第11話 しあわせ
待ち合わせの日
別に慌てることないのに走ってと飛び込んでくるカナエ
少し早めに着いた私は先に店に入ってメニューを眺めていた。
すぐにカナエが入って来たので待ち時間はほとんどないと言っていい。
「お待たせ」
走ってきたくせに何も無かったように席に座るかなえ
「全然」
店内は夜は居酒屋らしくカフェには珍しい個室で和風の部屋だ。
二人ともコーヒーのブラックを頼む。
店員さんがコーヒを運んで来る。
コーヒーを口につける味はよくわからない。ここまで無言で気まずさがある。
どんだけ仲が良くても、いや仲が良いからかもしれないが口にするのが少し怖い言葉を思い切って出す。
「ごめん」
「何に着いての謝罪?」
「えっと、一緒のがっこ「違う!!」
カナエの本気で怒った時の顔
「どんだけ心配したと思ってんの?! 返信も返さないで!」
「ごめん」
「なんで返信してくれなかったの?」
「だって、偉そうなこと言って落ちて、、合わせる顔なくて」
半分泣いてる私
「そんなどうでも良いことで私を無視するの?!」
「どうでもって」
「どうでも良いでしょ! それとも何? 私らがバカにするとでも思ったの?!」
「思ってない! そんなこと」
そんなこと思うはずないただ自分が弱いってだけで
「どう会えば良いかわかんなくて」
あって何を言えば良いかわかんなかったどうすれば正解なのかわからなかった
「一人で生きるな!!」
カナエの目からも涙が溢れている。
「辛い時に頼ってもらえなくて何が親友よ……」
「ごめんっ……なさいっ……」
「セナのこと本当に好きだから! あなたがどうなっても私はセナの親友だから!」
「……うぅ……ありがとカナエ」
「もう無視しないでね」
無視って直接、言われると自分のしてたことの酷さを感じる
「ごめんなざびぃー」
「何についての謝罪?」
「いろいろ、心配かげで」
「いいよ、許してあげる」
ぽんっと優しく頭を叩かれた
「言いたいことは大体言われたわね」
襖が開きユリナが入ってくる。
「……いづからいだの」
涙が止まらないながらも驚きで感情がぐちゃぐちゃだ。
「”ごめん” から」
「最初じゃん」
カナエの鋭いツッコミが決まる。
「私からも一言だけ、私も好きだよセナのこと」
「ありがとうっぅ」
止まりかけてた涙がまた溢れそうになった。
カップに口をつけを一口飲む。
コーヒーの独特の苦さが私の中で二人の優しさと混ざってちょうど良く感じた。
その後は何事もなかったように普通に遊んで、家に帰った。
無視した罰としてかなえのコーヒー代とユリナの抹茶パフェ代はおごらされ、もう二度と無視しないことは誓わされたけど。
布団でゴロゴロしていると今日の終わりがけに撮った三人の写真が送られて来た。
昨日、車が突然飛び出して来て急ブレーキをしたおかげでギリギリ撥ねられずに車が私の前を通過した。
死にたいって思っていても体がしっかり動いていた。
なんか虚しさを感じた。
私ってちっぽけだなって思った。
あんなに悲劇のヒロインになりたいと願ったのに。
ただ本当に轢かれなくってよかったと今なら思える。
今日本当に、私は物語の主人公みたいに奇跡とか運命的なすごいシナリオはなかったけど、シンプルで極単純に、私はすごくいい仲間に恵まれているんだなと思えた。
それ自体が奇跡のような、私にはもったいないぐらいの幸せだと思う。
「ありがとう」
自然に口についた言葉を今度はあった時にちゃんと伝えようと思った。
結局、エミカ先輩と同じ大学に進学することになった私。
誰か知ってる人がいる場所を選んだ私は意外と寂しがりやだったのかもしれないなんて思っている。
私が後輩になることを知ったエミカ先輩はものすごく喜び、店長にカナエとユリナに合うきっかけをくれたお礼を伝えた時、よかったなと言ってくれた店長と同じ笑顔で店長によくわからない自慢をしていた。
これから私はどうなっていくのかどうなりたいのかはまだ全然わからないけど、別にわかんなくてもいいやって思えるようになった。
何かあったら乗り越えて、無理そうなら私の大事な人の手を借りれば、なんとかなるってそんな気がする。
そんなことを思いながらバイト帰りに空を見上げる。
もう冬も終わろうとしている。
寒風に震えたが通り過ぎた後の不思議な身がしまるような心地よさを感じながら顔を上げる。
空は吸い込まれそうなほど真っ黒だけど。
それでも月の周りには、星が白く溶けていた。
そして空を見上げた 寝虎ツバメ @nekotubame
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