Ending
34
“終わり”の始まり
山の上にある大きな建物、木で出来た“マクレン孤児院”の母屋の一階の広いリビング。そこには二人の人影があった。
「...なあ、なんかすげえ煙あがってねえ?」
ブラインドの閉じた窓から刑事ドラマのような仕草で外を眺めていた”水上”が、近くの揺れる椅子に座って本を読んでいた”璃音”にだけ聞こえるような声でつぶやいた。
「気のせいでしょ 煙があがってるのなんてもういつものことじゃない?」
「まーそうだけどよ 普段より多く感じるんだよ」
「ふーん…」
「ふーんってお前な、少しは見ようとしろよ」
「本読んでる時に声かけられるのが嫌だって、そろそろ学ばない?」
「んあ〜…学んだ学んだ 以後気を付ける」
「あんた毎回それ言ってない?”ロクさん”にも”ノアさん”にも」
「気のせー気のせー …でも煙は結構マジっぽいぞ」
「まだ言うの?」
「だから自分の目で見ろって〜...」
そうしつこく言われて凛音がしょうがなく、水上と同じように刑事ドラマのようにブラインドの隙間を開け、外を見ると、
確かに煙がいつもより多くの煙が立ち上っていた。
いや、多かったなんてものじゃない。
何かを覆い隠そうとしているのかというような程の煙だった。
「あんた…いつもより多いなんて比じゃないじゃない…!」
「だろ?だから言っただろーに」
「言ったって…言い方もう少しどうにかならないわけ?」
「いやまあどうせ大丈夫だろ ロクさんとノアさんなら」
「そりゃあの二人はいるけど…問題はちびっ子共でしょ」
「ま、あいつらもばかじゃねえし、大丈夫だろ」
そんなことを言っている二人のもとへ、二階から“大崎”“石井”“花奈”の三人が降りてきて、のれんをくぐりながら二人のいるリビングへと入ってきた。
「なあお前ら…煙やばくね…ってもう気付いてたか」
「おう気付いてた気付いてた」
「ねえ…大丈夫かな?みんな…」
「だーいじょうぶだろ なんたってあの二人が付いてるんだぞ?」
「…あんたはロクさんとノアさんを怪物かなにかかと思ってない?」
「近からず遠からずって感じだな」
「とにかく…不安だな 無事に帰ってきてくれるといいけど」
徐々に暗くなっていく空の元、その期待が裏切られることを六人はまだ知らない。
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