。イトツキはもう何も言えなかった。






 「では、私達は帰ります。姫は……死んだ。という事にします。」

 月から乗って来た雲に乗り込む月の使者達。イトツキは何とも言えない顔でかぐや姫に頭を下げる。

 「有り難う。イトツキ。貴方の心遣いに感謝します。」

 「いえ……、貴女の為です。では。」

 そう言って雲に乗り込み、帰る準備を始めた。

 「すまねぇ。姫。アイツも解ってるのさ。もう姫さんにはちゃんと場所があるって事をな。だが、アイツの気持ちを察してやって欲しい。」

 キノツキが後ろからやって来て頭を下げる。

 あの男も色々あるのだろう。

 「キノツキ!置いてかれたいのか?さっさと乗れ!」

 「アァ!解った! それでは、済まなかったな。姉さん。アンタたちもな。」

 そう言い残して月の使者達は月へと帰って行った。











 「ん?にゃ?」

 電球が見えた。

 目が覚めた。まぁ、エピローグは見えなかったが、本編は見られた。

 全く、都合のいい夢もあったもんだ。

 そう思いながらかぐや姫の絵本に手を伸ばす。この本の中では起こらなかった未来。あんな未来がここでは起き得なかったのだなぁ。


 「ん?」


 違和感があった。寝る前に読んだ本に無かったページがある。そのページは丁度、月の使者が来た辺りからだ。

 『かぐや姫を帰すまいと帝と翁は頑張った。そして、もう一人。彼らに力を貸した賢匠院という軍師も頑張りました。』

 アレアレアレ?

 『彼は翁たちに言って、投石や目潰しや大竹弓を使って月の使者を返り討ちにしました。』

 ん!?

 『月の使者は渋々帰り、かぐや姫は一生幸せに暮らしました。』

 おぉー。良かったなぁ姫。


 「って違わい!」


 なんだ?何が起きた?

 アレ?俺の寝てる間に何が起きた?

 自分が未だ夢の中に居るのかと立ち上がる。寝起きでふらつき、窓に寄り掛かる。そして、絵本の中以上に異常な窓の外に気付いた!

 「何だ……これは。」

 空を飛ぶ車、住宅街に似つかわしくない高層ビル、羽の無いのに空を飛ぶ人間。

 そこにはSFチックな風景が広がっていた。

 「あぁ、夢……か。」

 そう言ってふらふらフローリングに寝ころぶ。

 「ん。寝よう。」

 そう言って俺は又眠りについた。

 次は、どんな夢を見ようかな?







後書き

 何度もクドイですが、感想や評価を下さい。

 「ここが悪い」「ここがおかしい」「ここをこうするべき」と言った辛口でも構いません。どうか、私に成長の機会を下さい。

 他の作品も見て下さい。ジャンル色々あります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

竹取もし語 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ