主人公は物語の中で蝶のような何かに変貌してしまうのですが、文章は違います。読者にひっそりと迫りくるような、じめっとした、でもよく分からない気持ち悪さはまるで「蜘蛛」のようです
蝶と蜘蛛というのは自然界では食う食われるの関係であり、この奇妙な作品世界に飲み込まれる読者は蝶、作者は蜘蛛、ということなのかもしれません
それから語り口は落語そのものなのですが、会話がなく、内容はまさしくグロやホラーであるのに、恐怖はとんと湧いてこないのです
また一文が長いのにテンポがよく、スラスラと読めてしまいます。不思議、奇怪、内容も含めて名"奇"文。素敵です